エンチャント
陸は台車から装備を手に取り、装着していく。
王国最強の装備とやらの見た目は重厚だったが、信じられないぐらいに剣も盾も軽い。
特にこの黒い勇者の鎧。装備すると逆に体が軽くなったような気さえする。まるで生まれた時から身に着けていたように陸の体に馴染んだ。
陸が装備を装着している間に兵士達がミーファたちへと装備を届けた。ミーファたちは慣れない装備に手間取る陸の背後に廻ると、素早く装着を終えた。
ミーファは水色のスティクと聖女の描かれた銀色の盾。水でできた魔法のスカートが陸の目を惹いた。
マールは古木の杖に、蓮の葉を分厚くしたような盾を持っており、薄い緑色のローブに身を包んでいる。リルムは黄色やらオレンジやら、やたらカラフルで動きやすそうなウィンドブレーカーのような軽装に、鋭い牙のような短刀を装備していた。
皆の準備が整ったのを確認し、ミーファが3人を城のバルコニーへと誘導する。
外に出た陸達の耳に、遠くの方から唸り声が届いた。
その咆哮はその位置からも大きく大気を震わし、大地さえも震わせていた。
「マジかよ……。」
陸から心の声が漏れる。
黒点のように見えていたドラゴンと陸たちとの距離が徐々に狭まる。
「エンチャント。エンジェルウィング。」
ミーファがそう唱えると、陸たち4人に輝く白い翼が生まれた。
陸以外の3人は翼で風を掴むと、フワリと満月の空へと舞い上がっていく。
「オイオイ!これどうすんの……。」
「勇者さま!自分の体の一部だと思って!」
完全に取り残された陸だが、ミーファのアドバイスに従い翼を動かす。ぎこちないが、陸も空へとふらふらと舞い上がった。
「……ゆーしゃさますごい……。」
「さすがだニャ!」
陸は10回翼を羽ばたかせた頃には既に自分のものにし、ミーファたちの昇る高さへと追いついた。




