全てを受け入れる神社
餅つきはまだまだ続く、それはそんだけ沢山の妖怪がいるんだ、当然だろう。
「茜はつかないのか?」
「私は良いです、少しわくわくはしますけど、圭介様と一緒に居る方が安心します」
「・・・ふむ、なるほどな、色んな妖怪がいるから少し恐れているのか」
「な! なな、そ、そんなわけ!」
心桜に読まれたな、まぁ、こいつは悟り妖怪だし、嘘は通じないよな。
「ふ、悟り妖怪の私に嘘が通るわけ無いだろう?」
「う、うぅ・・・そうですよ、少し緊張しているんです」
「正月の時期はこれだけ人は来るだろう?」
「人じゃないですし、それにあの時はいつも参拝客の皆さんをキャベツに見たててやってますし」
「じゃあ、私達もキャベツに見立てれば良いんじゃないのか?」
「うぅ、仲が良い様なそうでもないような人は難しいんですよね」
「・・・面倒な体質なんだな」
「はい」
うん、心の声を聞いて会話をしているせいだろうな、全く分らない。
俺にはついて行けそうにないな、あの会話は。
「茜ちゃん! やろうよ!」
「で、でも」
「大丈夫だよ! あたいもいるから!」
「あわわぁ! 圭介様ぁ!」
「頑張れよ、茜」
「そんなぁ!」
茜は水希に引っ張られて行った、あんな風に先導してくれる奴が居るとありがたいよな。
そんな事を思いつつ、お茶を取ろうとしたら、時音と手が当ってしまった。
「あ、悪い」
「いえ、大丈夫よ」
そして、自分の湯飲みを取り、俺はそのお茶を少しだけ飲んだ。
「ねぇ、あなたは茜ちゃんをどう思ってる?」
「ん、娘だな、可愛らしいもんだ」
「やっぱり、神様は巫女を娘の様に思う物よね」
「健気に奉仕してくれるからな、娘みたいに感じるだろう」
「・・・でも、ハッキリ言うわ、神と人間は違うの」
「時音?」
時音は少しだけ深刻そうな表情を見せた。
「神は殆ど永遠の時間を生きる、だけど、人間は短い時の間でしか生きられない・・・」
元人間だったせいか、そこまで考えたことがなかった。
そうだよな、今、俺は神様だ、神は非常に長いときの間を生きる。
人間がいる限り、信仰がある限り、ほぼ永遠だ。
でも、人は短い間しか生きることが出来ない・・・
「だから、ハッキリと言っておくわ、あまり巫女に気を掛けない方が良い、そうしないと
いつか、その時が来たとき、あなたはとても後悔することになるわ・・・」
「・・・・・・分ってる、だけど、俺はあいつを気に掛ける」
「何でよ、寂しい思いをすることになるわよ?」
「良いんだ、それでも、俺はあいつに俺の巫女をしてよかったって、そう思って貰いたい
それに、そんな事を言ってるお前も、水希の事、気に掛けてるだろ?」
「・・・そんな事無いわ、あの子はただの人間、私の奴隷よ」
「嘘が下手だな、もし本当にそう思ってるなら、楽しそうな水希を見て笑ったりはしないんじゃ無いか?
それに、いちいちここまで連れてくる必要も無いはずだ」
俺がそう言うと、時音はビックリしたような表情を見せた後、少し笑った。
「・・・よく見てるのね、まさか読まれるとは思わなかった」
「殆どの奴が読める、それだけお前は嘘が下手だ」
「ハッキリ言うわね、そうよ、私もあの子を娘の様に思ってる、だからあの子が楽しんでいるのを見ると
私も嬉しくなっちゃうのよ・・・ふふ、神様なのにね」
「良いんじゃないか? 巫女は俺達の子どもみたいな物だ、特に、小さい頃から面倒を見てたらな」
「私は復活したばかりよ? あのことはまだあって1年も経ってない、でも、不思議とね
あの子を見ていると、何だか本当の娘の様に感じて・・・」
時音は下をジッと見ていた、少しだけ悲しそうにしているが、何処か嬉しそうな表情だ。
その横顔を少し見て、俺は茜たちが餅をついてる方を見てみた。
「こ、こう? ぺったん、ぺったん、ぺったんたん、ど、どうかな?」
「う~ん、こうだよ~、ぺったん、ぺったん、ぺたたんたん、はいどうぞ~」
「ぺったん、ぺったん、ぺったたんたん!」
「うん、上手だね~、流石茜ちゃんだよ~」
「え、えへへ、圭介様! 見てくれてました?」
「あぁ、上手かったぞ」
「えへへ、ありがとうございます!」
「時音様! 何で下を向いてるの? あたいもつくから見てよ!」
「え!? あ、あぁ、分ったわ、見ていてあげる」
そして、茜は水希に杵を渡した。
「よし! てりゃぁ!」
「最初と変わってないわよ、ただ力任せに殴ってるだけじゃないの・・・」
「うぅ、そうだけど・・・そうだ! 力ならイーリア! やってみて!」
「はぁ!? 俺がやるのか!? ま、まぁ、どうしてもって言うならやってやる、貸せ!」
「はい」
今度はイーリアか・・・何だか嫌な予感しかしない。
「花木さん、イーリアから離れた方が良いですよ」
「ん~? 何で~?」
「良いですから」
楓がイーリアの事をよく知らない妖怪達に指示をだし、イーリアから遠ざけさせた。
良い仕事をするが、どうせならイーリアを止めてくれれば良かったのにな。
「ふぅ、どりゃぁ!」
「あぁ!」
イーリアが勢いよく振りかぶって餅をつくと、あの頑丈な杵が折れ、臼も半分にヒビが入って
壊れそうになった、しかし、そこは妖怪兎製、イーリアのあの一発を受けてもすぐには壊れなかった。
「あ、ありゃ? 折れたぞ? 脆いな」
「え、えぇ!? 私達が作った杵が折れるなんて!」
「あ、あり得ないわ、あんな細い体の何処にあんな力が・・・」
「あはは~、やっぱり妖怪には色々いるね~、これは杵と臼の改良が必要かもね~」
そんなゆっくりとした口調をしているが、花木はいつの間にか餅を取り出していた。
あれは臼が壊れて餅が地面に落ちないように何だろうな。
にしても、あの一瞬でか、普段はどんくさいのに、こういう時は素早いよな、あいつは。
「えっと、頭領様、熱くは無いんですか?」
「熱いかも~! わぁ~! 速く、速く板を用意してよ~!」
「はい、そう来ると思って、用意しています!」
「おぉ! 流石羽衣! 準備が良いね~!」
「はい、こちらも用意できました」
「よ~し、それじゃあ、3人はお餅をこねてね~私は次を用意するからね~ 久里~」
「はいはい、まさか予備を使うことになるとは思わなかったよ」
そう言い、久里は四宮神社の倉庫の方に入り、杵と臼を持ってきた。
そうか、最初に倉庫に入れてたのはこれだな、全く、許可も無く勝手に・・・まぁ、良いか。
「準備が良いんだな、杵と臼が壊れるって分ってたのか?」
「まさか、そんなわけ無いよ~、念のためだね~」
「僕もあの人みたいに念の為を用意した方が良かったかもしれなかったにゃ」
「何だ? お前は何か忘れたのか?」
「僕の予備のマタタビが何処かに行っちゃったにゃ、あれが無かったら何かあるわけじゃにゃいけど
少し寂しいにゃ、でも、親分様がいるから大丈夫にゃ!」
「俺はマタタビ代わりかよ・・・」
妖怪だらけのこの境内、今、この場所には神、妖怪、人間、妖精、幽霊、動物が居る。
何も否定しない、受け入れる神社としては、この景色はいたって普通なんだろう。
ふ、他の人間が見たらどう思うか、気にはなるが、ま、問題は無いだろう。




