第七十六話 解放
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今回は、ようやく、魔法が解けますよ~。
それでは、どうぞ!
「それじゃあ、魔法を解きますね」
「よ、よろしく、お願いしますっ」
目の前には、レイリン王国では差別の対象とされていたであろう、黒目黒髪の少女が座っている。見た目は、十代前半……もしくは、まだ九才とか言われても納得できるような顔と身長なのに、これでもお姉様より年上なのだそうだ。しかも、二人の魔王と結婚しているらしい。
(突っ込みどころが満載です……)
しかし、この少女……ユーカ様と対面する前に、私はお姉様からきつく言い聞かされていることがある。曰く、『ユーカ様は自分が幼く見えることや身長のことをとても気にしているので、その話題だけは出してはいけませんわよ』だそうだ。だから、そこを問いかけることなく、魔王妃という立場の彼女に、全てを任せてひたすら待つ。
「リリス、手伝ってください」
「もちろんですわ」
何やら、お姉様も手伝うらしい。お姉様は、あの頭蓋骨を自分とユーカ様の間に置き、ユーカ様と一緒に、その頭蓋骨へと手を添える。
「じゃあ、少しだけ、目を閉じていてください。すぐに終わりますから」
あまり表情を変えないユーカ様にそう言われて、私は大人しく目を閉じる。そして、ユーカ様とお姉様の、魔法の二重詠唱が始まる。
「深淵に沈む鍵よ」
「覆い隠された真実よ」
「深く深く潜り込み」
「裁ち切りばさみが剪定し」
「沈み沈み目指すのは」
「偽りは消え失せ」
ユーカ様とお姉様が交互に、別々の詠唱を口ずさむ。しかし、そこに込められた魔力は、震えそうなほどに強く、濃厚で、私は目を閉じたまま、知らず知らずのうちに拳を作る。
「黄金の輝きを掴み取れ」
「白き輝きを目の前に」
二人の魔法が完成した途端、凄まじい魔力の奔流が私の中に流れ込んでくる。頭の中は真っ白になり、何も考えられなくなる。
(っ、きつい、です、ねっ)
恐らく、これは魔力の弱い人間が受ければ、何か支障をきたすほどのものだ。そして、私の魔力は、強くも弱くもないといったところで……もしかしたら、しばらく寝込むことになるかもしれない。
(予想は、して、いましたが……)
生半可な方法では解けない魔法だと聞かされた時点で、それは分かっていた。しかし、実際に体験してみると、魔法による圧迫感がツライ。息はできているはずなのに、息苦しく、体は動くはずなのに、動けない。全身に汗が吹き出し、凄まじい悪寒が襲いかかる。
「っ……っつ!」
いつの間にか、両手にはお姉様とユーカ様のものと思われる手の温もりがあったものの、それも気休めにはならない。そして……。
「これで、終わりです」
そんなユーカ様の声が聞こえ、魔力から解放された私は、そのまま意識を失うのだった。
思った以上に大変な解呪でしたねぇ。
でも、これでシェイラちゃんの苦しみがなくなりましたっ!
それでは、また!




