第六十一話 泣くということ(アルム視点)
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さてさて、そろそろシリアスさんとフオンさんには退場してもらいたいところですね。
それでは、どうぞ!
シェイラを、ようやくこの手に取り戻せた。それを実感するのは、シェイラがこの手に触れてくれるから。シェイラの声が聞こえるから。シェイラの震えが伝わってくるから。
「シェイラ。もう、大丈夫だ」
ギースを乗っ取った何者かが、とんでもない去り方をして、『絶対者』がシェイラに服を着せた後、シェイラはボクにくっついて離れなくなっていた。震えたまま、ギュッとボクの袖を握るシェイラに手を添えて、ボクは何度も、シェイラを支える。
「へ、平気です。アルムが、助けてくれましたもの」
「いや、ボク一人では、何もできなかった。『絶対者』が居てくれたからだ。遅くなって、すまなかった」
連れ去られてからの五日間、シェイラはきっと、怖くて怖くて仕方がなかったはずだ。それでも、シェイラは竜珠殿へと辿り着くまで、泣き言一つもらさない。それが、ボクからすると、心配でもあった。
「シェイラっ、無事で、良かったですわっ!」
「本当に、良かったね」
竜珠殿に戻れば、『絶対者』とルティアスが、それぞれシェイラの無事を喜ぶ。それに、シェイラは笑顔を浮かべて応えるものの、やはり、そこには違和感があった。
「……少し、シェイラを借りる」
違和感に気づいていたのは、きっとボクだけではない。『絶対者』も、ルティアスも、ふとした拍子に心配そうな表情を覗かせていた。だから、ボクの提案はすんなりと受け入れられ、ボクは、自室にシェイラを連れてくる。
「シェイラ」
ソファに隣り合って座り、未だに震えるシェイラの手を取りながら、ボクはシェイラを見つめる。
「何ですか? あぁ、ギースに関する情報でしたら、私もまだあまり持っていませんので、時間をいただけたらと「違う」……アルム?」
ずっと震えている癖に、平気なフリをし続けるシェイラ。それは、端から見れば、痛々しいだけだ。キョトンとした表情を浮かべたシェイラに、ボクはゆっくり、優しく、言葉を紡ぐ。
「今は、誰も見ていない。ボクも、今は竜王でも何でもない、ただのアルムだ。もう、頑張らなくて良い。もう、安全だ。何もかも、吐き出してしまえ」
そっと抱き寄せ、シェイラの頭を胸に抱き込めば、しばらく、沈黙が流れる。しかし……。
「……ふっ……うぅ……」
声を押し殺して、シェイラは泣き声を上げる。
「助けるのが遅れてすまない。……怖かったな。……つらかったな」
「う……ぁ……ぁ、あぁぁぁあっ」
張りつめていたものが切れたのか、シェイラは大きな声を上げて泣き出す。どんなに平気なフリをしていようと、誘拐される経験というのは恐ろしいものでしかない。ギースを乗っ取った者が何者かは不明だが、身近な者に裏切られる恐怖も味わったに違いないのだ。
そっとその背中をさすって、ボクはずっと、シェイラの側で、シェイラが落ち着くまで、シェイラの痛みを、苦しみを、嘆きを、受け止めるのだった。
いやぁ、良かった良かった。
めでたしめでたし……にはまだ遠いですね(笑)
さて、次のお話で、とりあえずちょっと一段落はしそうです。
いや、また波乱はありそうですけどね?
それでは、また!




