妖怪兎を巻き込んだ、いつもの日常
花木が人間の少女に依頼され、彼女の見合いの話を壊すために男装して彼氏に化けた翌日。
「よし、今日も修行をするぞ」
「はい!何をすれば良いですか?」
「まずは瞑想だな、今日も30分だ、頑張って集中しろよ」
「分かりました!」
茜が瞑想を始めて20分ほど経過した、最近かなり安定して来たような気がするな
この調子だったら今度は1時間に伸ばしても大丈夫かもしれない。
その時に後ろから足音が聞こえた。
「ふぁ~・・・おはよう、あれ?どうしたの?」
昨日泊まった花木が起きてきた、結構早起きだな、今は4時20分だってのにな。
「茜の修行だ、邪魔するなよ?」
「修行か~・・・瞑想なら私が邪魔しても良いんじゃない?」
「何でだ?」
「瞑想は集中力を鍛えるんだったよね?なら問題ない!」
まぁ、こういう妨害の中でも集中を切らさないってのは重要かもしれないが
まだその段階に行くのは速い気もする、でも試してみるのも良いかもしれない。
「う・・・うぅ・・・」
「ほれほれ」
花木は、最初は茜の頬を突っついた、まぁ、この程度なら問題ないかな。
「うぅん・・・」
「ほらほら」
今度は茜を擽り始めた、これは茜にはキツそうだよな。
「あ、あは、あははは!ちょ、待って、無理!無理!あはは!」
茜は花木にくすぐられて笑い転げた。
まぁ、予想通りだな、流石にくすぐられたら集中も切れるよな。
「ほれほれ」こしょこしょ
「や、あは、やめ、あはは!」
「そろそろやめてやれ」
「まだまだ!」
「あははは!」
暴走してやがる、無理にでも止めるか?あ、そうだ、良いこと考えた。
俺は花木を羽交い締めにした。
「え?何?どうしたの?」
「茜、反撃したいだろ?」
「はぁ、はぁ、は、はい」
「じゃあやれ、今のうちに」
「え?ちょ、待って!」
「ふっふっふ、私にいたずらしたことを後悔させてやる!」
茜は悪い表情をしながら花木に近付いた。
「あ、あの、あ、謝る、謝るから!ちょ、待って!」
「ふっふっふ、今更遅いよ!さぁ!復讐の時間だよ!」
「え、ま、待って!待ってってば~!」
「てりゃ!」
「あははは!ちょ、わ、私、くすぐりなんてされたこと無い!あはは!」
花木は1分間の間くすぐられた。流石にこれ以上はあれだから解放した。
「あは、あはは、こ、これは・・・き、キツい・・・ねぇ~」
「これに懲りたらもういたずらしないでね?」
「わ、分かったよ~、もうしない~」
花木は完全にぶっ倒れてまだ少し笑っている、相当弱かったんだろう。
「よし、それじゃ、次の修行だ」
「はい!」
「あ、あの、す、少しは・・・し、心配してよ~」
「自業自得じゃ無いのか?調子に乗りすぎたんだって」
「いたずらしても良いって言ったのは圭介じゃん」
「言ってない、それに俺は止めただろ?それで止めなかったお前が悪い」
「酷い!」
花木はそう言いながら立ち上がり、一緒に付いてきた。
「薪割りをしたいが、花木が折ったからな」
「えっと、ごめん、あんなに簡単に折れるとは思わなくって」
「ま、だから今回の修行は草むしりにしようと思う、持久力の修行にもなりそうだしな」
「分かりました!」
茜はかなりやる気のようだ。しかし、境内は広いからな、出来れば分断したいが・・・
あぁ、そういえば丁度良いのがいたな。
「鳥居を中心に左方向は茜、右方向は花木がやってくれ」
「え!?私もやるの!?」
「斧を折ったのはお前だし、少しは手伝えよ」
「わ、分かったよ、こうなったら妖怪兎の実力を見せてやる!」
「私だって!四宮の巫女の実力を見せてやりますよ!」
完全な妖怪になったばかりの妖怪と、本来は四宮神社の見習い巫女の四宮の巫女
あれだな、当然この戦いは花木の勝ちだろうけど・・・まぁ、競争は茜に良い影響を与えるだろう。
「さぁ!勝負!」
「はい、スタート」
「絶対に勝って見せます!」
「妖怪兎の力を証明してやるぅ~!」
茜と花木は同時に草むしりをスタートした。正直花木の圧勝だと思ったが
花木も茜も同じようなスピードだった、まぁ、遅いんだがな。
「むぐぐ~!ぬ、抜け無ぃ~!」
「草むしりってしんどいです」
「しんどくないと修行にならないしな」
2人は1分間に1本くらいしか抜けない、この調子だと6時までに終わりそうに無いな。
仕方ない、鎌を使わせてみるか。
「ほら、鎌だ、注意しろよ」
「あ!ありがとうございます!」
「え!?ちょ!私にもちょうだいよ!」
「ほら、お前のもある」
「よし!これで勝てる!」
鎌を受け取った2人はさっきまでとは比べものにならないほどの速さで草をむしっていった。
それでもまだ遅い方だけどな。
「茜、ちょっと貸してみろ」
「あ、はい」
俺は茜の鎌を借り、鎌の扱い方を茜に教えた。
「鎌はこうやって草の根元に付け、後ろに引く」
「すごい!1回で行きましたね!」
「あぁ、これを守れば殆どの草は1回で切れる」
「分かりました!やってみますね!」
茜は俺が教えたコツを守り、さっきよりも数段速い速度で草を刈り始めた。
やっぱりコツを知ってるか知らないかは大きいな。
「ふぅ、出来ました!」
「お、速いな、そんじゃあ、次は花木と一緒に草刈りだ」
「分かりました!」
茜は花木の方に行った、花木はまだ半分くらいしか行ってなかった。
「えぇ!?もう終わったの!?」
「圭介様にコツを教えてもらったからね!」
「あぁ!ずるい!なんで私には教えてくれないの~」
「非力な茜が怪力のお前に勝つ方法を教えただけだ」
「私だって非力な乙女だよ~!」
「斧をへし折る非力な乙女ってなんだよ」
「あう!」
まぁ、茜とこいつのやり方は別だからな、茜は教える前は押すときに力を入れていたかが
花木は思いっきり振りかぶってたたっ切ってたからな、正直花木は危なっかしかった。
「なら、私がコツを教えてあげるよ!」
「お、お願い」
花木は茜にコツを教えてあげた。なんだか姉妹っぽいな、茜の方が姉のようだ。
身長は花木の方が高いがな。
「よし、これで私も早くできる!」
「ようし!一緒に頑張ろう!」
「おぉー!」
2人は協力して草刈りを開始した、すごい速さだな、これなら最初から協力してたらよかったな。
それに、なんだか楽しそうだし。
「ふぅ、出来た」
「お疲れさん、ほら、飲み物だ、あと飯も出来てるぞ」
「やった~!」
「ありがとうございます!」
俺達は3人で飯を食った、1人だけでも人数が増えると美味しく感じるな。
「ごちそうさまでした!」
俺達が飯を食い終わった頃に丁度参拝客がやってきた。
「参拝客だ、珍しいね」
「いや、まぁ、うん、否定できないな」
「四宮神社はあまり信仰がありませんからね」
「先代と先々代のせいでね~」
「お姉様を貶さないでくださいよ、確かに依頼とかこなしてませんでしたけど・・・」
「ごめんごめん」
その参拝客は依頼を入れた、依頼は箱の中に入れるようにした。
依頼者の方もいちいち奥に来るのも面倒だろうしな。
「圭介様!依頼ですよ!依頼!」
「そんなに興奮すんなよ、さて、とりあえず御幣を改良するか」
「え?御幣ですか・・・、あぁ、お祓い棒の事ですね!」
「あぁ、たまには神様らしいこともしないといけないし、確か御幣を持って集中すれば良いんだよな」
俺は御幣を手に取り、集中した。
詳しくは分からないが、書物に書いてあったし。
「よし、出来た」
「なんだかすごそうです!」
「あのお祓い棒が私達妖怪にとって恐ろしい武器になった瞬間を目の当たりにしたよ~」
「神様の力が入りましたからね」
茜は得意げにそう言った、俺の力なんだが・・・まぁ、良いか。
「それじゃ、依頼を確認してきますね!」ダ!
茜は依頼を確認しに行き、依頼を持ってここまで戻ってきた。
「どうだった?」
「えっと、幽霊退治の依頼です」
「幽霊?」
依頼の内容はこうだった。
最近家の中で誰かの視線を感じるようになりました。
それに毎日のように物が動いたり、物音がしたりと安心して眠れません。
どうか、我が家の幽霊を退治してください!
場所はここです。
依頼の書面の下に地図が書かれていた、結構鮮明でわかりやすい。
「幽霊退治ですか・・・とりあえず幽霊を殴れば良いんですね!」
「は?」
「お姉様に教わりました!幽霊と妖怪はとりあえずお祓い棒でぶん殴れって!」
「四宮神社の巫女はやっぱり肉体派なんだな」
「いやぁ、私は殴られなくて良かったよ」
「お前は最悪鍋にされてたんだぞ?」
「あ!そういえば!」
花木はすっかりその事を忘れていたようだ、まぁ、こいつの記憶容量なんてそんなもんか。
「よし!解決しに行きましょう!」
「そうだな、とりあえず受けると言うことを知らせて、夜に解決かな」
「はい!」
俺達は地図の場所に行くことにした、花木は流石に配下の兎が気になったようで帰る事にした様だ。
まぁ、あいつはああ見えて兎たちの頭領だからな。




