クリスマス
クリスマスイブの次の日、今日はクリスマスだ。
この世界にはクリスマスという行事は無いが、俺としては少しは騒ぎたい。
まぁ、と言っても今日することはケーキとチキンを食うことくらいだがな。
「うし、茜、買い物行くぞ」
「はい、今日はどうするんですか?」
「今日は鶏肉を買おうと思ってな」
「鶏肉ですか、今日は何かの祝い事ですか?」
「いいや、特には無いな、でも、大晦日は別のを食うし、今日は頑張ったお祝いって感じでさ」
「そうなんですか、前までしなかったのになぁ、でも、楽しみです!」
それにしてもだ、ケーキを作るとしても生クリームが無いな。
確か牛乳から取れるらしいが、それが難しいんだったかな。
遠心力で分離するという話を聞いたが、結構根気が要るらしいしな。
うーん、困ったな、どうするか。
「圭介様? どうしたんですか?」
「ん、いや、考え事をしていたんだ、まぁ、気にしないでくれ」
「はぁ、そうですか・・・」
何だか茜に心配を掛けてしまったな、でも、とにかくどうするか。
大人しく和食の豪華な奴で済ませた方が良いかもしれないな。
とりあえず、鶏肉買って、その後に花木の店にでも行くかな。
「お、四宮の神様じゃありませんか、本日はどんな物をご所望で?」
「あぁ、鶏肉をな」
「そうですかい、じゃあ、こちらがおすすめですぜ」
「ん、値段も安いな、これを貰おう」
「へい、100文でさぁ」
「ん? 表記価格より安くないか?」
「えぇ、あんたはこの村の統治者みたいな方ですからね、お安くしているんですよ」
「統治者って、俺は別に何もしてないぞ?」
「いえいえ、色々な事をしてくださってる、あんたらがいるから俺達も安心出来るんですよ」
はぁ、よく分からないが、俺達がいることでこの村は安定しているのか。
てか、統治者って、何もしてないんだよな、軽い依頼は茜が処理してくれるし。
それ以外も周りがやってくれるし、俺が出張るのはヤバそうな奴だけだ。
まぁ、とりあえず、安くして貰えるって言うなら安く買うがな。
「じゃあ、100文ね、ありがとよ!」
「へい、これからもごひいきにお願いしやすね」
そして、俺と茜は肉屋から離れ、花木の店を目指した。
その道中、何度か村人に話しかけられた。
「いやぁ、圭介様は人気者ですね」
「そうか? お前も結構な人気じゃ無いか?」
「私のは圭介様のおまけですよ」
「私は茜のおまけね、と言うか、普通の人間まで私の姿を見られる何て思わなかったわ」
本来人間は睦月の姿を捉える事は出来ない、こいつは幽霊だからな。
だが、そこに何かがいるとハッキリ分かれば捉えることは出来る。
多分、茜が睦月に話しかけている姿を誰かが見たんだろ。
それが広がって、この村の村人は睦月を捉えることが出来るようになった、こんな感じか。
「さて、花木の店に着いたぞ」
「やっぱり人が多いですね」
「あぁ、そうだな」
花木の店は相変わらず繁盛している。
と言うか、捌き切れてないだけかもしれないが、まぁ、従業員が4人だけだし、仕方ないだろう。
そして、俺が並ぼうとすると、やっぱり先に並んでいる奴らが道を開ける。
やっぱり申し訳ないと感じるが、皆笑ってるし、良いのか?
「ふぅ、花木、羽衣、兎梨、卯実、来たぞ」
「あぁ、圭介さん、茜ちゃん、ようこそ!」
「相変わらず受付はお前なんだな、羽衣」
「そうなんですよね、兎梨ちゃんは計算できない! って言うし、卯実はあなたの仕事でしょ?
って言って変わってくれないんですよね、私もお団子作りたいのに・・・」
「大変だな」
「あ、あはは~、圭介ぇ~、ようこそぉ~」
花木が奥からヘロヘロで出てきた、かなり大変なんだろうな、表情で分かる。
「何だ? 随分辛そうだな」
「い、いやぁ~、最近は何だか忙しくてね~、羽衣の処理能力が高くなってね~」
「私も日々進歩しているんです! それはもうずっと接客だけしてましたからね」
「もう少しペースを落としても良いんだよ~?」
「でも、それだとお客様が・・・」
「あ、あはは~、そんなに真剣に悩まないでよ~、これは愚痴みたいな物だからさ~」
「そうなんですね」
「何だか大変そうだが、普通に注文するぞ」
「うん、良いよ~」
俺は兎の団子屋さんの少し高い和菓子を注文して、その帰りに牛乳を7本買った。
一応クリーム作りに挑戦しようかと思ったからだ。
そして、四宮神社に戻り、俺はケーキを作る事にした。
「さて、まずはクリームを取り出す方法を考えるか」
遠心力で分離させる、そうしないと生クリームは出来ない。
生クリームが出来ないとケーキも出来ない。
こんな時、少しだけ力を込めたりしたら分離できたりしないだろうか。
いや、そんな事に力を使うのはな・・・まぁ、やってみるか。
俺は指先に少し力を込め、牛乳の中に突っ込んだ。
「うーん、ほい!」
これが以外と成功して、何とか生クリームを分けることが出来た。
何だろう、遠心分離機とかいるんじゃないのか?
そういえば、指を突っ込んだ時に何だか細かく振動していたな。
その時に分離したのか? 何だかよく分からないが、出来て良かった。
「よし、よし、じゃあ、後はこれを上手く使ってケーキを作るかな」
そして、俺はそのクリームを使い、ケーキを作る事にした。
そんで、ケーキのスポンジを作るために牛乳を使ったが、余ってしまった。
一応飲んでみたは良いが、あまり美味しい物じゃ無いな。
しかしだ、ケーキって、材料から作るとしたらすごい数の牛乳がいるんだな。
そして、しばらくの間、ケーキを作り、それと並行して鶏肉もあげる事にした。
やることが多くてしんどいが、折角のクリスマスだ、頑張るかな。
「ふぅ、これでいいか、ちょっと多く作りすぎたかな」
今日は、少し多く作ってしまった、多分、時音とかが来るのを期待しているんだろうな。
でも、まさか来たりはしないはずだ。
「ん? もう終わったの? 折角手伝おうと思ったのに」
「時音? 来てたのか?」
「えぇ、水希も賢子もくるみも楓も来てるわ」
「そうか、そいつは良かった、じゃあ、作った甲斐があったな」
「これは、鶏? 美味しそうね」
「あぁ、運ぶのを手伝ってくれないか?」
「良いわよ、任せなさい」
そして、俺は時音と協力して、今日のメインディッシュを運搬した。
皆かなり美味しそうに食べてくれた、作った甲斐があるぜ。
そして、本日のデザートの出番だ。
「よし、今日は花木の所の和食の他に、ケーキを作った、食ってくれ」
「ケーキ? わぁ! 大きいですね!」
「こんな物初めて見たわ」
「美味しいの?」
「美味しいって! 食べたことは無いけどね」
「とにかく食べようよ!」
「ケロケロ!」
「とにかく早く食べたい!」
「サラちゃん、乗り出したら危ないよ」
「やっぱり騒がしいな、この数になると」
「でも面白いじゃ無いか、何が起こるか分らないところとか」
「キャン!」
「きゅーん!」
「じゃあ、切るぞ」
そして、俺はケーキを切り分け、全員に配った。
皆は配ったと同時に食べ始めた・
「美味しい!」
「すごいね~、和菓子とは違う感じだよ~」
「こんな物があったんだね」
「ひゃぁ、これを団子屋さんでやったらどうなりますかね?」
「そうね、受けると思うわ、でも、作り方分らないし」
「何でもいいや! 美味しい!」
「ケロはひたすらに食うケロ!」
皆かなり喜んでくれたな、これは作った会があるって物だ。
それにしても、ケーキを1から作るなんて初めてだ。
まぁ、皆が美味しいと良いながら食べてくれている、それだけで頑張った甲斐はあるな。
さて、俺もケーキを食おうかな、美味しいと良いんだが、少し不安だ。
まぁ、皆美味いと言ってるし、大丈夫だろう、じゃ、いただきます。




