茜の誕生日
初詣の客入りも少しずつ落ち着いてきたな。
それじゃあ、そろそろ茜の誕生日会でもするか?
「はぁ、はぁ、う、腕が痛いです・・・」
「あ、あはは、やっぱりこの神社の巫女さんは大変だね・・・」
今からすぐに誕生日会を始めようとしたが、それは止めといた方が良さそうだな。
あの2人はかなり疲弊しているようだし、少し休ませた後にやるかな。
「いやぁ、疲れたね~」
「そうですね、これならいつもの方が楽ですよ・・・」
「数が多いからね、あなたみたいなのろまにはしんどかったでしょう?」
「むぅ~、じゃあ卯実がやれば良いじゃん! 会計!」
「わ、私は良いわ、適材適所よ、うん」
「くぅ、逃げるんだね!」
「相変わらず2人はよく喧嘩するね、やっぱり仲が良いから?」
「「違う!」」
あの4人はいつも通りか、ま、安心した。
「あーうー、疲れたよぉ」
「サラちゃん、お疲れ様、はい、お水だよ」
「お姉ちゃん、ありがとう!」
あの2人も平常運転だな。
「親分様! 僕はやり遂げたにゃ!」
「あぁ、よく頑張ったな、ありがとうよ」
「じゃ、じゃあ、撫でてくださいにゃ!」
「ん、分かった」
俺はチャイムの頭を撫でた、何だか耳に手がちょくちょく当って、その度にピク、となるのが可愛い。
「にゃぁ、幸せですにゃぁ・・・」
「・・・わ、私も頑張ったぞ! 人間が嫌いでも頑張った!」
「私も! あ、いや、私は嫌いじゃ無いけどね、人間さん」
「うちも!」
「じゃあ、流れに乗って私もお願いします」
「わ、分かったって、撫でれば良いんだろ」
俺は周りに集まってきた奴らの頭をゆっくりと撫でた。
しかし、獣耳が生えてる奴は耳に当る度にピクってなるんだな、これは共通か・・・
もしかして、花木とかもか? いや、あいつは反応が薄かった気がする。
だとすると・・・後1人獣耳で撫でてない奴が居るな。
気になるが、今はこいつらを撫でてやるか。
「はい、よしよし」
「キャン!」
「キューン!」
「おわ! 今度はお前らもか、ほら、よしよし」
俺はいきなり参加してきたキャンとキキ頭を撫でた。
2匹は耳に当ってもそこまで反応しないな、もしかして人型じゃ無いと反応が無いのかもしれん。
「本当に思うけど、あなたの手には動物や子どもを魅了する何かがあるの?」
「知らん」
「おぉ、何だ楽しそう! 時音様!」
「ん? 何かしら?」
「あたいの頭を撫でてください!」
「え? わ、私で良いの?」
「うん!」
「じゃ、じゃあ」
時音は顔を若干赤くしながら水希の頭を撫でた。
そして、水希はかなり嬉しそうに笑った。
「あはは、時音様は撫でるの下手ですね!」
「え、そ、そうなの? へ、下手!?」
「はい、でも、気持ちいいですよ!」
「あ、あぁ、そう、なら下手とか言わないで欲しいわ」
やっぱり時音と水希は一応仲は良いんだな、ま、当然か、神と巫女だからな。
さて、それにしても、さっきから左の方でずっと茜が俺の方を見ているな。
「茜? お前も撫でて欲しいか?」
「はい! お願いします!」
「だったら言いに来いよ」
「すみません」
茜は満面の笑みを浮かべながらそう言った。
もしかして、恥ずかしかったのかもな。
「さて、こんなんで良いか?」
「はい、満足しました、ありがとうございます」
「それはこっちの台詞だな、よし、じゃあ、誕生会をするか?」
「はい!」
「誕生会? どういうこと?」
そういえば、こいつらは茜の誕生日の事を知らなかったな。
「あぁ、茜は今日誕生日なんだ」
「え、えぇ!? そうなの!?」
「はい、でも、正確な日時が分からないので、お姉様がこの日に私を拾ったからその日が誕生日
と言う事になっているんですよ」
「四宮の巫女は今代の巫女が赤子を広い、その赤子を鍛えて次代の巫女として育成するらしいんだ」
「そうなの、へぇ」
「じゃあ、私と同じなんだ」
水希がしれっとそう言った、あぁ、山明神社の巫女も四宮神社の巫女と同じか。
「え、そうなの? 初耳なんだけど?」
「じゃあ、お前の誕生日はいつになるんだ?」
「えっと、師匠は忘れたって言ってたよ」
大切な弟子と出会った日を忘れるのかよ、どんな師匠だ。
「あっと、確か水希は3月1日だ、俺が覚えてる」
「そうなんだ! あたいは3月なんだね」
「あぁ、水菜の奴が可愛い女の子拾ったから育てるよ! とか言ってたから覚えてる」
師匠は覚えてないのに、その友人は覚えているのか、かなり記憶力が無い奴だったんだな、水菜は。
それに、やっぱりイーリアがいった風だと、本当に水希と水菜って似てるなと思う。
「そうか、じゃあ、今年は3月1日に水希も祝うか、ま、それより今は、茜の誕生日だ」
「えへへ、楽しみです!」
「料理は出来てる、沢山食べてくれ」
「はい!」
そして、俺達は茜の誕生日を祝い、派手に騒ぐことにした。
そうか、これで茜はもう10歳か、速いもんだな、俺が初めて来たときは6歳だったのに
気が付けばもう10歳、あまり成長をしている様には見えないが、きっと少しずつ変わっているだろう。
でも、出来ることなら、茜にはこのまま成長して欲しいもんだ。
ま、変わらず成長するのは難しいだろうな、周りがちゃんと見ないと、だから、精々頑張るか。
茜にはこのままの純粋な子で成長していって欲しいからな。




