第六十六話 助っ人を呼ぶ間
ブックマークや感想をありがとうございます。
今回は、シェイラちゃん視点!
それでは、どうぞ!
「ふわぁ、至福です……」
「ふふふっ、そうですわよね。やっぱり、和菓子は美味しいですわよねっ」
現在、私はアルムに会えないことを嘆く……のではなく、ヴァイラン魔国伝統のお菓子に舌鼓を打っていた。ヴァイラン魔国では、変わったお菓子が多く、今、私が食べているのは、苺大福なる存在だった。もっちりとした白い生地の中に、黒く甘い豆を煮たものと、苺という高級な果物が入ったそれは、一口食べるだけで贅沢を感じさせる。
「それで、シェイラ。そろそろ、わたくしは助っ人を呼んできますので、ここで待っていてもらえませんか?」
「? それはもちろん。むしろ、こんなに美味しいもの食べながら待っていても良いのですか?」
お相手は、ルティアスより上の身分の方だと聞いているのに、この状態で待っていて良いのだろうかと首をかしげるものの、お姉様は優しい笑顔でそれで良いのだと告げてくる。
(まぁ、それならば……)
実を言うと、私はまだ、この国の言葉を理解できていない。ドラグニル竜国は、何だかんだいっても、近い言語形態だったらしく、習得に時間はかからなかった。並列思考を駆使すれば、勉強というのは案外簡単なものなのだ。ただし、ヴァイラン魔国の言葉は全く違う言語形態らしく、自然に習得するのは難しそうであった。
(お姉様はすごいです。この言語を、こんな短期間で完璧に使いこなせるなんて……)
まず、発音そのものが難しいこの言語を、お姉様は容易く操ってみせる。ルティアスと知り合って、数ヶ月は経っているのだろうが、それでもヴァイラン魔国に来て、この国の言語に触れたのは数えるほどだったと聞く。よっぽどルティアスの教え方が上手かったのか、それとも……。
(お姉様がすごかったに決まっていますよねっ)
何せ、あのお姉様なのだ。どんなことができても不思議ではない。そうして、私はお姉様を待ちながら、不思議な食感で美味しい苺大福を頬張る。
(この国のお菓子文化は、絶対にドラグニルにも取り入れるべきですねっ。こんなに美味しいのですから、アルムも絶対に賛同してくれますっ)
自然と、帰る場所をドラグニル竜国のアルムの元へと定めていた私は、それがどういうことかに気づくことなく、最後の一欠片を頬張る。そして……。
「何だか、暑いですね……」
なぜだか、体が火照っている気がする。そう考える合間に、眠気までやってきて、お姉様を待っている最中だというのに、目を開けているのが辛くなる。
「疲れが、出たのでしょう、か?」
アルムと離れて一日。昨日は、あまり眠れなかった自覚のある私は、お姉様が居なくなったことで緊張の糸が切れたのかもしれないと考える。
(眠っては、いけません、のに……)
しばらく、眠気と格闘し続けた私だったが、いつの間にか、ソファに横になって眠り込んでいたのだった。
明日は……リリスちゃん視点になるかもしれないです。
それでは、また!




