第七十一話 隠れて
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さぁさぁっ、シェイラちゃん達は逃げ切れるのか!?
それでは、どうぞ!
「とりあえず、今はここに隠れていて」
「は、はい、あの、ですが……」
「大丈夫。ここは、リリスと僕が渾身の力でかけた結界の中だからね。敵が悪魔だろうと、そうそう破れるものじゃないよ」
ルティアスに手を取られて、走って向かった場所は、お姉様が使っている部屋だった。てっきり、お城に向かうのかと思っていたのだが、どうやら、ここでお姉様を待つらしい。
何でも、ドラグニル竜国に行く前に、準備に準備を重ねて、この部屋だけは安全になるよう、結界を張っていたのだが、その時はまだ私の状況を知らなかったのと、私がここに来ることになるとも思っていなかったのとで、私の部屋には、少し強力、程度の結界しか張られていないとのことだった。
「多分、ここに入った瞬間、敵はシェイラさんを見失ってるはずだよ。たとえ、シェイラさんにかけられている魔法を発動させようとしても、今は僕が側に居る。全力で妨害してみせるよ」
パチリとウィンクをしたルティアスは、座布団へ座るよう勧めて、自分も反対側へと座る。
「さて、と。僕は、ここでリリスが帰ってくるまで待つべきだと思ってるんだけど、シェイラさんもそれで良いかな?」
「……待つ以外の選択肢があるのですか?」
そう問えば、ルティアスは私の背後の扉へと視線を向ける。
「たとえば、ここで悪魔を迎え撃つとか」
「私に戦闘能力はありません」
「それか、全力疾走で逃げて、城まで行くか」
「お城はかなり遠かったですよね!?」
「と、まぁ、そんなわけで、別の選択肢は現実的じゃないね」
肩を竦めて、そうのたまったルティアスに、私は大きくため息を吐く。
「分かりました。ここで、大人しくしています」
「うん、物分かりが良くて何よりだよ」
そんな言葉に、私は一瞬からかわれているのかとも思ったが、ルティアスは優しく微笑んでいて、そんな様子を欠片も見せない。
「……ですが、お姉様はここに戻ってこられるのですか? その……外は、すごい音ですけど……」
「それなら大丈夫なんじゃないかな? いざとなれば、転移で来てくれると思うよ? もちろん、リリスが近くに来れば、僕も迎えに行くつもりだし」
お姉様の力を信頼して、その上でちゃんと心配もしているルティアスの様子に、私はこんな時だというのに、少し安心する。
(お姉様の相手がルティアスなら、安心ですね)
元々、最初にルティアスと一緒に居るお姉様を見た時から、分かってはいた。あの、無表情しか出せなくなったお姉様が、ルティアスの前ではコロコロと表情を変えるのだ。ルティアスならば、お姉様を任せられる。そして、そんな幸せカップルの間に、私がお邪魔をしてしまっていることが、少しだけ、申し訳ないような気がした。
「本当はね? リリスとの結婚の報告のために、僕達はシェイラさんを訪ねる予定ではあったんだ。今回は、こんなことになっちゃったけど、この件が解決したら、ちゃんとシェイラさんにも招待状を贈るから、そのつもりでね」
(……あら? 何だか、これって、お姉様が前に話していた死亡フラグというやつでは……?)
危機が迫っている中、それが終わったら結婚するという内容は、有名な死亡フラグなのだとお姉様が話していたような気がして、私は戦慄する。
(い、いえ、きっと、大丈夫。……大丈夫、ですよね?)
そう、自分に言い聞かせながらも、心は不安に覆われるのだった。
立て籠ったルティアスとシェイラちゃん。
リリスちゃんが合流するまでの辛抱だっ!
それでは、また!




