第八十話 内緒
ブックマークや感想をありがとうございます。
今回は、シェイラちゃんがとっても可愛いですっ(作者的に)
それでは、どうぞ!
(ど、どどどど、どうしましょうっ)
アルムに会えることが嬉しかったのは事実だ。しかし、実際に会ってみれば、顔を合わせるのが恥ずかしくて仕方ない。お姉様は隣で苦笑しているが、どうか、そのまましばらく一緒に居てほしい。でないと、アルムに失礼な態度を取ってしまいそうなのだ。
(う、うぅ……なぜ、こんな……)
これが、恋をしているということなのだろうか。もう、ドキドキが止まらず、ちょっと手も震えている。しかも、今はアルムにエスコートされているせいで、なおさら緊張してどうしようもない。
そうこうしているうちに、何とかいつもお茶をしているテラスへと辿り着き、席に着く。
「シェイラ……」
アルムに声をかけられるだけで、私はビクッとしてしまう。しかも、それが切なそうな声であればなおさら……。
(ん? 切なそう?)
今、アルムの顔を見るのは、私にとって危険だと分かっていた。しかし、それでも、どうしても確認せずにはいられず、私はようやく、アルムの顔を見る。
(っ……な、何て色気っ……う、うぅ、心臓が、ドキドキが止まりませんっ)
眉をキュッと寄せて、吐息とともに私の名前を呟くアルムは、もう、色気があり過ぎて心臓に悪い。
「どど、どう、しましたか? アルム?」
声を震わせながら、アルムに問いかければ、なぜか、アルムの表情が悲しげなものになる。
(えっ? えっ? 私、何かしてしまいました!?)
悲しげであるにもかかわらず、そこにある色気は微塵も損なわれていない。むしろ、哀愁が漂う分、色気も増したようにも思える。
「シェイラ、ボクは、やはり側に居てはいけないか?」
切ない声で問われた私は、一瞬、その意味が分からなかった。そして、それを理解した途端、ブンブンブンっと首を横に振っていた。
「しょっ、そんなことは、ありませんっ」
少し噛みながらも私は必死に否定する。なぜ、そんな結論に至ったのかは不明だが、アルムに近づいてほしくない理由などあるはずもない。特に、今はお姉様が後ろ楯になりうると分かったのだから……手が届きそうな分、一緒に居たい気持ちも強い。
(き、緊張は、どうしてもしますが……)
「だが、先程から、シェイラは震えている。……ボクが、怖くなった?」
そして、そんな予想外の質問に、今度こそ、私は硬直して……またしても、ブンブンブンっと首を横に振る。
「こ、これは、緊張、しているだけですっ。ですから、気になさらないでくださいっ」
「緊張? なぜだ?」
ただし、私は言葉選びを間違えた。
(っ、どうっ、説明しろと!?)
思わず、隣に座るお姉様に視線で助けを求めるものの、ニコニコとした笑みしか返ってこない。
「あ、ぁう……」
「シェイラ?」
ここは、逃げるべきか。いや、しかし、逃げ場など、この場所には存在しない。
頭の中で、その事実を叩き出した私は、必死に考えを巡らせて……。
「な、内緒ですっ」
赤くなっているであろう顔を覆って、蚊の鳴くような声で、そう告げるのだった。
ガッチガチに緊張したシェイラちゃん、とってもいじりがいがありそうでしたねっ。
それでは、また!




