正月、最終日
正月の3日目だ、まぁ、流石に3日目だし、あまり人は来ないだろう。
さてと、今日はお雑煮を食うかな、忙しくて食えなかったが、今日は大丈夫だろう。
「よし、まぁ、お雑煮だ」
「おぉ!」
流石にこの数を用意するのは疲れたな、かなり時間も掛かったし。
まぁ、無事に用意できたし、よかったかなと。
「あ、美味しい!」
「このお肉美味しいね~、何のお肉~?」
「あぁ、それは」
「兎肉よ」
俺が鶏だと言おうとしたら、時音が横から入ってきて兎肉と行った。
何でまたこんな厄介な事になりそうなことを言うんだか。
「え、え? う、兎肉?」
そう聞いた花木は他3人よりも明らかに動揺している。
「いや、嘘だぞ、これは鶏だからな、時音の嘘だからな?」
「と、鶏肉? あ、あはは、よ、よかったよ~、で、でもなんでそんな嘘を吐いたの~?」
「そうね、もしも兎肉って言ったらどんな反応するかなって思ったからよ
冗談きついよっとか言うかと思ったけど、真に受けたわね」
「と、当然だよ~、ちょっとトラウマがあるんだからさ~」
まだあの時の事を気にしていたのか、意外と引きずるタイプなんだな、花木の奴。
「あはは、時音様って意外と意地悪だよね!」
「水希、あなたは一応私に仕えている立場よ、せめて敬語は使いなさい」
「うぐ、わ、分かりましたです」
たまに普通に敬語で話していたりするが、本質的にはやっぱり敬語は苦手なんだな、水希は。
まぁ、あいつが普通に敬語を話すのは、茜が俺に対して普通に会話をするくらいおかしな事だな。
「あはは、水希ちゃんは敬語が下手だね」
「敬語なんて難しいよぉ・・・」
「たまに普通に敬語で話すのにね、全くよく分からないわ」
さてと、そんな会話をしている間に、今日も参拝客がやって来たな。
正月の3日間、全部で参拝してくれるってのはありがたいな、それだけ信仰されてるのか。
「あぁ、もう参拝客の方が、私言ってきます!」
茜はいつも通りに定置に座り、お祓い棒を振った。
「茜ちゃん、そんなに急がんでも良いよ、ほら、お口にお餅が少し付いちゃってるよ」
「え? あ、す、すみませんでした!」
「気にせんでええよ、さぁ、速く口を拭いてきなよ」
「はい」
あぁ、うん、やっぱりまだ口に付いていたんだな、餅。
一瞬見えたが、すごい勢いだったから言えなかった。
「あぁ、どうしよう!」
「ほら」
「むぐっ」
俺は手持ちの手拭きで茜の口を拭いた。
「あ、ありがとうございます、それじゃあもう一回!」
「あぁ、頑張れ」
そして、茜は再びお祓い棒を振った。
昨日はあんなに苦労していたってのに、元気そうにお祓いするんだば、茜は。
まぁ、今日はあまり参拝客も来ないだろうし、茜も休めるかな・・・
しかし、参拝客は今日もかなりの数がやって来た。
「正月最後なのに随分来るな、参拝客・・・」
「愛されてるわね、四宮神社、羨ましいわ」
「まぁ、その代償として巫女は大忙しだがな」
「そうみたいね、じゃ、水希、今日もやれそうかしら?」
「大丈夫!」
「じゃ、頼む」
「そんじゃあ、皆も頼むぞ、昨日と同じ様に」
「任せてよ~」
「今回は速くやらないと・・・」
まぁ、今日は茜と水希以外はそこまで忙しくはならないだろうな。
おみくじは分からないが、お守りは参拝に来た殆どが買って帰っているからな。
そして、全員は昨日と同じポジションに着いた。
「本当に何だか恥ずかしいな」
「何がかしら?」
「あいつらが必死にやってくれてるのに、自分たちは何も出来ない、これは悔しいだろう」
「神は存在しているだけで良いのよ、それだけで人間や生き物に勇気を与える」
「それは分かってる、神は憧れの塊だからな」
「そうそう、憧れは動かないのが良いのよ、ま、あなたに言っても意味は無いでしょうけどね」
「ん? どういうことだ?」
「どうせあなたの事だからもう色んな所で手伝いをしたんでしょ?」
色んな所か・・・花木の所で軽く働いたような記憶しか無いな。
「やってないと思うが・・・」
「そう言って、何かしてるんでしょうね、自覚してないところで」
「どうだろうな」
「あなたはそういう神よ、3ヶ月そこらの付合いだけど、そう思うわ」
「は、大先輩にそう言われるんだ、もしかしたらそうなのかもな」
「ふん、あまり調子には乗らないの」
それにしても、時音はよく俺に突っかかってくるな。
もしかして、暇なのか? まぁ、暇だよな、何もしてないし。
ただ存在するだけで良いか、嬉しいような、嬉しくないような。
ま、どっちでも良いかな。
それにしても、正月が終われば年末のイベントも終わりか。
何だか寂しい物を感じるかもな、さてと、これから再び1年か、まぁ、適当に頑張るかな。




