第七十三話 戻ってきたお姉様
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さて、今日はシェイラちゃん視点に戻りますよ~。
それでは、どうぞ!
お姉様が戻ってきた。そのことに喜んだのもつかの間、私は、その片手に抱えられているものをしばらく見て、決心する。
「お姉様、隠蔽ならお任せください」
「え?」
「はっ?」
お姉様とルティアスの間抜けな返事に、私は何か間違えただろうかと思いながら、ソレをじっと見る。
「死してなお、お姉様に触れてもらえるなんて、羨ましいことこの上ありませんが、ソレの隠蔽は必要でしょう? 存在を抹消する勢いで、全てを片付けてみせますっ」
「……いえ、シェイラ? 多分、色々と誤解がありますわよ?」
拳を握る私に対して、お姉様はしばらく呆然とした後に、復活する。
「大丈夫です。私に任せてくだされば、証拠など、欠片も残しはしませんっ」
「あの、だから」
「さぁっ、現場へ連れていってくださいっ! そして、もし、ここに居る者以外で口封じが必要であれば、それもこなしてみせますっ」
「いえ、その」
「お姉様は大船に乗ったつもりで構えていてくださいっ」
「これは、ロックボーンの頭蓋骨ですわっ」
お姉様の殺人を隠蔽すべく、様々な計略を練っていた私は、そんなお姉様の一言でピタリと止まる。
「……シェイラ?」
「……お姉様の役に立てると思いましたのに……」
魔物の頭蓋骨となれば、私が活躍する機会などない。そう思ってうなだれていると、『頼むから、リリスを勝手に犯罪者にしないでくれないかい?』とルティアスに言われ、お姉様にも失礼だったと、さらに落ち込む。
「えっと……紛らわしいことをしてしまいましたが、これは、魔法の媒体として取ってきたものですわ。ほら、裏側が赤いでしょう? これが、ロックボーンの頭蓋骨の特徴なのですわ」
言われてみれば、確かに、その頭蓋骨の裏側は真っ赤に花が咲いたような模様が浮かんでいた。ロックボーンの頭蓋骨の特徴自体は知っていたため、もう、私は居たたまれない。しかも、それが私の魔法を解くための媒体だとの説明まで受けると、穴に入りたい気持ちでいっぱいになる。
「申し訳ありません。お姉様……」
「気にしていませんわ。そんなことより、早く魔法を解いてもらいましょうね?」
「はい……」
お姉様が来たからには、もう、いつでも転移でお城へ向かうことができる。マリノア城と呼ばれるヴァイラン魔国の城。そこに、私の魔法を解いてくださる方が居るらしい。
「では、転移しますので、捕まってくださいまし」
そうして、ルティアスと私がお姉様の手をそれぞれ持ったところで、景色が変わる。
「ここは……」
「ひとまずは、マリノア城の門前ですわ」
唐突に現れた私達に、門番として立っていた魔族二人は一瞬警戒したものの、すぐに、その警戒を解く。
「お疲れ様ですっ! 将軍!」
「お疲れ様ですっ! 奥様っ!」
ビシッと直立でルティアスとお姉様に告げた彼らは、話は聞いていると言い、私も含めて門の中へと入れてくれる。
「さぁ、行きますわよ?」
そうして、私は、お姉様に手を引かれてマリノア城へと足を踏み入れるのだった。
シェイラちゃん、早とちり(笑)
でも、これで無事、シェイラちゃんの魔法は解けそうです。
それでは、また!




