大晦日
大騒ぎの昨日、お餅は予想以上に出来てしまった。
と言うか、あれはお店用の餅米までもってきてたんだな、花木の奴。
そのせいで花木の店は少しそんをしたようだが、あいつは大丈夫だよ~、稼いでるからさ~。
とか言ってたな、結構な赤字なのにあそこまでへらへら出来るのはある意味才能だよな。
・・・やっぱりあいつに商売って向いてないのかもしれない。
それにしてもだ、今日は大晦日、神社も忙しくなだろう・・・なのに。
「うーん、暇ね・・・」
「あぁ、そうだな、だがよ、なんでお前がここにいる? お前も忙しいんだろう?」
四宮神社には何故か時音がいる、と言うか昨日来た連中は皆まだここにいる。
昨日は窮屈だったな、こんなに人が入れる様に出来てないからな。
茜とくるみとチャイムは俺と一緒に寝て、朝起きたらくるみに顔を蹴られて、チャイムが俺の下で
丸くなって眠っていたり、兎の状態の花木達が布団の中にいたり、キキが右側にいて
キャンが俺と茜の間で寝ていたりですごく大変だった。
「まぁ、どうせうちの神社は参拝客は来ないからね、それに、あの子達も帰りたくないって言うしね」
「やっぱり神様は振り回されるんだな、普通は逆だろうに」
「ま、それが私達らしさって奴よ、それで良いんじゃないの?」
「それもそうだな、元々八百万はそんな感じだし」
日本の神はとんでもない数が居るからな、色んな個性があっても問題は無いだろう。
「さてと、そろそろ忙しくなってくる時間だな」
「茜ちゃんを起こさないで良いの?」
「あー、まぁ、もう少しの間休ませておこう、その間水希に頼んでも良いか?」
「問題無いわ、ま、あの子がちゃんと出来るかどうかは分らないけどね」
「大丈夫だろう? 水希は能力が高いからな」
「・・・そうなの? まぁ、良いわ」
そして、時音は水希を呼び出した。
俺は水希に色々と軽く教え、茜が普段座っている場所に座らせた。
その後、参拝客が何人か来て、水希は俺の指示通りに行動をした。
「ふむ、やっぱり出来ているな」
「あ、あれ? わ、私が教えたときはこんなに呑み込みが速くなかったのに・・・
も、もしかして、私よりも圭介の方が教えるのが上手い?」
「さぁ?」
「く、悔しいわ! 私はあなた以上にあの子と一緒に居るのに!」
「わ、分った、悔しいのは分った! だから掴みかかるな!」
「う、うぅ、ごめんなさい」
時音が珍しく落ち込んでいる、何だ? 何でこんなにショックを受けてるんだよ。
ま、まぁ、それは後で聞くとして、今は水希を見守っておこうか。
「おや? 新しい巫女さんかい?」
「今だけあたいがここの巫女さんをしてるの、茜は疲れてるみたいだから!」
「茜ちゃんは大丈夫そうかい?」
「大丈夫だと思う、茜はすごいから」
「そうか、それを聞いて安心したよ」
そう言い、参拝客の老人は階段の方に行った。
「あ、私の手を取ってください、転けると危ないので」
「おぉ、帰りも手伝ってくれるのかい、ありがたいね」
「いえ、お気になさらずに」
老人の階段の上り下りは危ないため、楓には老人の対応をして貰っている。
道案内が得意な天狗だ、こう言うのも得意だろう、会話も得意だからな。
うん、こういう時に人手が多いと助かる。
そして、少し経過して、茜が起きてきた。
「す、すみません! 寝ちゃってましたぁ!」
「あぁ、大丈夫だ、今は水希が代理をしてくれている」
「あ、今代わるよ」
「茜、大丈夫? もう少し休んでても良いんだよ?」
「いや、大丈夫だよ、私はもう十分休んだから」
「そう? それじゃあ、代わるよ」
「うん」
そして、茜が普段の定位置に着いた、やっぱりこっちの方がしっくり来るな。
それからその日の夜、ピークがやってきた。
「あぁ! すごい数ですぅ!」
「ご老人も沢山来ていますね、流石は人気の神社」
「うぅ、悔しいけど、私の神社とは大違いね・・・」
「村が近いからな、人が来やすいんだろう」
「それだけじゃ無いと思うんだけどね」
「さて、それじゃあ、心桜と耶麻以外は来てくれ!」
「はーい!」
その呼びかけに答え、皆やってきた、心桜と耶麻もだな。
「じゃあ、お前らは参拝に来るご老人を案内してやってくれ、転けないようにな
心桜と耶麻は難しいだろうからここで待っていてくれ、あと水希は茜と交替で
巫女として厄払いをやってくれ」
「分った!」
「面倒だな・・・」
「ケロケロ、任せてよ!」
「人間さんとお話しできるんですね!」
「親分様の指示なら僕は何でも従いますにゃ!」
「よっしゃー! やるぞー!」
「サラちゃん、あまり暴走したら駄目だからね? ちゃんとおばあちゃん、おじいちゃんの
速さに合わせないと駄目だからね?」
「じゃあ、お姉ちゃんの言うとおりにする!」
そして、皆は俺の指示通りに動いてくれた。
「・・・私達には指示を出さないの?」
「お前は人間が嫌いなんだろう?」
「そうだけど・・・」
「私には何で指示を出さなかった?」
「お前も心を読んでしまうだろ? それに、お前も人間が嫌いと言ってたじゃ無いか」
「・・・そうだな、覚えててくれたのか・・・でも、大丈夫だ、読まなきゃ良いんだから」
「読まないで良いのか? 不安なんじゃ無いのか?」
「大丈夫だ・・・大丈夫」
とか言いながら、心桜は少し不安そうな表情を見せた。
やっぱり疑心暗鬼の具現化だからだろうな。
「じゃあ、明日だな、明日指示する、今日はその為にならす感じで頼む」
「・・・・・・分った」
「じゃあ、私も慣れないとな・・・うん・・・慣れないと・・・」
心桜と耶麻はかなり動揺しているが、頑張って人間嫌いを克服しようとしているみたいだ。
人間の負の部分をひたすらに見てきた2人だからな、不安になるのは仕方ないだろう。
でも、だからこそ頑張って克服して欲しいもんだ、それに、こいつらは茜と水希を見て
人間の負の部分以外を見たことになる、だからここにいるんだろう。
だから、今日、この日は結構重要そうだな頑張って、この日にもう少し慣れて貰おう。
それにしてもすごい人の数だな・・・でも、誰も妖怪のあいつらに触れないみたいだ。
はは、もうこの神社はこれが当たり前だと感じられているのかもな。
ま、それも良いだろう、さて、茜がぶっ倒れなければ良いがな。




