クリスマスイブの夜
火の鳥騒動の後、俺達は四宮神社に戻ってきていた。
周囲は暗くなり始めている、まぁ、時間的にそんな所だろう。
今日はクリスマスイブって事もあってか、妙に1日が長く感じたな。
トランプやって、火の鳥を退治して、そして帰宅だ。
普段はダラダラしているだけだから、今日は忙しいと感じるな。
「不思議な鳴き声はどうなったの~?」
「あぁ、不思議な鳴き声の主を倒して説得した」
「人間の言葉を話せるんだね」
「いや、俺がその鳥の言葉を翻訳したんだ、ただの迷い鳥だったよ」
「ただの迷い鳥か・・・あんな燃えさかる鳥がただの鳥かよ、神様はすごいな」
まぁ、確かにそうだな、何だろう、こっちに来てから感覚が変になったかな。
周囲は耳が生えた女の子に幽霊、羽が生えた女の子もいる。
その上見た目はそこまで力が無さそうなのに、その気になれば木を引っこ抜ける怪力娘。
今更ながら、そうそうな面々だな、このメンバーに比べれば燃える鳥なんてそこまで・・・
いや、このメンバーと比べても十分異質だな。
「燃える鳥か~、見てみたかったよ~」
「頭領様、危ないですよ」
「そうそう、いくら強くても火傷しちゃうよ」
「兎梨、頭領様に話をするときくらい敬語を使いなさい、重要よ、この馬鹿」
「あぁ! 卯実ちゃん酷いよ! 馬鹿なんてさ!」
「まぁまぁ、2人とも落ち着いてよ、喧嘩は良くないよ」
「そうそう~、皆仲良くだよ~」
「りょ、了解しました、頭領様」
「うぅ、分かってるよ・・・」
この3人は仲が良いのか悪いのか分からないな。
まぁ、良い感じのバランスを取ってるような気はするがな。
「ま、ちゃっちゃと料理を作ってくるよ、待ってろ」
「あはは~、いつもありがとうね~」
「あたしも手伝おうか、いつも何もしないのは悪いからね」
「あぁ、ありがたい」
そして、俺は久里と一緒に台所に入った。
今日はいつもよりも少しだけ豪勢にしようか。
そんで、明日はケーキでも作ってみるかな。
この世界にキリストはいないが、習慣って奴でな。
それに、あいつらもたまにはそんな物を食ってみたいだろうし。
「圭介、何を作るんだい?」
「あぁ、今日は少し豪華に作るぞ、今回は釣った魚を寿司にでもしようかと思ってな」
「ん? 圭介は寿司を握れるのかい?」
「あぁ、お前らに振る舞ったことは無いがな、振る舞ったのは茜だけだ」
「そうかい、じゃあ、楽しみだね」
「あぁ、任せてくれ、それで、お前は魚を捌いてくれ」
「捌くなら適任が居るんじゃないか」
「あぁ、刀子か、あいつは駄目だ、サラ達に捕まってるみたいだしな」
刀子の奴は今はただひたすらにトランプをサラ達としている。
どうやらトランプをかなり気に入ったようだ、作った立場からすれば嬉しいもんだ。
まぁ、そこまで時間はかかってないが、それでも少しは苦労したからな。
「さて、作るか」
「あぁ、捌くのは出来るからね、任せなよ」
そして、俺達は2人で協力して寿司を握った。
寿司屋で修行をした事があるわけでは無いが、何故か寿司は握れる。
茜にも美味しいと褒められた、でも、まぁ、実際はどうだか分からない。
「なぁ、久里は寿司を食ったことはあるのか?」
「あぁ、あるよ、家を完成させたときに客人から貰ったことがあるんだ
美味しかったよ、だから圭介の寿司も楽しみなのさ、だから厳しめに採点するよ?」
「はは、そうか、じゃあ、気合い入れて作らないとな」
もしも久里が美味しいと判定してくれたら、俺は寿司作りの才能もあるって事だな。
まぁ、あまり自信は無いが、でも、頑張ってみるかな。
そして、寿司を作り始めて1時間が経過した、その間に作れた寿司の数は100貫だ。
これは速いほうなのか、遅い方なのか分からないな。
まぁ、こんなもんだろう、少し多めに食いそうな奴は居るが、多分大丈夫だろう。
「ふぅ、こんな物か」
「並べると壮観だね、100以上あるじゃないか」
「2つで1貫と計算するから、100だな、これだけあれば足りるだろう」
「いくらか残りそうだけどね」
「そん時は俺が無茶をして食うよ、食べ物を粗末にしたらいけないからな、茜もよく言ってる」
「やっぱり出来た子だね、茜ちゃんは、さて、運ぶかな」
「あぁ、そうだな」
そして、俺と久里はその100貫の寿司を大広間に運んだ。
皆はかなり驚愕したような表情で寿司を凝視していた。
「今日は大盛りだ、皆、じゃんじゃん食べてくれ」
「スゲー! 美味しそう!」
「あぁ、圭介様のお寿司、久々に見ました、美味しそうですね」
「これが寿司って言う奴か、初めて見たな」
「おぉ~、美味しそうだね~」
「よし、食うぞ!」
「あまりがっつかない方が良いわよ、なんて言っても、聞くような連中じゃ無いか」
「サラちゃん! まだ食べたら駄目だって!」
「うぅ・・・待つのが辛いよ・・・」
「じゃ、さっさと挨拶するかな」
「いただきます!」
サラが先走って挨拶をして、寿司に食らいついた。
「あぁ! サラちゃん! 駄目だって!」
「良いんじゃないかな~、各々で挨拶すればさ~、と言う事で、いただきま~す」
そして、皆各々で挨拶をして、寿司に飛びついた。
皆は美味い、美味いと良いながら食べてくれる、作った側としてはとても嬉しいな。
「圭介、この寿司はかなり美味しいよ、やっぱり才能があるんだね」
「そうか? ありがとうな」
久里にも褒めて貰ったな、うん、俺は寿司の腕もあるんだな。
多分、これも神様としてのスキルなんだろう、もしかしたら、こいつらの信仰心が影響したとかな。
ま、何にせよ、こんな風に美味い美味いと良いながらワイワイ騒ぐ。
これがクリスマスイブかな、今まで体験したことも無かったが、良いもんだな。
さて、俺もさっさと食わないと、全部食われちまうな。




