第2の修行、自由形の信仰集め
さてと、修行もとりあえず終わったしな。
瞑想は終わって、次はどんな修行をするかなと。
四宮神社では薪割りをするんだけど、流石にこっちではあまり意味が無さそうだよな。
基礎能力はかなり高いからな、この2人は。
「うーん、どうするかな・・・とりあえず、次は信仰集めが無難だろう」
「信仰集めなぁ、一体、何をすればええんや?」
「そこは自分で考えてみろ、ただ、戦闘は駄目だからな?」
「わ、分かったわ、我慢するわ」
そう言い、水菜は少し落ち込んだ。
まぁ、これはこの2人の行動を見るための特訓だからな。
「じゃあ、とりあえず自分が思う信仰集めを始めてくれ」
「はい!」
「分かったわ」
そう言い、2人は山明神社から出て行った。
さてと、これで2人がどう行動するか、それであの2人の物事の考え方が分かるだろう。
あの2人は俺の能力を知らないからな。
「さてと、じゃあ、始めるかな」
「あんたはどうするんだ?」
「少し集中するんだ、あまり乱さないでくれよ?」
「ん? 分かった」
そして、俺は精神を集中させ、視点を出し、2人を追うことにした。
最近鍛えて分かったが、この力、視点を2つに分けることが出来るようだ。
音も左右に分かれて聞える、だから、どう動くかとか、どんなことを言ってるかは簡単に分かる。
便利な能力なんだが、視点を割ると、当然自分自身の疲労も2倍になる。
それだけ、集中しないと行けないって言うのが難点だよな。
そして、俺は精神を集中させ、視点を出し、2つに分け、2人を追った。
「うーん、信仰集めなぁ・・・あかん、そないな事を考えたことがあらへん
でも、あの神さんの指示や、従わんとエラい目に遭うで」
水菜は今まで信仰集めをしたことが無かったんだな、通りでこの神社には信仰が無いわけだ。
そりゃぁ、時音の奴も復活できないよな、信仰が無いんじゃな。
「あの神さん、ほんま恐ろしいわ・・・怖いわぁ、でも、水希ちゃんには優しいんやな
うちにも優しくしてくれればええのに」
水菜はどうやら独り言を言ってしまうタイプのようだな。
何か、ずっとペラペラと喋っているし。
「うーん、うーん、信仰、信仰集め・・・あ! 蝶じゃん! 初めて見るかも!」
そして、水希の方は・・・蝶々を追いかけ回しているな・・・
もう、課題を忘れていそうなくらいはしゃいでやがる。
精神年齢は見た目相応なんだな、天才肌のくせに。
まぁ、自信過剰な奴よりは好感が持てるかも知れない。
「おりゃぁ! この、待って! えい!」
必死になってその蝶を捕まえようとぴょんぴょん跳ねている。
「はぁ、少し疲れちゃったよ・・・・・・? 何であたいこんな場所にいるんだろう?」
そして、目的を忘れてしまう水希、やっぱり馬鹿な天才って感じだな、あいつは。
「あぁ! そうだ! 信仰集めだ! 思い出した!」
何とか思い出してくれたか、危ない危ない、あのまま忘れてたらどうしようかと思ってた。
こっからだと声は掛けられないし、まぁ、思い出したんならいいか。
「信仰集めぇ・・・誰かの役に立てばいいのかな、うん、きっとそうだ!」
水希は信仰集めの目的を自分で見つけることが出来たようだな。
さて、その一方でその師匠の方はまだ迷走中か。
「信仰集めなぁ・・・もうかったるいわ! とりあえず目立てば集まるやろう!」
弟子の方は役に立てば集まる、師匠の方は目立ちまくれば集まるか・・・
確かに目立てば信仰は集まるんだけど、こいつの場合はただひたすらに暴れるだけだろうな。
そういうタイプの人物だし、当然だけどよ・・・
「まぁ、そうやな、この辺の木を壊しまくって目立とか」
水菜はそう呟くと、近くにあった大きな木を何発か殴り、その木をへし折った。
あいつ、どうしてそんな色々とぶっ飛んでる思考になるんだよ!
「あぁ! 誰ですか! 文月山の木を折る不届き者はぁ!」
その折れた木に素早く反応して、山の山頂付近から天狗がやって来た。
あの容姿、あの服装・・・楓だ、楓の奴がやって来た。
「何や? 天狗かいな」
「あなたですね! 流石に許しませんよ!」
「ええやないか、木なんてまだわんさかあるんやし、1本くらい」
「駄目です! さぁ、追い出しちゃいますよ!」
「お? お? 天狗の嬢ちゃん、うちとやろうってか? ええで? やってやろうじゃないか」
あいつ、俺が戦闘は無しだって言ったの忘れたのかぁ!?
それにしても、楓には是非とも逃げて欲しいもんだ、あいつじゃ絶対に勝てないって。
「おっと、そうやった、戦うのは無しや言われとったんやな」
「だ、誰にですか?」
「せやな、うちにはすごく厳しい神様やな、なんでうちだけあんなに厳しいんやろう
まぁ、理由は分かるんやで? あんなに神社で暴れたらそら怒るやろうし」
「か、神様・・・? えっと、どっちの神様です? 山明神社? それともあり得ませんけど四宮神社?」
「四宮神社の神様や、圭介って言われとったな」
「け、圭介様!? じゃあ、その神様の知り合い!?」
「そうや、と言うか、今は修行の一環で信仰集めをやっとるんや」
「信仰集めって・・・木をへし折ることが?」
「目立たんと信仰は集まらんやろ?」
「思考回路・・・おかしいんじゃ無いですかね・・・」
楓は水菜に対してかなりトゲのある物言いでそう言った。
あの表情はまるで救いようのないな、とでも言っているかのような表情だった。
まぁ、救い様は無いな、あの戦闘狂は。
「ま、まぁ、いいです、圭介さんのお知り合いなら話は別、ですけど私達の里に来て貰います
流石に擂様の許可を貰わないと行けないし」
「擂か、懐かしい名前やなぁ、久々に会ってみるかね」
「擂様をご存じなんですか? 意外ですけど、まぁ、圭介さんの知り合いなら当然かも知れませんね
それでは、一緒に来て下さい」
「おう、分かったで!」
水菜の方は天狗の里の方に行くのか、一体どうなるんだか。




