第五十七話 小箱の中身(アルム視点)
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さぁ、いよいよ小箱オープン!
それでは、どうぞ!
シェイラが拐われて四日が経った。未だ、何も進展がなく、ボクの内心は荒れに荒れている。もちろん、そんな様子を他人に見せることはないものの、恐らく、『絶対者』達にはバレバレだろう。
「クソッ」
シェイラが拐われたというのに、何もできない自分が不甲斐ない。今は、『絶対者』が開けようと努力している小箱の中身だけが頼りなのだが……それも、開けるまでにかなりの時間を要するらしく、まだ『絶対者』はシェイラの部屋から出てくることはない。
動けない『絶対者』について、ルティアスが甲斐甲斐しく世話をしているため、『絶対者』に危険はないとは思えたが、シェイラが拐われてから一睡もしていない『絶対者』の体調は心配だ。
「栄養ドリンクは渡したが……もう一度、作ってもらうべきか?」
ボクも愛用している、徹夜に効く栄養ドリンクを『絶対者』に渡したのは渡したのだが、そろそろさすがに効果は切れているはずだ。体に悪いだろうと思いながらも、シェイラのために無理を強いてしまうことが苦しくてならない。
「……様子を見てこよう」
シェイラが拐われてから、一応執務をしてはいるものの、身が入っていないのは自分でも良く分かる。すぐに、シェイラの情報はないだろうかと思考が逸れてしまうのは、もう仕方のないことだと諦め気味だ。
残りの書類を脇に置いて、簡単に片付けると、ボクは早速シェイラの部屋へと向かう。無意識のうちに早足になりながら、部屋の前に着くと、その部屋の中からルティアスの悲鳴が聞こえた。
「リリスっ!」
「っ、何があった!」
慌てて部屋に入れば、ルティアスの腕にはグッタリとした様子の『絶対者』。
「箱、開けました、から……後は、頼み、ますわ……」
ルティアスに小さな玉らしきものを預けた『絶対者』は、そのまま意識を失う。
「ゆっくりおやすみ。リリス」
そんなルティアスの言葉で、『絶対者』は体力の限界だったのだと知る。この国に、『絶対者』以上の魔力操作の力を持つ者さえ居れば、彼女にここまて無理をさせることはなかっただろうと思いながら、『すまない、ありがとう』と言葉をかける。
「アルム陛下。僕は、リリスの側を離れられないので、こちらはあなたに託します。必ず、情報を掴んでください」
「あぁ、分かった」
ルティアスに渡されたそれは、蒼い小さな玉だった。手のひらで簡単に転がせるそれは、強い魔力の波動を放っており、異空間を形成する類いの魔法具だということが分かる。
「調べるか」
『絶対者』をお姫様抱っこで抱え上げて、客室へと向かった二人を見送ったボクは、その場で玉の魔力を解放する。すると、ドサドサと何束もの書類が玉の魔力に反応して、何もなかった場所から落ちてくる。
「ふむ……これは?」
マル秘マークに、極秘、だとか、墓場まで持っていく情報とかが表紙に書かれたものを選び、ボクはシェイラの居場所の手がかりが分かるかもしれないと意気込んでそれを読み始め……数分後、そっとそれを閉じる。
いつの間にか人化が解け、尾がビッタンビッタンとカーペットを叩いているが、とりあえず……とりあえずっ、これは関係ない書類だと判明し、そっと横に置く。
「他を探そう」
そうして探してみると、ようやく、シェイラの居場所に繋がりそうな情報を得ることに成功するのだった。
リリスちゃん、ダウンです。さすがに連日の徹夜は堪えた模様。
そして、アルムがおかしくなった情報に関しては、まだ秘密です(予想はつきそうですが)
それでは、また!




