第二十四話 違法カジノへ
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今回は、シェイラちゃん視点で、嵐の前の静けさ、かな?(静か、だと思われる?)
それでは、どうぞ!
「全く、アルムにも困ったものです」
アルムから逃げるのに使用したのは、つい先日、お姉様からいただいた転移用の腕輪型の魔法具だ。
これは、三ヶ所だけ、場所を記録でき、その地点には自由に転移できるようになるという優れもので、お姉様曰く、もっと記録箇所を増やして、使用魔力量も減らしたいとのことではあったが、これでも十分、国宝級の代物だ。
何かあった時のためにと、一応この地に足を踏み入れた時、場所の記憶を行ったのだが、どうやら成功だったらしい。
「さて、と。追っ手がかからないうちに、隠れなければなりませんね」
とはいえ、転移できる場所は、宿屋からそう離れていない地点でしかない。人目につかない場所ではあるものの、あまり長居していれば、アルムに見つかりかねない。それでは、私の『こっそり違法カジノまで着いていって、支援しよう』という思惑が叶わなくなってしまう。
「ふふふっ、地の利は私の方にあるんですよ?」
蜘蛛達には、当然、このナット領の地理も調べさせている。だから、私はどう行けば、アルムの手の者に出くわすことなく、自由に動けるか分かっていた。
細い小道を、時には隠れるようにして存在する道を、そして、アルムの手の者が居ないことを確認して、大通りを歩いていき、私は着実に違法カジノへと歩を進める。
「……あそこ、ですね」
そうして、辿り着いたのは、立派な佇まいの木造の屋敷。ここの地下が、違法カジノとなっていることは、すでに突き止めている。
「……とはいえ、さすがにアルムも先回りしているようですね」
私が歩きであるのに対して、アルムはもしかしたら、馬でも使ったのかもしれない。いや、それ以前に、アルムと私では歩幅がかなり違うので、そのせいということも考えられる。
近くの木陰に隠れながら、私は、ひっそりと屋敷を包囲しているアルムの手の者達を蜘蛛で観察してみる。
(……やはり、穴がありますね。包囲するならば、あちらの掘っ建て小屋も含めなければ、あそこが、緊急時の隠し通路の行き先になっているみたいですからね……)
さて、それをどう伝えたものかと思案していると、早々に動きが見えた。
アルムの指示で、十名ほどの騎士達が、違法カジノへ侵入を開始したのだ。
(っ、いけない! 中には、かなりの人数が居るから、あのままでは完全に逃げられてしまうっ)
人数を割くならば、もっと多くなければならない。いや、それでなくとも、まず、中には様々な仕掛けがあり、簡単には侵入できないはずだ。
「しかたないですね。行きますか」
こうなっては、もう、私が出ていくしかない。ただし、アルムに見つかるのだけは避けて。
(私だって、役に立ちます)
実は、潜入はお手のものな私は、そっと身を屈めて、一つの魔法を使う。
「変化」
魔法によって、変化した姿は、小さな小さなフェレット。ぼんやりとした茶色の体毛に、紅い瞳を持つその姿は、私の髪と目の色をそのまま受け継いでいるのだが、あまり目立たないため、こういったひっそりと行動する時にはとても便利だ。
(さぁ、走り抜けましょうか?)
私がやることはたくさんある。まずは、侵入を開始した彼らが、罠にかかることがないよう、先回りして、全ての罠を解除すること。そして、何らかの方法で、隠し通路の終点となっている小屋を包囲させるように仕向けること。あとは……。
(捕縛は……そうですねぇ。とびきりの贈り物をして差し上げましょうか)
そうなると、時間が惜しい。私は早速侵入を開始した騎士達とは別の経路を選び、罠の解除に励むのだった。
次回は……とっても楽しいことになりそうですよ~。
シェイラちゃんを敵に回すとどうなるか、彼らにはしっかり、身をもって知ってもらいましょう。
それでは、また!




