第五十六話 つらい宝探し(リリス視点)
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今回は、まだ小箱オープンとはいきませんが、シェイラちゃんの規格外な部分が分かるかも?
それでは、どうぞ!
「それで、セルグの予想ではどの辺りかしら?」
「私の見立てでは、ベッドの辺りかと」
シェイラの部屋に着いたわたくしは、早速とばかりに、シェイラが小箱を隠しているであろう場所を確認する。ルティアスとベラには、小箱がどんな存在であるかの説明は済ませたため、今は大人しく聞いていた。
「なら、すぐに見つけられそうだね」
「そうですねっ」
ベッドの辺り、という限定的な言葉によって、ルティアスとベラはそんな言葉を紡ぐが……シェイラが、そんなに簡単に見つけられる状態で放っておくわけがない。
「ちなみに、リリスお嬢様。昔、小箱を探した時にかかった時間はいかほどでしたか?」
「一ヶ月、ですわね。セルグの指摘通り、クローゼットを探しましたが、透過の魔法はかけてるわ、幻術やら誤認魔法やらもかけてるわ、そもそも小箱が親指サイズだわ、天井にくっついてるわ、取り外しは慎重にやらないとしばらく天井の中に埋まるわで、相当に苦労しましたわ」
つまりは、見えないし、場所を勘違いさせる仕掛けが盛りだくさんだし、小さくて見つけづらいし、そもそも隠す場所としてあり得ないところを設定しているし、取り外し困難だし、というわけで、あの時は、本当に、本当にっ、大変だった。そして、ようやく取り出せたと思ったら、結局その中身はわたくしへのプレゼント案の資料を収納していただけという状態で……脱力感が凄まじかったのを覚えている。
「えっ……それって、見つけられる、のかな?」
ルティアスの不安に思う気持ちには、全面的に同意する。しかし、今は何が何でも見つけなければならない。しかも、今回は昔と違って、シェイラの目を避けながら、なんてことをする必要はない上、人数も居る。きっと、何とかなるはずだった。
「さぁっ、それでは探しますわよ? ルティもベラも、セルグも、もちろん、手伝ってくださいますわよね?」
ニッコリと笑いかければ、全員、大きくうなずいてくれる。
「当たり前だよ」
「シェイラ様を助けるためなら、もちろんですっ」
「微力ながら、お手伝いさせていただきます」
そうして、小箱捜索は、夜を徹して行われた。途中、アルムもこちらに合流して、一緒に探してくれて、わたくし達は、懸命に小箱の場所を探る。朝日が昇り、朝食を交代で取り、昼も、夜も、探し続けた……そして……。
「……ん? もしかして……」
ふと、アルムがベッドの側に置かれていた木彫りの置物に手を添える。
「……見つけた、かも?」
そう呟くアルムに、わたくし達は、一斉に血走った目をそちらへ向ける。
「どこですの!?」
「ほら、これ……わずかだけど、透明な出っ張りがある」
何かの角を持つ魔物を象ったらしい木彫りは、確かに、一ヶ所だけ、透明な出っ張りが存在していた。魔法を使って確かめてみたが、どうやら、幻覚ではなさそうだ。
「……ならば、後は仕掛けを解くだけですわね?」
ここからがまた大変なのだと思いながらも、わたくしは気合いを入れて、それに取り組もうとして……。
「リリス!?」
そこにかけられた術の数々を理解して、少しばかり、物理的な眩暈を覚える。
「……大丈夫ですわ。ルティ。……ただ、ちょっと、シェイラが腕を上げすぎていて、眩暈がしただけですから」
恐らくは、今日と明日も眠れない。それを覚悟して、わたくしは、そのまま箱の取り出し作業に取りかかるのだった。
罠、仕掛けるの得意ですもんね。
物を隠すのも、得意であるのに不自然はなかったですよね?
さぁ、次回こそは、小箱オープン、のはず?
それでは、また!




