黒の勇者
今度は女性の声ではなく、片言の神父の声が聞こえてくる。
陸は緊張してテーブルをジッと凝視しすぎたためなのか、目が開かず、意識が朦朧とする。
「アナタワァー、コノヒトォー、ショウガイノハンリョトスルコトォー。チカイマスカァー。」
「「「はい。誓います!」」」
まるで運動会の選手宣誓のように、声が重なって聞こえてくる。
陸は少しずつ意識を取り戻していき、目を開いた。
とびきりの3人の美女が目の前に立っている。
合コンの女の子??
いや……。右の子の耳と、左の子の耳…。エルフにネコ??
ハロウィンの仮装にしては早すぎる…。まだ半年ぐらいあるし…。
「ミーファと申します。」
「私はマールです!」
「リルムだニャ!」
正面にミーファ、右少し上にマール、左下にリルムが立っていた。
ミーファは純白のウエディングドレス。マールは心落ち着く緑のドレス。リルムは気持ちが明るくなるような鮮やかな黄色いドレスを着ていた。
「ソレデハァー、チカイノォー、キスヲ。」
ミーファ、マール、リルムが3方向から迫り、陸の唇にプニッと柔らかく触れる。
その瞬間。陸の足元にあった召喚の魔法陣が黒く光り、4人を包み込んだ。
「よくぞ私たちの世界へといらっしゃいました。黒の勇者さま。」
ミーファが満面の笑みで、陸を歓迎した。
しかし、その笑みの奥底に隠した恐怖と決意に気がつくことなど、この時の陸にはできるはずもなかった。
3人のキスとミーファの笑顔に心を撃ち抜かれた陸は、召喚の影響からか再び意識を失ってしまった。