第四十話 戻らない日常(アルム視点)
ブックマークや感想をありがとうございます。
今回は…まーたシリアスさんが顔を出して参りましたっ。
それでは、どうぞ!
(今日も、シェイラと話せなかった……)
あの日、シェイラの姉である『絶対者』が訪ねてきて、ボクはすぐにシェイラの状況を話すつもりだったのだが、その前に、『絶対者』からもたらされた情報がとんでもないものであったため、そちらにかかりきりになってしまった。そして、その後始末に翻弄されているうちに、なぜか、ボクはシェイラから避けられるようになっていたのだ。
(『絶対者』に会わせることができなかったことは謝った。しばらく構ってやれなかったことも謝った。それなのに……いったい、ボクは何をしてしまったんだ?)
どんなに話しかけても、シェイラから答えが返ってくることはない。ただ、時折、酷く傷ついたような表情になっている気はするのだが、それも一瞬のことで、すぐにその顔には作った笑顔が浮かべられてしまう。
(ボクの何が、シェイラを傷つけた?)
考えても、考えても、答えは出ない。ため息を吐きながら、手元の書類を確認していく。
「……これは」
シェイラのことがどうしても頭から離れないまま、書類を見ていると一つの書類に行き当たる。『リリーア・ファルコットに関する報告書』と題されたそれに目を通したボクは、自分でも自覚できるほどに、眉間にシワを寄せる。
『リリーア・ファルコットには記憶の混濁が見られ、調査を行った結果、悪魔の魔力残滓が確認されました。位階不明。願いも代償も不明。引き続き、調査の許可を願います』
大まかにまとめてある文章を見る限り、どうにもきな臭いように思えてならない。ついでに、そのリリーアに雇われていたと思われる竜人の女性に関しては、先日、牢の中で何者かに殺害されているのが確認された。
(何が、目的だ?)
悪魔。それは、便宜上そう呼んでいるものの、とある禁忌魔法の作用のことを指す。『願いを叶える魔法』とも呼ばれるその魔法は、術者の魔力量に応じて、そして、代償に応じて、願いを叶える自立型の魔法だ。
第一階級から第三階級までの位階で表される悪魔は、術者の願いを叶えるために手段を選ばない上、位階が上であればあるほどに悪質な感情を持っている。当然、この魔法を行使すれば、多くの者が死に絶えることになるし、場合によっては術者も死ぬ。だからこその、禁忌魔法なのだが……どうやら、今回は、その禁忌魔法を使った者が居て、なおかつ、その悪魔は、リリーアを利用したらしい。
(国が、荒れるかもしれないな)
たとえ第三階級であろうとも、それが一匹存在するだけで、村の一つや二つは滅ぶ。それなのに、今回はリリーアをどういった形かは不明だが、操ってきた。
(第二階級……下手をしたら、第一階級、か……)
これは、非常に不味い。最優先で調査すべき事柄だ。
ボクは、すぐに許可の印を押すと、リリーアへの拷問を任せた者と話せるよう、場を整えるのだった。
さぁ、ギクシャクとしたシェイラちゃんとアルム。
悪魔のお話がどう関わってくるか、見ものですねっ。
それでは、また!




