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死刑囚、魔法学校にて教鞭を振るう  作者: 無道
ある教師の日常
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反省会 1

「そう言って頂けると助かりますが……どうして僕があの場所にいるって分かったんですか?」

「それはね、実はカナキ君を見ていたんじゃなくて、レイン君を見ていたの。戦力偵察ってやつ?」


 なるほど。そう言われて合点がいった。つまり、事前に僕の行動が分かっていたわけではなく、アルダールを監視していたところに、僕が偶然現れたということか。


「でも、『天衣霧縫(ミスト・ヴェール)』を纏わせてたのに、よく僕だってわかりましたね」

「あのねぇ、あんなにバンバン撃たれて、しかも首まで落ちても平気な顔してる人間なんてこの街、この世界を見回してもあなたくらいしかいないわよ?」


 そう言われると僕も鼻白む。それは言い換えれば、知ってる人から見れば正体が一発で分かってしまうってことですよね。


「だから本当は最初からカナキ君が戦っているのは見ていたんだけどね。向こうの実力を測れる良い機会だったから、しばらく見学させてもらってたわ」


 悪戯っぽく笑ったセニアだが、本来なら、単身で挑まねばならなかったところを結果的に助けられたわけなので、怒りは全く湧いてこない。それより、僕としては、他に驚いた点があった。


「いえ、結果的に助けて頂いたので、それは構わないんですけど。それよりセニアさんが戦力偵察なんてすることの方がよっぽどびっくりですよ」

「あら、そう?」

「だってセニアさん。相手の力量を知っていたんじゃつまらない、とか言いそうですよね」


 すると、セニアは思い切り噴き出した。


「あははっ! やだもーなにそれ! 私ってそんなキャラだと思われてたの?」

「いや、快楽至上主義のセニアさんですから、有りえないことはないかと思いますけど」

「いやいや、そんなことして万が一にも負けちゃったら、しばらく楽しいことが出来なくなっちゃうじゃない。私は快楽至上主義だけど、半恒久的に愉しみたいの」

「そんなものですか」

「そんなものよ」


 後方で大きな火柱が上がった。位置的には先ほど僕がいたところの辺りか。それを見て、セニアさんは「あー」と気のない声を上げた。


「向こうの増援も来ちゃったみたいだから、足止めもここまでね。今日はこれでお開きにしましょうか」


 踵を返したセニアの隣を歩きながら、僕は質問する。


「ところで、肝心のアルダール君の戦力偵察はどうでしたか?」

「カナキ君が頑張ってくれたのもあって上々よ。特に、彼の使ってた魔導具を見れたのは収穫ね。『魔弾(ガンド)』撃ち専用の魔導具は腐るほど見てきたけど、可変して接近戦ではナイフみたいになるタイプなんて見たこと無かったわ。その『魔弾(ガンド)』にしても、複合魔法でも使ってるのか知らないけど、魔弾が透明だから不可視能力まであるし」

「あはは……そうですね」


 僕は魔晶石を使ってやっと正体が分かったアレも、遠くから見ていたセニアさんには簡単に分かっていたようだ。この人と話していると、本当に自分が凡才だということを思い知らされる。


「それに、多分彼はあれが全力ではないでしょうことは闘って感じましたし、彼の力を今日見ただけで判断するのは早計だと思いますよ」

「わかってるわよ。流石にもうちょっと情報を集めてから、改めて絶好のタイミングで襲わせてもらうとするわ」


 気づくと、通りには僕達の他にもチラホラ人が見え始めた。いつの間にか、人通りが多いメインストリート付近まで戻ってきていたようだ。

 ここまで来れば流石に追跡不可能だろう。最後にもう一度だけ追手が来ていないことを念入りに確認し、『天衣霧縫(ミスト・ヴェール)』を解除する。人通りが多いところでは、逆に霧を纏わせていると目立ってしまうからね。


「ねえ、あれ見て」

 セニアが指さしたのは、一軒の年季の入った屋台だった。食欲をそそる油と醤油の匂いをこちらまで漂わせている。屋台の暖簾には「らぁめん」と書かれていた。

「今日助けてあげたわよね?」

「……分かりましたよ」


 本当は一刻も早く家に帰りたかったが、逃げた犯人がまさか近くの屋台でラーメンを食べているとも思うまい。それよりも、今はセニアの機嫌を取っておいた方が良さそうだ。 

意地悪そうに微笑んだセニアを促し、僕は暖簾をくぐった。


「――いらっしゃいませ! ご注文、は……」

「醤油ラーメンをふた、つ……」


 やたら若い女に注文を聞かれ、見ると、なんとエトだった。

 向こうも、僕が来たことがよっぽど意外だったのか、切れ目の長いまつげを数回瞬かせる。

 遅れて入ったセニアはそんな僕達を無視して狭いカウンター席に座ると、「あーお腹減ったー」とテーブルをドンドン叩く。アンタ知ってて連れてきたな。


「……あの」


エトが歯切れ悪く何か言おうとするが、結局僕の口から出てきたのはこの言葉だった。


「……とりあえず、うちの学校は原則バイト禁止だよ?」

「……あ、は、はい! ごめんなさぁい!」


 やりとりを聞いていたセニアが、隣でぼそっと「アンタたちも結構マイペースよね」と呟いたが、聞かなかったことにした。


読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 無し [気になる点] 展開が遅い・ホラー展開ないじゃん [一言] もう少し面白くして
2024/04/06 21:52 あああああああああああああああ
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