第十四話 情報収集
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リリスちゃんやルティアスがシェイラちゃんと何を話したかは、『わたくし、異世界で婚約破棄されました!?』の第四八話から五十一話に書いております。
それでは、どうぞ!
お姉様との会話も、ルティアスとの会話も、そこそこ実りのあるものになったように思える中、私はお姉様達を見送って、胸に広がる寂しさに蓋をする。
「さて、私は私で、前を向かなければなりませんねっ」
やることは数多い。まずは、この国の貴族達と結びつき、様々な情報を仕入れられる体制を整えることが重要だ。そのためには、アルムに頼んで彼らと話せる場を作らなければならない。そう、思って、私は早速アルムの部屋を訪れたのだが……。
「それは……かなり、難しいな」
「何がですか?」
眉間にシワを寄せたアルムに、私はそんなに難しいことを言ってしまっただろうかと疑問を投げる。
「すまない。これは、ボクの対応のせいだ。基本的に、寵妃は、王と一緒に夜会などに出席はするものの、その側から離れることはない存在なんだ」
そう告げられて、私は理解する。
(つまりは、私が動けばアルムも動いて、情報収集どころではなくなる、と?)
私が理解したことに気づいたアルムは、申し訳なさそうに謝る。
「すまない」
「いえ、それならそれで、別の方法を考えるまでです」
本当ならば、私自身が動いて情報を集めたいところではあったものの、それができないのであれば仕方ない。今は無理だろうが、少しすれば、情報を集める手段を手に入れられるはずなのだから。
「確認させてください。私につける侍女は、貴族も来ることがありますか?」
「あ、あぁ。ベラは平民だが、後々は貴族出身の侍女をつける予定で、今、選別中だ。ベラは、本人の意思次第で継続するかどうかを決めてもらうがな」
「そうですか。では、その貴族の侍女の位はどの辺りになるのでしょうか?」
「子爵か男爵辺りだな」
「なるほど……」
不思議そうにしながらも、律儀に質問に答えてくれたアルムに、私は種明かしをする。
「では、その娘に、私の情報収集技術を仕込めば問題ない、ということですね?」
自分でも、良い笑顔になっているだろうと思いながら問いかければ、アルムは大きく目を見開いて、次の瞬間には、『クッ』と笑い声らしきものを上げる。
「そうか、なるほど。確かに、シェイラの言う通りだ」
どこか楽しそうなアルムの姿に、私はますます笑みを深める。
「そうでしょう? 竜人は身体能力も高そうですし、みっちりと諜報の技術を仕込みますよっ」
「……ちょうほう?」
「はい、諜報です」
ただ、さすがにこの言葉は予想外だったらしく、アルムは珍しく固まってみせる。
「……諜報……」
「お姉様お墨付きの、諜報技術がありますので、ご心配には及びません」
そう、こんな私でも、お姉様のお役に立てるよう必死に頑張ってきたのだ。お姉様のような戦闘能力は乏しいものの、諜報能力はレイリン王国で一番であった自覚はある。と、いうか、もしかしたら、この国でも有数の存在に入るかもしれなかった。
「……あの人の妹が普通なわけはなかったのか……」
「失礼な。私は、れっきとした普通の令嬢ですよ?」
ついには遠い目をし出したアルムに釘を刺した私は、そこでふと思いつく。
「そうそう。ロデル伯爵には注意した方が良いですよ? そろそろ何かやらかしそうです。具体的には、地下のパーティーですね」
地下のパーティーというのは、違法奴隷オークションのことを指している。この国では、奴隷は認められてはいるものの、それは犯罪奴隷のみだ。それ以外は、全て違法となっている。
恐らくは、一部の者にしか伝えていなかったであろうその情報を出したことで、アルムは本格的に頭を抱える。
「……分かった。シェイラの能力が本物だってことは分かったから、侍女を諜報員に仕立てるのだけはやめてくれ」
「あら? ですが、私が接触できる相手といえば、侍女くらいのものですよ? もちろん、ベラを諜報員にしても良いですが、貴族相手では分が悪いこともありますし……」
「シェイラには、ボクの影を貸すから、そいつらを使うようにしてくれ」
「……仕方ないですね? では、少しその影とやらに試験をして、それに合格した者のみを使うとします」
「だ、そうだ。ギース」
「……」
アルムの呼びかけに、部屋の中に隠れていた竜人の男が顔を出す。……いや、正確には姿を現すだ。彼は、顔を黒い布で覆っており、どんな顔なのか不明だった。
「……」
「……」
そんな彼と見つめ合うこと数秒。
「陛下、俺、負ける気がしない」
「あら、奇遇ですね? 私も負ける気がしませんよ?」
私達は、互いの負けん気をぶつけ合い、不敵に微笑むのだった。
シェイラちゃんが普通の女の子だと思っていた者共よっ。
残念だったなっ(笑)
と、いうわけで、シェイラちゃんは諜報のプロでした。
通りで、リリスちゃんがシェイラちゃんの情報をありがたがるわけです。
それでは、また!




