第三十五話 救出
ブックマークや感想をありがとうございます。
ちょっと遅くなりました。
さてさて、ようやく救出です。
それでは、どうぞ!
お腹に衝撃は走った……のだが、それは、思っていたものとは違った。何というか、抱え上げられたような気がする。しかも、相手の肩にお腹を乗せる形で。
「なっ、なぜ!」
使用人に扮していた女性の声に、私は、必死に瞼をこじ開けようとして、少しだけ成功する。
(アルム……?)
思った通り、私は誰かに抱えられていて、私は少しだけ頭を動かして、アルムらしき後ろ姿をぼんやりと見つめる。
「よくも、ボクの寵妃を拐ってくれたな?」
その瞬間、恐ろしいまでの怒気が辺りを満たす。
「っ、ご、誤解ですわっ! 私は、その女のことなんて知りませんっ」
「なっ」
どうにも仲間割れを始めたらしい声を聞きながら、私は誰に抱えられているのかが気になってくる。
「? 目が覚めましたか?」
少しずつ、体に力が入るようになってモゾモゾしていると、私を抱え上げている人物の声が響き……納得する。
「ギー、ス?」
「はい。すぐに終わりますので、ご辛抱願います。何なら、このまま眠っていても構いませんが」
アルムと対峙した彼女達が騒いでいるのを聞きながら、ギースのそんな言葉に、思わず瞼を落としかける。
(ダメです。ここは、少しでも、アルムのために情報を集めなければ)
「ギース……魔封じ、壊せます、か?」
途切れ途切れになりながらも、魔封じの存在を伝えれば、ギースは黙って私の腕を取って、そこにはめられていたであろう何かを取り外す。
「ただでさえ、魔力枯渇を起こしてたっていうのに……あの女達は、極刑かもしれませんね」
ギースの言葉は、今はよく理解できない。今の私にできることは、蜘蛛をこの建物の中に放っておくくらいのことだけだろう。今は、まだ万全の状態とは言いがたいので、情報を集めるのは難しい。
「シェイラ様。もうそろそろ決着がつきます。移動しましょう」
私が蜘蛛を放ったことに、恐らくギースも気づいてはいるのだろうが、それについて言及することなく、ゆっくりと、私にあまり振動が伝わらないようにしながら移動してくれる。
(もう、安全、なのですね?)
いつの間にか、女達の声は聞こえなくなっている。そして、途中で私はアルムに抱え直されて、お姫様抱っこ状態になる。
「シェイラ。怖い思いをさせてすまなかった。もう、大丈夫だ。ゆっくり眠ると良い」
普段なら羞恥心が上回るこの状況。しかし、今はどうにも眠くて眠くて仕方なかった。
ゆっくり、ゆっくり、心地よく揺れるその感覚に、私は少しずつ身を委ねていく。
「『絶対者』には、感謝しなければな」
そんな、嬉しそうな言葉に、何となく胸にツキリとしたものを感じたような気がしたが、眠気に抗うことはできず、ゆっくりと、意識を閉ざすのだった。
よしっ、とりあえず、シェイラちゃん視点は終わりにして……次はアルム視点でいってみましょう!
それでは、また!




