第六十八話 有能な諜報員(アルム視点)
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さぁ、あの時扉をノックした、ギースの代わりになれる人物が登場ですっ。
それでは、どうぞ!
シェイラが去ったあの日、ボクは意外な助っ人を得て、ギースが居なくなった分の穴埋めに成功していた。と、いうより、むしろそいつは、ギースよりも有能かもしれなかった。
「まさか、こんなに早く、ギースの居場所が分かるとは思わなかった」
そう言って、目の前の男を褒めれば、彼は……シェイラ付きの使用人だったセルグは、顔を歪める。
「それもこれも、全てはシェイラお嬢様のため。くれぐれも、勘違いなさらぬようお願いいたします」
シェイラが初めてギースに会った日、確かにシェイラは、自分に付く侍女を諜報員にしようとする発言をしていた。しかも、あの発言から考えると、魔法を使う諜報ではなくそれ以外の諜報技術を、シェイラ自身が有しているのだと考えて良いだろう。そして、そのことを念頭に置けば、元々シェイラに仕えていた使用人が普通の使用人ではないことくらい分かるはずだったのだ。
「未だ、召喚主は不明ですが、いくつか当たりはついています。まずは、バルファ商会の商会長ドット・バルファ、次に、副会長でありドットの弟、ビート・バルファ、さらにその妹のヒルデ・バルファが候補です」
「バルファ商会、真っ黒だな?」
「ちなみに、今悩んでいるのは、彼らが全員共犯者なのか、ヒルデ・バルファのみ除外されるのかという線です」
「しかも、二人は確定しているのか」
「誰か、色仕掛けが得意な影は居ませんかね? 私、ヒルデという名の化け物に色仕掛けをする勇気はありませんので、とっとと人材を寄越してほしいものです」
「……そうか」
案外辛辣な言葉を吐くセルグに、ボクはバルファ商会のヒルデという名の女性を思い出す。横にばかり大きく、ニキビだらけの脂ぎった顔、香水で誤魔化そうにも誤魔化せない強い体臭を持つソレは、確かに、『化け物』と言っても過言ではない。
「目的は、アルム陛下を降して、自分達が王に君臨すること。そして、贅沢三昧の日々を送ることっぽいです」
そして、そんな理由で悪魔召喚が行われたのかと思えば、頭が痛くて仕方がない。
「あぁ、後、シェイラ様の婚約者候補であったドライムという男は、本来はもう死亡していることが判明しましたので、お知らせしておきます」
「ちょっと待て、ドライムが死んでいる? しかし、ボク達はそのドライムに会っているのだぞ?」
「それは、本当に、アルム陛下が知るドライムですか?」
「そんなの当たり、ま……え?」
今、何かが頭の中に浮かんだ気がして、ボクは言葉を止める。ドライム・レンドルク。確かに、その名前の男の葬儀が行われるという情報があったように思えて、ガンガンと痛み出す頭を押さえる。
「あぁ、彼との接触は、極力控えた方が良いでしょう。今は、怪しんでいることを気づかれたくないですしね。私からは以上です。それでは、失礼します」
ボクを気づかうこともなく、淡々と報告を済ませたセルグは、報告は全て終わったとばかりに、身を翻す。
(ドライムが死んでいる? なら、アレは、誰だ……?)
大きな疑問が残ってはいるが、頭痛が治まった頃には、セルグの姿はなく、ボクはまた、報告を待つことになるのだった。
……はい、シェイラちゃん、わりと自分の側に居た使用人に諜報技術を教え込んでおります。
そのうち、彼らがシェイラちゃんの居場所を割り出して集結することもあるかも?
それでは、また!




