皆の帰還・・・?
いつも花木と一緒に居るあの3羽の兎に、名前があったのは驚いたな。
ずっと名前が無いのかとばかり、花木は無かったんだがな。
俺がそんな事を考えていると、花木達が戻ってきた。
「あはは~、あまり釣れなかったね~」
「魚を捕るのは難しいケロね」
「あんたらは1匹も連れなかったからね」
どうやら花木と賢子は1匹も釣れなかったようだ、まぁ、下手そうだしな、釣り。
「どうだった?」
「お、帰ってきてたのかい、そうだね、結果は4匹だったよ」
「久里1人で釣ったのか?」
「あぁ、2人は全く連れなかったね」
「花木、お前の傘下の3人はしっかりと釣ってきてたぞ、1人1匹で」
「へぇ~、あの子達って釣りが出来たんだね~」
少しは悔しがるかと思ったが、全く悔しそうな素振りを見せていない。
これはリーダーの余裕とかそんなんかな、いや、こいつが鈍いだけか。
「くぅ、兎に釣れたのに、ケロは1匹も釣れないなんてぇ、悔しいケロぉ!」
賢子はちゃんと悔しがるんだな。
「そうだ、圭介はどうだったんだい?」
「あぁ、10匹だな、これ以上は釣っても入らないからな」
「ほぉ、すごいね、そこで眠っている2人は釣ったのかい? いや、何となく分かけどね」
「あぁ、お察しの通り、この2人は1匹も魚を釣ってない、と言うか途中で眠ってた」
「あはは~、言い出した本人達なのにね~」
「全くだな」
でも、まぁ、寝顔から察するに、少しは楽しめたようだな。
釣りじゃ無くて、山での昼寝をな。
「あぁ、そうだ、お前の傘下の3人は名前があったんだな」
「うん~、本当は無かったんだよね~」
「そうなのか?」
「でも、流石に名前が無かったら呼ぶときに困ってね~、お店でも意思疎通が出来なかったからさ~」
まぁ、そうだよな、なんて言っても名前が無いと、そこのあなた、とか、きみ
とかじゃ無いと呼べないし、そもそも誰を呼んだのかも分からないからな。
「それで、お前が付けたのか、名前を」
「いいや~、名前を考えるのが難しいからさ~、茜ちゃんに頼んだんだよね~」
茜に頼んだのか、大丈夫だったんだろうか。
「それで~、圭介様に聞いてきます、て言ったんだよ~」
「は? 俺が? 何で、そんな記憶は無いぞ」
「そうなの~、でも、茜ちゃんは圭介様に聞いてきました、って言ってたよ~」
不味い、全く記憶に無い、そんな事言われたっけ?
「思い出せない、そんな事あったか?」
「茜ちゃんに聞いてみればいいよ~」
「あぁ、そうする」
そして、花木は俺の横に座った、いちいち隣で眠っていたくるみを膝にのせて。
「おい、なんでそこに座る」
「いいじゃんか~、私と圭介の仲なんだからさ~」
「あぁ、そうかい」
俺は大人しくその場でお茶を飲んだ、自分で入れたが、茜が入れてくれたお茶の方が美味しいかもな。
やっぱりお茶に関しては茜には勝てそうに無い。
そして、少しして久里の傘下の狸が2組戻ってきて、茜、時音、睦月が帰ってきた。
「いやぁ、結構大量でしたね」
「そうね、茜ちゃんは釣りの才能があるのかもしれないわよ」
「あはは、時音さん、おだててもお茶くらいしか出ませんよ」
「おだてじゃ無いでしょ、大きいのを3匹も釣ったんだし、自信を持ちなさい」
どうやら結構大漁のようだな。
「あ、圭介様、花木さん、もう帰ってきてたんですね」
「あぁ、そうだ、後はサラ達だけだ」
「あ、皆さん帰ってきてるんですか、サラちゃん達は大丈夫でしょうか・・・」
「大丈夫だろう、四季もいるし、それと茜、1つ聞きたいんだが」
「はい、何でしょう」
「俺に花木の傘下連中の名前を考えてくれって言ったか?」
俺は茜にその事を聞いてみた、話すチャンスだと感じたからな。
「えーっと、あぁ、はい、確か私が7才の時に聞いた記憶があります」
7才って事は、今から2年前か、そんな事聞かれたっけ?
俺は記憶をさかのぼってみた。
{圭介様! 花木さんがあの3人の名前を考えて欲しいって言ってました!」
{3人? あぁ、あのいつも花木と一緒に居る3人か}
{はい! 何だか名前が無くって不便だったそうですよ!}
{ふーん、じゃあ、兎だし、それっぽいのを適当に考えるか・・・}
{どうですか? 出てきましたか}
{そうだな、適当に羽衣、兎梨、卯実で良いんじゃないか}
{あぁ、何だかそれっぽいですね! じゃあ、話してきます!}
{分かった・・・はぁ、適当になったが、まぁ、良いか}
そういえば、そんな会話をしたような記憶がある。
あの時は確か適当に名前を付けたんだったな。
と言うか、それまで羽衣と位しか話せてないし、性格は知らなかったんだよな、確か。
「あ、あぁ、思い出した、あれか、名前はぽんと出たのを言ったからそこまで記憶に無かったんだ」
「そうなんですか、でも、やっぱりすごいですね」
「何がだ?」
「だって、すぐに名前を考えれるのはすごいと思いますよ」
「そうなのか?」
「はい、そうですよ」
そうなのか、名前がすぐに出てくるのってそんなにすごいことなんだな。
ハッキリ言って適当にしか付けてないし、実感は無いがな。
「じゃあ、もしも圭介に子どもが出来たら何人でも名前が考えられるんだね~」
「いや、流石に子どもの名前は悩むだろう」
「私達の名前は悩まないの~?」
「あぁ、特徴がハッキリしているからな」
「そうなんだ~」
こいつらは兎だ、だからあの3人の名前はすんなりと出てきたんだろうな。
兎、と言うかなりの個性があるから、でも、自分の子どもとなると難しいだろうな。
「まぁ、とにかく、俺の謎が解けたよ、ありがとな、茜」
「いえ、お役に立てたのなら光栄です!」
茜はニッコリと笑った、うん、すごい曇りの無い笑顔だな。
子どもね、ふむ、今は良いかな、もう手一杯だからな。
でも、その内子どもが欲しいものだ。




