第六十二話 お姉様の元へ
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とりあえず、今回でこの章は終わりです。
それでは、どうぞ!
明るい庭に佇むガゼボ。周囲をピンクの花々に囲まれたその場所で、私とアルム、お姉様とルティアスは、それぞれ席に座り、楽しくお茶会……という空気にはならなかった。
「では、シェイラはこちらで預かりますわね?」
「い、いや、しかし……」
「シェイラも、わたくしと一緒の方が良いでしょう?」
「お、お姉様? あ、あの……」
ニッコリと笑っているお姉様。しかし、その瞳は全く笑っていない。思わず背筋が凍るほどに、お姉様の瞳は恐ろしいものになっている。
「可愛いなぁ、リリスは」
そして、そんなお姉様の横でうっとりとしているルティアスは、きっとどこかで頭をぶつけたに違いない。
「し、しかし、魔の森にシェイラを連れて行くのは危険だ」
「あら、誰が魔の森に連れて行くと言いましたの? わたくしがシェイラを連れていくのは、ルティアスの実家ですわ」
「っ!?」
言葉を失うアルム。もしかしたら、アルムは私を引き留める権利はないとか考えているのかもしれないが、ここは是非とも抵抗してもらいたい。こんな状態のお姉様と一緒に居るのは、さすがの私も怖くて仕方がないのだから。
「単刀直入に言います。シェイラはこの国に来て、危険な目に遭い過ぎですわ。これ以上、シェイラをここに預けておくなんてできませんっ」
そう言われてしまうと、アルムも私も反論ができない。実際、未然に防げたとはいえ、洒落にならない危険に直面したばかりなのだ。しかも、その黒幕らしき者は行方不明で目的も不明。ただし、私が狙われる可能性は高い。私がこの国に留まるのは、デメリットしかない。
(アルムと、離れる……)
別に、ドラグニル竜国自体に思い入れはない。しかし、アルムは別だ。今、アルムと離れるのは、とてもつらかった。
(で、も……本当は、離れた方が、良いの、ですよね?)
本当は、アルムへの想いを絶ち切るために、アルムから離れた方が良いことくらい分かっている。心がどんなに悲鳴を上げても、そうするべきなのだ。だから……。
「分かりました。私は、お姉様と一緒に行きます」
今のお姉様が怖いとか、アルムと離れたくないとかいった気持ちに蓋をして、私はその決断を伝える。
「シェイラ……」
「では、シェイラ、準備ができ次第出発しますわよ」
「……はい。お姉様」
大丈夫。私は、大丈夫。そう、心を誤魔化して、私は、お姉様に従うのだった。
さぁ、次回からは、離れ離れな二人の様子を書いていきますよ~。
それでは、また!




