第十一話 絶対者の訪問(アルム視点)
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このお話は……『わたくし、異世界で婚約破棄されました!?』の第四十八話と連動しております。
あちらではシェイラちゃん視点だったので、今回はアルム視点ですね。
それでは、どうぞ!
『絶対者』が、あのルティアスという魔族とともにこの国にやってきた。
(あの魔族は……ボクにとってのライバル、なのだろうな)
ボクは、『絶対者』が応えてくれるのであれば、彼女を妃にしたい、くらいの想いはあった。しかし……。
(どう見ても、ボクよりもあの男の方に気を許してる)
敗色が濃厚に見えてしまうのは、きっと、過ごした時間の差……だと思いたい。
ボクが愛する『絶対者』こと、リリス・シャルティーは、祖国で冤罪をかけられ、国外追放に処されている。そして、そんな彼女は、魔の森という恐ろしく危険な森に家を構え、そこでゆっくり過ごすつもりだったらしいのだが……そこに、ボクのライバルとなるルティアスが現れ、現在、熱烈に『絶対者』へ求婚しているものと思われる。
(羨ましい……)
この国の王であるが故に、簡単には動けない自身が恨めしい。そう、思うものの、それは、思っていたほど強い感情にはならず、少しばかり困惑する。
「久しぶり、というほどの時間も経っていないか。元気にしていたか? アルム?」
「っ、うん、元気にしてたよぉ」
ローブを被って、『絶対者』として現れた彼女の言葉に、ボクは極力優しく言葉を返す。隣ではなぜか、シェイラがボクを残念なものを見るかのような目で見ている。
(解せない)
そう思いつつも、シェイラは自らの姉と話をするべく声を上げる。
「初めまして、『絶対者』様」
「貴女がシェイラ嬢か。この度は、私の我が儘を受け入れてくれたこと、感謝する」
表向きの目的は、『絶対者』がシェイラの情報を手に入れて、その件に関して話がしたいから訪問したということになっている。もちろん、何の情報かは秘密ということにしてあるが、そもそもが妹に会いに来ただけなので、そんな情報はない。
「こちらへどうぞ。お茶の準備を整えておりますので」
「あぁ、できれば二人で話をしたいのだが、それは可能か?」
「それならぁ、ボクがちゃんとした場所を用意してるから、問題ないよぉ」
残念ながら、『絶対者』の目的がボクではないことくらいお見通しだ。だから、シェイラには警備がしっかりとした場所で、二人になれる空間を用意して、そこに準備を整えてもらった。一応、男として見られている『絶対者』にエスコートされて、シェイラ達が立ち去るのを見てから、ボクは、改めてもう一人の訪問者へと目を向ける。
「お前は行かなくて良かったのか?」
「はい。僕は、『絶対者』の後に話をさせていただければ十分ですので」
つまりは、ルティアスもシェイラに用があるということなのだろう。その事実に少しばかりモヤモヤしたものを感じながらも、それならばと別の部屋を用意し、時間を潰してもらうことにする。
(どうせならば、少し話してみるか)
お互いに同じ人間を好きになった者同士。一度くらい、しっかりと話をしてみるべきかもしれない。
「ならば、ボクと一緒に来い。時間が来るまで、話をしよう」
「分かりました」
人懐っこい笑みで応えたルティアス。ボクはそれを確認すると、立ち上がってさっさと進むのだった。
さぁ、ライバル同士の話し合い、どうなることやら?
それでは、また!




