第0話
一応ホラーファンタジーみたいな感じで書いてます。最後までお付き合いいただけたら幸いです。
「被告人、金木亮を、死刑の有罪とする」
裁判長の声が裁判所内に反響し、僕――金木亮は天を仰ぎ、そっと目を閉じる。
予想通りの判決だ。多少の落胆こそあるが、まあこんなものだろうな、というのが正直な感想だった。
裁判を最後まで見守っていた親族たちの中から嗚咽が漏れる。僕が死ぬことがそんなに嬉しいのだろうか。まぁ、向こうからすれば、大事な家族を殺した憎き大罪人なのだろうからその感情も理解できないことはないのだが、そこまで憎いのなら第三者に任せるのでなく、自分の手で僕を殺しにくれば良いのに。その方が絶対に殺した時も気持ち良いはずだ。それを憲法とか法律がどうとか言って、無意味に自分を戒めている。
この世は余計な戒めが多すぎるんだ――。
裁判も終わり、僕は自分の独房に戻ったところで、薄いベッドの上にゴロンと寝転んだ。
考えているのはタイムリミットまでの猶予、死刑の実刑を受けるまでに、どのようにしてここを脱獄するのかということだ。
とは言っても、流石にこの厳戒態勢の牢獄から逃げるというのは、僕でも厳しいな――。
コンクリートの壁に囲まれた部屋の中、四つ角にそれぞれ設置された定点カメラを視界の隅に捉えながら、僕は小さく息を吐いた。
――ん?
そこで、僕の視界の端で、急に光が瞬いた。
蛍光灯でも壊れたのだろうかと思いながらそちらを見て、僕は目を疑った。
そこには、人一人がギリギリ通れるかというほどに小さな光の穴が空中にぽっかりと口を開けていた――。
読んでいただきありがとうございます。