愛情たっぷり美味しいご飯♪
水菜と鬼の少女の戦いが終わり、四宮神社はいつも通りの静けさを取り戻した・・・筈だった。
「いやぁ、今日は大量やな! こない強い連中と連続で戦えたんやから!」
自分を楽しませてくれる様な相手と何度も連続で戦えたからなのか、水菜はもの凄く嬉しそうだ。
まぁ、それは良いけど、あそこに転がってる鬼娘はどうするかな・・・
このまま神社に転がしておくのもな、鬼なんて増えたら、評判が・・・
それに、あの服装は完全に露出狂だ、つうか、まだ寒い時期にヘソ出してそもそも袖も無いし
半ズボン、完全に下着だけだからな、あの鬼娘。
こんなのがいたら神社に変な女の子がいる、何て話しになりそうだし。
「どうするかな、この鬼娘・・・」
「神社に置いておけば良いんですよ、サラちゃん達みたいに」
「下着だけの女の子をか?」
「圭介様は好きなんじゃないんですか? こんな女の子」
「お前・・・何言ってんの?」
「花木さんが前に言ってましたよ?」
「ほう・・・そうか、ふーん」
俺は自分の中に湧き上がっている怒りを何とか隠して、花木の方を見てみた。
すると、花木はもの凄く汗を流している、まだ汗をかくような時期じゃないのになぁ・・・
「どうした? 汗が酷いぞ?」
「え・・・えぇっと・・・な、何でだろうね~・・・」
花木が俺の視線から逃げるように顔を背けた、それでも汗は止んでいない。
「そんなに怖がるなよ・・・ほら、怒ってないだろ?」
「あ・・・あはは、その、少しだけ笑ってるのが・・・怖いんだけどね・・・」
「大丈夫だ、笑顔は交友の証だろ?」
「その笑顔は交友の証じゃないよね? 間違いなく敵意の証だよね?」
「大丈夫だ、ほら、近寄ってこい、いつも通りにな」
「や、止めとくよ・・・その、私は一応兎だよ? 殺気には敏感なんだよ・・・
だから、止めるよ~、今の圭介からは殺気しか感じないし」
隠していたつもりだったが、やはり仮にも兎だな、勘が良い。
近寄ってきたら捕まえて、すごく美味しいご飯をごちそうするつもりだったのにな。
「まぁ、良いさ、こっちから近寄る」
「や、止めて! こ、こないでよ~!」
「あ! 待ちやがれ!」
俺が一定の距離に近寄ると、花木がすごい勢いで逃げていった。
こういうのを脱兎の勢いって言うんだな、流石は兎。
「待たないって! あ!」
久々に花木のドジっ娘スキルが発動した、花木は逃げている自分の足に引っかかり盛大に転けた。
本当に久々に見たぜ、こいつのドジ。
「やっぱドジはドジだな」
「わぁ!」
俺は花木を捕まえることに成功した、本当なら殴るが、流石にそれは不味い。
だから、とっておきのお仕置きプランを用意した。
茜にとってもいい練習になるはずだしな。
「よし、茜、花木にとびっきり美味しい飯を作ってやれ」
「え? 私が料理しても良いんですか!?」
「あぁ、勿論だ」
「やったぁ!」
茜は飛び跳ねて喜び、すごい勢いで台所に入っていった。
「ま・・・まさか!?」
「へぇ、茜が料理ね、どんな料理が出来るのかしら、楽しみね!」
「あ、茜の料理か・・・トラウマが・・・」
「あぁ~! 謝るからそれだけは勘弁してよ~!」
「そう嫌がるな、ただ茜のとびっきり美味しい料理を食べるだけだ、これはむしろご褒美だな」
「いやぁ~! 皆~! 助けてよ~!」
「頭領様・・・頑張って!」
「大丈夫、頭領様なら大丈夫!」
「美味しい料理だと思えば良いですよ、そう、あの子の料理はとびっきり美味しいんですよ」
「見捨てないで~!」
花木必死に羽衣達に助けを求めたが、皆そっぽを向いている。
まぁ、そんな嫌がる事じゃないだろう、だって、ただ飯を食うだけだ。
拒絶しても食わすけどな、そうじゃないと罰じゃないからな。
そして、しばらくして、台所から茜が大きなお皿を持って、出てきた。
「出来ましたよ! 今日はいつも以上に力を入れました! 最高の出来です!」
「あ、茜・・・その料理、もの凄く焦げてるんだけど?」
「大丈夫ですよ、ちょっとくらい! あ、お師匠様も食べます?」
「い、いえ、良いわ、全部そこの妖怪兎に食べさせなさい」
「分かりました、でも、お師匠様もその内私のお料理食べてください!」
「そ、そうね、分かったわ・・・」
葵が嫌がるのも無理はない、なんせ、茜の料理はもの凄く焦げているからな。
でも、最初に比べれば、まだ上手く焼けてる方だ、昔は炭だったからな、完全に。
「ほう、なんや茜ちゃん、料理上手いな」
「そうでしょ!」
「うちなんて、火を使ったらもう原型が残らんでな、せやから、飯は料理せんで食べとったわ」
「水希ちゃんと一緒に居るときもそうなんですか?」
「せやで、水希には野草や肉の美味い食べ方を教えてな、勿論、料理はせんでも食える奴や」
「生の肉とか、食えるわけないだろう」
「大丈夫や、水希もうちも最初は腹壊しとったけど、少ししたら普通に食えるようになったで」
「あり得ないわ・・・そんなの普通は食べられないわ」
「腹に入れば皆同じや! それに、結構美味かったで? まぁ、生以外食ったことないんやけど!」
あぁ、そうか、山明神社は飯もそんな風に食っていたのか。
なるほど、水希が無事だった理由が分かった、通りで生き残ってたわけだ。
「褒められちゃいました!」
「そうや、うちにも一口くれへんか?」
「あ、良いですよ」
「おおきに、ほな、食べてみよか」
そう言い、水菜は何の躊躇いも無く、その茜の料理を口に運んだ。
「おぉ! こりゃ美味いわ! これが料理って奴なんやな!」
「すごいでしょう! 3年の間頑張って練習したんです! さぁ! 花木さんも食べてください!」
「茜、花木は今自分で食べられないんだ、だから食べさせてやれ」
「圭介様に両腕掴まれてますからね、分かりました! 私が食べさせてあげます!」
そう言い、茜は花木の方にゆっくりとそのご飯を運んだ。
「や、止めて~!」
「大丈夫です、愛情がたっぷり入ってますから、すごく美味しいですよ?
ほら、口を開けてください、はい、あーん」
「うわぁ~!」
「あぁ、すごく鮮明にあの時を思い出す・・・あの時は地獄だった・・・」
「ひぃ~!」
そして、茜は花木に愛情たっぷりのすごく美味しいご飯を食べさせた。
その結果、花木は下を向いて固まった、そして、もう2度と変な事は言わないと、俺に誓った。
かなりの効果があったんだな・・・しかし、茜の奴、料理の腕あげたな、何度もやった甲斐があったっな。
なぜだか知らないけど、俺は少し涙が流れた。




