CはコモンのC?
ゲーム時間1時間程でリアルンからの呼びかけで昨日の5人が集まった
予想通り彼等はリアルでもやり取りができるように連絡先を交換していたようだ
そのおかげで何とか時間に余裕を持って移動できそうだ
「AGIで移動速度が変わるゲームじゃなくてよかったっすね」
「運営的にはAGIで移動速度が変わるのはゲームのステ振り範囲を狭める行為という考えらしいねー」
AGI初期値のいっちゃんとAGIをある程度上げているナイフが並走している
一部のゲームではAGIに振ると移動スピードが上がるゲームがあるらしいが、そうなるとVIT型のタンクやヒーラー、魔法職は狩場に移動するのが遅くなり、遠くの狩場に誘われにくくなる
そういった不平不満が出ないようにAGIによる移動速度を差をつけないという仕様に決まったらしい
魔法や装備効果、騎乗効果による移動速度上昇は可能だが前者の効果は決して高いとず、後者は非常に高価である
「移動速度が速いってことはそれだけゲームで有利になれるっていう事だしね、元々低いヒーラー人口が壊滅的になっちゃうよねー」
もしそんなシステムだったらさすがに僕もヒーラーしてないかも、といういっちゃんに、AGI初期値仲間のトトが頷く
「ところで1君クエストの前にある『C』これって何だと思う?」
「ん~……無難に考えるとコモンかな?」
クエストのレアリティを表す、Cだろうという俺の予想に自分のステータスカードを見ていた十色が「ん~・・・」と納得していないような声をあげる
「うちはチェイン、連続クエストじゃないかと思うんだけど」
「つまり村を守って終わりじゃないってことかな?」
「その後何か続くかもしれぬということかの?」
「まだ情報が少なすぎてわからないけど、もしかしたら・・・」
皆さん、あれを見てください!
メリア嬢が指指した先には山賊達が村の門の前に集まっていたそれに対して村人達は反撃もせずに身をひそめるばかりである
俺達がいる場所は村や山賊がいる場所よりも高い場所であった為、山賊の注意を引かないために一度身をひそめる
村は高い山に囲まれた盆地になった所にひっそりと建っていた
村の奥の方には草原や畑の姿も見える、そこで野菜やヤギに似た家畜を育てているようだ
「一体どうなってるのでしょうか・・・?」
戦闘が行われずににらみ合いになった状態にメリア嬢はタマモの方を見る
「ぬしよ?何かわかるか?」
「ん~、メリア嬢、門を守ってるのってどんな人達?」
「えっと、自警団です、けど」
「もしかして自警団って農家の次男、三男が中心?」
「はい、そうですよ?」
その言葉にプレイヤー全員がピンと来たようだ
「農家の次男とか三男っていうのは結婚できない人が多かったりする?」
メリアがこくりと頷くとナイフが頭をガシガシとかきながら
「あー、つまりあれっすか、村守って死ぬ位なら山賊に味方した方がいいみたいな感じっすか?」
「そんな・・・」
貧しい農村等では長男だけが扱いがよく、次男三男が不満に持つという話が昔あったと聞いたことがあったが、まさかこんなところでそれを目の当たりにするとは思わなかった
「まだ決まったわけじゃない」
トトがメリア嬢を慰めるように肩を叩く
「そうですね、何か別の理由があるかもしれません」
リアルンも慰めるように声をかけた後に俺の方を向いてくる
「それでどうする?」
「そういうのはリアルンに決めてほしいんだけどなぁ・・・」
「ふーむ、まだ随分私達と山賊の間には距離がある、私達が近づく前に自警団側が崩壊しかねないね」
確かにこうして話してる間にも門を開けるために自警団の誰かが走り出してもおかしくない
「なのでこちらとして打てる手としては・・・」
リアルンが銀弧を見つめる
「銀弧ちゃんの空蹴を使えば私達よりも早く村にたどり着ける、メリア嬢を連れて村へと一足先に向かってもらい冒険者が来ていることを伝えて指揮を上げる」
「その間に回り込む?」
「そうだね、もしこれがチェインクエストなら恐らく逃げた先に盗賊の親玉がいてそれの討伐のクエストに繋がるんじゃないかな?」
「とはいえ、銀弧ちゃんだけじゃ不安っすね、俺もなんとかついて行ってみます」
確かにナイフは身長180オーバーのがっちり系マッチョだから、銀弧にはない威圧感というか、強者の雰囲気は十分だろう
「実力じゃ銀弧ちゃんに負けてるんすけどね」
苦笑を浮かべるナイフを連れて、メリア嬢を抱きかかえた銀弧は空をかけていく
ギヤアア・・・という女性らしからぬ声を一瞬上げた人がいたような気がしたがきっと俺の気のせいだろう、すぐに収まったしな
「確かに叫び声を山賊に聞かれたら困るとはいえ、銀弧ちゃん容赦ないのー・・・」
メアリ嬢の口を押えながら空をかける銀弧にトイロが苦笑する
「さて。俺もいくかな」
銀弧達を見送った俺は魔法の絨毯に一緒に乗っていた金弧をタマモに預ける
「何をするつもりじゃ主よ?」
「的位にはなろうかなと、タマモ絨毯傷ついたらごめんな」
タマモに一言誤ってから俺は俺は絨毯を加速させると山賊共の頭の頭上へと飛んでいく
結構な速さで自分の前から離れていく主を見守りタマモは思わず独り言をつぶやく
「まったくなんだかんだで面倒な所に首を突っ込むのじゃな」
タマモは慈愛に満ちた笑みを浮かべて空を飛んで行った自分の主を見送った
次回からこの作品初の三人称でお送りします