第七十八話 帰る場所
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さぁ、ようやく、シェイラちゃんの方も落ち着きましたし、そろそろアルムに会わせてやらねばっ。
それでは、どうぞ!
「シェイラの気持ちはよぉく分かりましたわ。と、いうわけで、さっさとドラグニル竜国に行きましょうっ」
根掘り葉掘り、私のアルムに対する想いを聞かれて、懸命に回避しようとしながらも、回避しきれずに自爆し続けた私は、魂が抜けたような状態になって……そのお姉様の言葉で、ハッと我に返る。
「あら、戻りましたわね」
いつの間にか、ユーカ様やメアリー達は居なくなっており、目の前にはお姉様一人だった。
「えっ、あの……」
「何もわたくしは、愛し合う二人を引き裂く悪役になりたいわけではありませんわ」
「あ、愛し合う?」
お姉様は何を言っているのだろうか? アルムに、そんな素振りは一度として見られなかったというのに……。
そう考えていたことがバレたのか、お姉様はふふっと笑う。
「アルムは、シェイラのことを確実に想っていますわよ? 何なら、賭けでもしますか?」
「えっ? えっ? ア、アルムが、私、を?」
信じられない。その思いでお姉様を見つめるが、お姉様はクスクスと笑うだけだ。
「とにかく、シェイラは悩み過ぎなのですわ。後ろ楯がない? わたくしという、『絶対者』という存在が後ろに居るのに? 全く、シェイラは変なところでバカですわね」
お姉様自身が後ろ楯になりうる、という言葉に、私は大きな衝撃を受ける。考えてみれば、確かにお姉様は、ドラグニル竜国では竜王の恩人として有名だ。そして、アルムから様々な依頼を受けていたおかげで、民からの信頼も篤いと聞く。
今までは、流石はお姉様、としか思って見ていなかったが、よくよく考えれば、わりと強力な後ろ楯があるということになってしまうのだ。
「ふふっ、本当に、バカな子ですわ」
そう言うお姉様の目は、慈愛に満ちていて……今の私には、居たたまれない気持ちを生み出すのに十分な威力を発揮していた。
「さっ、善は急げ、ですわ。すぐに出立しますわよっ」
「えっ? あっ、はいっ」
「あと、悪魔の件は、一応アルムが解決したらしいですし、心配はいりませんわ。もちろん、わたくしも色々と反省しましたので、なんちゃってGPS機能つきの魔法具を渡しておきますわね?」
「じーぴー?」
お姉様の言うじーぴーなんとかが分からないが、お姉様がくれるものなら、何だって宝物だ。可愛らしい星形が連なった腕輪をもらって、私はそれを腕につける。
「それは、シェイラが直接魔力認証をさせた相手にしか見えないし、使えないものですわ。ですから、アルムにだけ、魔力認証を行ってもらいなさい」
「はい、お姉様」
詳しい機能はアルムに説明するとのことで、私は納得する。
「では、忘れ物はないですわね? 転移!」
直後、私は、魔王城としか思えない外観の、竜珠殿の前に辿り着くのだった。
シェイラちゃん、知らず知らずのうちにとんでもない魔法具をもらっちゃいましたねぇ。
まぁ、それをしたくなる気持ちは分かりますが。
それでは、また!




