第四十五話 暗い竜珠殿(ベラ視点)
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……いや、あの、お見合いのお話にしようと思ってたんですけど、ここに入れなきゃならない話があったのを後で思い出しまして……。
と、いうわけで、ベラ視点です。
それでは、どうぞ!
ここ最近、竜珠殿は暗く落ち込んでいる。それというのも、竜珠殿の主たるアルム竜王陛下と、その寵妃であるシェイラ様が憂鬱な面持ちであるためだ。
「デートは失敗、かぁ……」
私、ベラは、せっかくのシェイラ様の外出の機会が、どうにも失敗に終わってしまったということに、大きくため息を吐く。
何があったのかは知らないが、陛下もいきなりシェイラ様のお見合いの場を整えようとしだすし、シェイラ様はずっと上の空で食事もままならないし、正直、これ以上どうすれば良いのか分からない。
(陛下も、ビシッとシェイラ様に気持ちをお伝えになれば良いのにっ)
シェイラ様を振った不届き者に関しては、現在調査中で何も分かっていない。しかし、失恋に一番効くのは新しい恋なのだ。陛下がシェイラ様に求愛すれば、シェイラ様の心も晴れるかもしれなかった。
(でも、一介の侍女が進言するわけにはいかないしなぁ……)
シェイラ様の外出に関しては、必死だったから進言できたものの、改めてこんな恋愛模様に首を突っ込む形の進言となると、不可能だ。
(とりあえず、シェイラ様には甘いお菓子でも持っていこうっ。確か、チョコケーキを用意してくれるって料理長が言ってたしっ)
シェイラ様は、この竜珠殿の使用人達からはとても人気が高い。最初は、人間でも貴族だという情報に、また鼻持ちならない女性ではないかと危惧していたものの、実際のシェイラ様はとても優しく、一人一人の使用人を気にかけてくれる方だった。
(私、この職場から離れたくないな)
平民の私の言葉遣いにも怒ることなく、笑顔を浮かべて気安く話してくれる主なんて、きっとそう簡単には見つからない。そもそも、貴族の竜人の女性というのは気位が高い者が多く、シェイラ様のような性格の方は稀だ。
(チョコケーキっ、チョコケーキっ)
早くシェイラ様には元気になってもらいたい。そう思って厨房に向かっていると……途中で、何やら使用人用の入り口が騒がしいことに気づく。
「ですから、シェイラ様に会わせることはできませんっ」
「そこをどうか、お願いしますっ」
チラリとそちらへ視線を向ければ、スラリとした体つきの人間の男が、必死に頭を下げていた。
「何事です?」
と、そんな騒動を眺めていると、侍女長がやってきて、男をキッと睨むする。
「私は、レイリン王国にて、シェイラ様にお仕えしていた者でございます。この場所にお嬢様がいらっしゃると聞き、一目、お会いしたいと訪ねて参りました」
そんな言葉を聞き、私は男の名前と特徴を頭に叩き込むと、侍女長に断りを入れて、シェイラ様の元へ急ぐのだった。
『わたくし、異世界で婚約破棄されました!?』に出てきたとある使用人、ですねっ。
ちょっと忘れかけてましたが、しっかりと物語に絡めていきますよ~。
それでは、また!




