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迷い込んだ天才の眠り姫  作者: 佑季
1/5

序章と出会い

彼女を一目見ることができたのは、本当に偶然だった。


校舎裏の、誰も見ることの無い場所にひっそりと咲くチューリップの花壇。そこで一人で、たった一人で花を眺めていた。

僕、相馬 湊がじょうろを持って花に水をやりに行こうとした時だ。大きめの砂利が引かれている花壇の近くを歩いた音で僕は彼女に見つかった。


「ひさしぶり。」


何を思ったのか彼女はそう言って歩き出した。

途中、ちらちらこちらを見てくるのでついて来いという意味だと解釈をした。

そのまま誰も行かないような校舎の塀へ着くと彼女はその塀をおもむろに登りだす。


僕は黙ってその行動を見て、その意味を考えた。

結局、考えたところでなにも分からなかったので考えるのをやめた時、彼女は登り終わる。


「じゃあね。」


塀の向こうで車の扉が閉まる音がするので、そういうことかと納得した。


この学校には“迷い込んだ天才の眠り姫”と呼ばれる少女がいる。

誰がつけたあだ名なのか明らかでは無いが、その理由は入学して二週間で知った。


政府が生んだ天才。

研究室に幽閉された少女。


世間には肯定的と否定的の二パターンの呼び名がある。誰も本名は知らない。政府は仮の名として彼女に、“鮎川 未来”と名付けた。


彼女の母親は名高い鮎川 智香で、父親は未だ名乗りを上げていない。

鮎川智香は、あと二十年後にはノーベル賞を取っているだろうと世界的にも有名な研究者である。

そんな彼女は研究室の中で未来を産んだ。

彼女は最初こそ子供なんていらないものだと思い、育児はほとんどせず、未来を保育園か託児所に預けた。父親は誰だという質問にも、答えなかった。

そんな風に、彼女が未来を放置して二年が経とうとした頃に未来は天才の頭角が現れる。

保育園で絵を描いていた時、未来は黄金比で絵を描いた。また、足し算引き算はもちろん掛け算割り算までたったの2歳に満たない時点ですべて行うことができた。

誰が教えたわけでは無い。記号などはわかっていなかったが、計算方法は完璧だった。


そう、彼女は自分でそれらの公式を作ったのだ。


保育士がそれらを智香に伝えると、目の色を変えて研究所に連れて帰った。

その時にたったの84時間、日にちで換算すると3日と半日の間数学の高校生レベルの教科書と化学の教科書を読ませ、それを未来は理解し、覚えた。もちろん、その84時間のうちに日本語も理解した。


また、どのレベルか確かめるために智香は未来に自分の研究の化学式を見せたところ、理解するだけでは至らず新たな化学式を作り出す。


智香はその化学式のもたらす効果を実証し、それが人類にとって大きく貢献するとわかった。

このことを政府に提出すると、未来は将来有望的かつ現在も社会にとって必要な人間とわかり、特別措置をとった。

未来はたった2歳のうちから研究室で智香と共に研究をし、結果が出るたび世界を震撼させていった。


そんな彼女が、僕たちと同じ公立高校に通っている。


ただ、学校も特別扱いで、彼女用の特別な部屋が用意されてそこで授業がされているという。

この高校に通う生徒で、彼女と会うことができるのはたった1人だけ。


彼女はまるで眠り姫のようだ。

荊棘に囲まれている彼女に会える者は少ない。

こんな高校に来るなんてなにがあったのだろう。

彼女なら高校どころか海外の大学まで行けただろうに。あぁきっと迷い込んでしまったんだ。



だから“迷い込んだ天才の眠り姫”。

あだ名をつけた人の思考がすぐわかる。

よくできたあだ名だ。


そう、この学校では一人を除いて彼女に会ったことある生徒はいない。

なのに、花壇で会った少女が“迷い込んだ天才の眠り姫”と思ったのは、彼女が持つ独特の雰囲気のせいだろうか。もしかしたら僕の勘違いかもしれない。

だけど、なぜだか僕はその日一日彼女の顔が頭から離れなかった。

初めて書かせて頂いてる小説です。

自己満足のために書いておりますが、誰かにこの小説に秘めたメッセージに気づいていただけたらなと思います。

本当は1本にまとめるべき長編小説なのですが長すぎるためにわけました。

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