第四十八話 初恋
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えー、順調なお見合いってなんだろう……?
それでは、どうぞ!
「あ……それ、は……」
私が他国の貴族令嬢と分かれば、ドライムは他国との繋がりを見出だしてくるかもしれない。しかし、それは到底無理な話で、過剰な期待を持たれても困る私は、その話をするつもりなどなかった。
射抜くような視線に、少しだけ視線をさ迷わせた私は、とにかく言い訳をしなければと口を開き――――。
「申し訳ありません。出過ぎたことを言いましたね」
フワリと柔らかな笑顔を浮かべたドライムを前に、口をつぐむ。深い緑の瞳も、今は優しげに細められている。
「そんなことより、薔薇園を楽しみましょう。ここは、珍しい青薔薇もあるのですよ?」
「それは、楽しみですね」
それからの私は、ドライムと楽しく薔薇園を見て回った。話に出ていた青薔薇は小さな区画ではあったものの、そこでとても見事に咲き誇っており、思わずうっとりとしてしまう。
「青薔薇の花言葉は、『一目惚れ』です。さぁ、シェイラ様、受け取ってもらえますか?」
そう言われて差し出された青薔薇を、私は喜んで受け取る。最初は憂鬱さもあったお見合いなのに、今ではとても素晴らしいものにしか思えない。
(……あら? 私は、なぜ憂鬱だったのかしら?)
胸に抱いた小さな疑念。何か大切なことを忘れてしまっているような、不思議な感覚。しかし、それも、ドライムに話しかけられれば氷解してしまう。
「そのうち、百本の薔薇を持って、シェイラ様に求婚させていただいても?」
「っ……は、い……」
嬉しい、嬉しい、嬉しい、嬉しい。
凄まじい歓喜に飲まれた私は、自分の頬が赤く染まっていることを自覚しながらも、どうにか返事をする。
(これは……恋?)
浮き立つ心が、初めての恋心の証だと気づき、何だか頭がフワフワとする。
(でも……何かを忘れているような……?)
大切なことを、忘れてしまったような違和感。心はこんなにも浮き立っているのに、それだけが、なぜか私に警鐘を鳴らしているような気がした。
「では、そろそろ戻りましょうか。陛下にも報告しなければ」
「陛下……そう、ですね」
『陛下』と言われて、なぜか、彼の顔が一瞬思い出せなかったが、すぐに思い出せるようになる。
(確か、名前は……アルム様)
失礼があってはいけないと思いながら、私はドライムのエスコートに従って、ゆっくりと歩を進める。
(この時間が、もっと続けば良いのに……)
幸せに浸っていた私は知らない。隣を歩いていたドライムの目が、妖しく光ったことを。その口元が、歪んだ笑みを浮かべていたことを。
私はただただ、これからの幸せの予感に、身を任せるのだった。
むむむっ、不穏がっ、不穏が現れましたよっ!?
はっ、これは、シリアスさんではなくフオンさん!?(キャラクターが増えた!?)
フオンさんは、ニョキニョキと地面から生えてきております。
それでは、また!




