王女ミーファ 月を見上げて
コンコンと控え目なノックが聞こえ、#陸__リク__#はベットからガバッと上体を起こした。
「誰だっ??」
「お目覚めになられたようですね…。ミーファです。勇者さま。」
「ミーファ……。……さっきの!どっ、どうぞ!」
ミーファ王女は陸の返事を聞くと、陸へと用意された城の特別客室へと入り、後ろ手に扉を閉めた。
「………今宵は私とお相手を…。」
いじらしく目線を落とし、少し顔を赤くして、ミーファは恥ずかしそうに呟く。
わずかに栗色を帯びた長い黒髪を揺らし、静々とリクの方へと歩み寄る。
「エッ……。お相手って……。」
陸はゲームやダンスなど、色々な#お相手__・__#の可能性を頭に巡らしてみるが、どれもこの状況では現実的ではない。
話のお相手??それともアレのこと??
ミーファは何も答えず、陸の腰掛けていたキングサイズのふかふかのベッドの傍までくると、スッと隣に座った。
甘い不思議な香りが陸を惑わす。
暫しの沈黙。
「今宵は月が綺麗ですね…。」
そう言ってミーファは陸の世界とは比べものにならないほど、とんでもなく大きな満月を窓から見上げる。
「あっ…ああ…。そうだな……。」
陸とミーファを凛々と月光が照らす。キラキラと輝く光線は、薄暗い部屋にいるふたりを白く浮かび上がらせた。
「勇者さまは私のことはお好きですか?」
「好きも何も……。#まださっき会ったばっかりだし__・__#…。」
「勇者さま…。恋に時間など関係ありませんわ。これは運命なのですから…。」
陸はミーファのその言葉に、半ば#脅迫めいた__・__#ニュアンスを感じとる。
しかし、ミーファのさざ波のような眩しい水色の瞳に覗き込まれ、その僅かな違和感はすぐに忘れ去られる。
そしてミーファは陸を促すように、ゆっくりと目を閉じる。
陸は堪らなくなり、右手でミーファの前髪を優しくわけると、そのままミーファの左耳に添えた。
陸はその手を滑らせ、瑞々しい頬の弾力を感じながら輪郭を優しくなぞっていき、ミーファの顎をグッと持ち上げる。陸も徐々に目を閉じながら、覆いかぶさるように唇を近づけた。