第三十七話 断罪(アルム視点)
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今回で、とりあえずシェイラちゃん救出の裏側は終了ですっ。
それでは、どうぞ!
まず目に飛び込んできたのは、シェイラに駆け寄るギース。そして、そのシェイラを蹴ろうとしている、あの女の竜人。
(シェイラ!)
咄嗟に結界を張ってシェイラを守ると、一気に女を魔法で拘束する。その間に、ギースはシェイラをいつでも動かせるように抱え上げたようだった。
シェイラ達と女の間に割り込めば、女は大きく目を見開く。
「なっ、なぜ!」
ボクがここに居ることが理解できないといった様子の女を一瞥したボクは、もう一人、その女の後ろで青ざめている女を見つける。
(あれは、リリーア・ファルコット、だったか?)
確か、ボクに対して熱烈にアピールしてきた令嬢の一人だったと、どうにか思い出したボクは、ひとまずその二人を睨み付ける。
「よくも、ボクの寵妃を拐ってくれたな?」
シェイラを拐ったことは、許しがたい。ファルコット家は、古くから忠臣を排出してきた一族で、当主の性格も問題ない。しかし、どうやら娘の教育には失敗していたらしい。
「っ、ご、誤解ですわっ! 私は、その女のことなんて知りませんっ」
「なっ」
令嬢は、ボクの怒気に震え上がりながら、必死に弁明をしているが、この状況で、関係ないなど、あるはずもなかった。
「関係ない、か。それは、すぐにでも分かることだな。よもや、ボクの寵妃に手を出しておいて、生きていられるとは思うまい?」
「そんなっ! 私はただっ、陛下の目を覚まそうとっ。人間の女などに誑かされるなど、あってはなりませんわっ」
「過去には、人間を正妃にした竜王も存在する。何の問題もないな」
どうにも、この令嬢は馬鹿というか阿呆というか……とにかく、この国の歴史を学んだ令嬢とは思えないような発言をする。
「騎士達も間もなくこの場に到着する。そうすれば、お前達に待つのは死、のみだ」
寵妃に手を出した者が生き残れはしないことくらい、この国では幼い子供でも知っている。使用人に扮していた女の方は、それを理解しながらどうにかボクの拘束から抜け出せないかと、生き残る道がないかと探しているようだが、無駄だ。ボクの魔法は、そう簡単に解除できるようなものではない。対して令嬢の方は、諦めが悪いらしく、必死に弁明を続けている。そのどれもにシェイラを貶す言葉が入ってきているため、ボクは、シェイラを守る結界に音を通さない効果を付与して、しっかりとその言葉を刻み込む。シェイラを罵倒すれば罵倒しただけ、令嬢の罪は重くなるのだから。
「そんな女っ、きっと他の男にも股を開いているに決まってますわっ!」
ただ、ボクにも我慢の限界というものがある。何度目かのそんな罵倒にボクはとうとう、自分の中の何かが切れるのを感じて……次の瞬間には、令嬢の首筋に剣を当てていた。
「黙れ。ここで死にたいか?」
「ぁ……」
蒼白な顔でパクパクと口を開く令嬢。きっと、もう少し殺気を強めれば、意識を失うだろうと思えるところまで怯えているのを確認したボクは……容赦なく、殺気を強めて、気絶させる。その際、少しばかり首に傷がついたが、どうせすぐに死ぬのだろうから問題はないだろう。
と、そんなやり取りをしていれば、外が騒がしくなってくる。
(騎士達が、来たか……)
ボクは、ここに来てから一切魔力を抑えていない。そうすると、有能な騎士達は、ボクがここに居ることを察知して動いてくれるというわけなのだ。
ここへ駆けつけた騎士達は、倒れた令嬢と拘束された女に目を丸くするものの、すぐに、その身柄を確保する。そして、その間に、ギースにはシェイラをこの場から連れ出してもらう。
「その二人は拷問にかけろ。裏があれば、それも潰す」
「はっ」
テキパキと動き出す騎士達を見届けた後、ボクは最愛の元へと急ぐのだった。
さてさて、次回は……シェイラちゃんの想いをちょこっと描いていこうかなぁと?
救出の後、モヤモヤがありましたしねっ。
それでは、また!




