きっかけ
「先生、僕なにもしてないんですけど……」
ドアが閉まった直後に、僕から発言をした。
指導室は思いの外豪華で、茶色の皮のソファや茶色い木の低めのテーブルが上品な雰囲気を醸し出している。
「なにもしてなくて呼ばれると思うか?」
「いや……、でも喧嘩はしてないですね。」
窓の近くには花瓶に花が刺さっている。手入れされているなあ。そう感心したところで、僕は続ける。
「先生達も他の用事で僕を呼んだんですよね?喧嘩だったら放送で呼び出せばいいですし。間宮先輩がわざわざ僕を探す必要がない。」
「意外と……勘がいいな。」
「それで、本当の用事は何ですか?」
すると先生は何かを諦めるかのように決心をするように短く溜息をついた。
元々、ガタイの良い体育の先生のはずだがこう見ると萎縮しているのか、何故か弱々しく見える。
そして若干ためらいながら口を開いた。
「“迷い込んだ天才の眠り姫”がお前をご指名だ。」
僕は、数分間くらい動けなかった。実際はそう感じただけで数秒だが。
「それってどういう……」
「それはこっちが聞きたいんだ。お前、眠り姫に何かしたか?」
先生方も眠り姫と呼ぶんだと、どうでも良いことばかり処理されて、一番大事なところが頭に入って来ない。
「なにも……してないですね。」
「はあ……。こちら側としては無闇に一般の生徒を眠り姫に関わらせたくないのだけれど、眠り姫からの要望となると国の要望と同意だから誰もなにも言えないんだ。」
「はあ。」
「とりあえず、今日の放課後またここに来てくれ。あと、このことはまだ秘密で頼む。何かの手違いかもしれない。」
先生も困っているようで、わかりましたと僕が返事をするとすぐに指導室から出してくれた。
僕はこのような変な状況に巻き込まれてしまったが、まずは放課後になるまで分からないなと開き直って教室に戻った。まあその教室というのが面倒で僕が喧嘩したという噂があっという間に広まっていた。興味本位で聞いてくる者、当事者意識が高い者、ただ怯えて一線を引く者。僕たちの狭いセカイの中で住民はそれぞれの反応を見せた。嫌われたくない僕は、一瞬で自分の立ち位置を守る答えを求め実行した。多分間違ってはいないと思う。みんなも笑ってくれたし、嫌われたり無視されたりするようなことは言っていない。ただ、嘘で塗り固めてしまっただけで。
クラスの空気がいつも通りになったところで授業のチャイムがなった。
今立て込んでることが増えたので少し更新遅くなります!!
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