第七話 夜会
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久々の更新です。
今回は、お見合いのお話から発生した夜会。
それでは、どうぞ!
お見合いということで渡された釣書を見た私は、とにもかくにも、実物を見てみたいとアルム様に話して、それはすぐに実現することとなった。
表向き、私はアルム様の寵妃ということになっているため、アルム様と一緒ではあるものの、王家主催の夜会で、まずは少しずつ、釣書に載っていた人物と顔合わせをしていくことになったのだ。ただ……。
「あの金髪の彼は近衛騎士団団長のヨーク・ハックだ」
「ひゃいっ」
なぜか、私はアルム様が座る玉座に一緒になって座っていた。……いや、それだと語弊があるかもしれない。具体的には、玉座に座るアルム様に横抱きにされて、時折、耳元に口を近づけては、こうして近くを通った竜人の名前を教えてくれていたのだ。
(し、心臓に悪いですっ)
すでに、シャルティー公爵家令嬢なんて立場を捨てているとはいえ、基本的に箱入り娘だ。ここまで男性に接近されることなど未だかつてない事態であり、普段の冷静さはどこかへ飛んでいってしまった。
「シェイラ? 顔が赤いが、大丈夫か?」
(だ・れ・の、せいですかっ!)
そう思いながらも、私の口は上手く動いてくれず、喃語のような意味のない言葉ばかりが漏れる。
「……もう少し我慢してくれ。挨拶が終われば、一度退席して、休ませてやれる」
(こ、この体勢を先に何とかしてくださいぃぃいっ)
ちっとも分かっていないアルム様の様子に、私は誰かに助けてほしくて視線を巡らせるものの、残念ながら助けてくれそうな人は一人も見当たらなかった。
(こんな時に限って、ベラが居ないなんてっ)
ベラならばあるいは、私がアルム様の色気にやられてダウンしていることに気づけたかもしれない。最初は、お姉様のことを一緒に語れる同志、くらいにしか見ていなかったものの、実は、アルム様はとても美形だ。お姉様の元婚約者だったエルヴィスもそこそこ美しい顔立ちではあったものの、アルム様には叶わない。
(早く、早くっ、挨拶終わってぇぇえっ)
真っ赤な顔をしているであろう私に、アルム様は何を思ったのか、私の顔の向きを自身の胸板に固定させて、ゆっくりと頭を撫でてくる。……いわゆる、膝だっこでなでなでというやつだ。
「もう、今日は何も考えなくて良い。眠りたくなれば眠っておけ。後は、ボクが何とでもする」
(眠れるわけないでしょおぉぉおっ!)
またしても耳元で囁かれるその言葉に、私は失神できないのが悲しくて仕方なかった。この国に来て、そこそこ健康になりつつあったことと、コルセットをはめる文化がドラグニル竜国にないことから、失神は難しい状態だったのだ。
そんな私とアルム様の様子が、周りからはとても仲睦まじいものにしか見えておらず、私の寵妃としての立場が強固なものになる未来なんて、この時の私は知らない。
ただただ、挨拶が早く終わることを願って、必死に貴族名鑑の貴族名を頭の中で羅列させるのみだった。
シェイラちゃん、気絶することもできずに、ただひたすらアルムの色気にやられた模様(笑)
次回はアルム視点を予定しております。
それでは、また!