釣り競争
今回はいつもの妖怪兎3人衆の名前と容姿が明確に出てきます、気になる方は最後までご覧ください。
何か知らんが、のりで多人数、チーム対抗釣り対決が始まった。
俺、水希、くるみは3人で釣りをすることになった。
場所はとりあえず、上流の方でする事にした。
「良いか、釣りは静かに待つんだ、それが重要だからな」
「はーい!」
と言っても、この2人が静かに釣りを出来るのか? 不安しか無いな。
まぁ、俺の心配は当ったようだ、釣りを初めてたった1分ほどで2人が変に震えだした。
「暇だぁ・・・」
「静かにしろよ、と言うか、これはお前が言い出したんだろ?」
「あたいは釣りって言うのはこう、川に入って捕まえることだと思ってたんだよ」
「うちも!」
うん、そもそも釣りを知らないのに釣りがしたいと言い出したのか。
やっぱり思いつきで生きているだけはあるよな、水希は。
「うぅ、全く釣れなくてつまんないよぉ」
「馬鹿、1分やそこらで釣れるかよ」
「・・・とかいってさ、圭介はもう3匹も釣ってるじゃん」
「俺は結構釣りはやってるからな」
死ぬ前に釣りをやっていたが、ここまでは釣れなかったな。
でも、こっちに来てからかなり簡単に釣れている。
これも神様補正的な何かなだったりしてな。
「まぁ、お前らにコツを教えてやる」
「コツなんてあるの? 教えてよ」
俺は2人に釣りのコツを軽く教えた、まぁ、コツと言ってもただ単にジッとしながら竿をみろだがな。
こいつらは基本的にキョロキョロと周りを見ているし、魚が近寄ったらすぐにあげる。
だから、こいつらは単純に基本が出来てないんだ、その事を軽く話した。
「うぅ・・・えっと、釣り竿を見て・・・見て・・・」
「・・・・・・」
そして、2人は俺の言葉の通りに釣り竿を集中してみている。
普段騒がしい2人が静かなんだよな、少し妙な気分だが、これが釣りだろう。
「・・・・・・ふにゃぁ」
どうやら2人の集中力はそろそろ限界のようだな・・・と言うか、何だか川の方に倒れてる!
「おわ!」
俺は焦って2人を掴み、川に落ちないようにした、なんで前に倒れるんだよ・・・
「ふにゃぁ~・・・」
「あうぅ・・・」
「どうしたんだよ、いきなりぶっ倒れて」
「うぅ、何だか釣り竿を見ていたら眠たくなってぇ~」
「うちも~」
釣り竿をジッと見ていたら眠たくなるってどんな病気だよ。
やっぱりこいつらには釣りは無理なのかもしれないな。
やれやれ、まぁ、怪我をしなかった分よかったかな。
それにしても、本当にこんな所でグッスリ眠るとはな。
「スゥ・・・スゥ・・・」
「スゥ・・・・・・スゥ・・・・・・」
左右から寝息が聞えてくる、ふぅ、さっきまで騒がしくしていた奴らが嘘のようだ。
それにしても、静かだな、何だか寝息まで環境音に聞えてきた、こんな状態で釣りか。
前は食い物の為の釣りだったが、今日はのんびりと釣りを楽しめそうだな。
俺は川のせせらぎや、草木の音、そして、2人の寝息を聞きながらのんびりと釣りを行なった。
こういうのを癒やしの一時って言うんだろうな。
「うん、こんな物かな」
それから3時間ほど経過した、俺は10匹の魚を釣ることが出来た。
本当はもっと釣れたんだが、流石に10匹以上は入らなかったから諦めた。
それ以降はキャッチアンドリリースだな、大きいのが釣れたら交換しながら。
と言っても、そこまで大きい魚は釣れなかったがな。
「ふぅ・・・はぁ、仕方ないな」
俺は2人を抱き抱え、四宮神社に帰っていった。
その間に起きるかもしれないと思ったが、意外な事に起きたりはしなかった。
さて、そろそろあいつらも帰ってるかな。
「きゅうん!」
「きゃん!」
俺達を出迎えてくれたのはキキとキャンだった。
この様子だと他の連中はまだ帰ってないんだな。
「帰ったぞ、とりあえず飯を用意してやる」
「きゅうん!」
「キャン!」
俺は2匹を撫でながらそう呟いた、そして、2匹も答えてくれた。
そういえば、こいつらには首輪を付けてなかったな、でも、何処にも行かないよな。
やっぱり小さいから勝手に動き回るのは怖いのかもしれない・・・たまには散歩をしてやるか。
「あ、圭介さん、帰ってきてたんですね」
「ん、最初はお前らか、結構速いんだな」
俺の後に帰ってきたのは花木の傘下の3羽だった。
「どうだった? 魚釣り」
「あはは、3人で頑張っても3匹しか釣れませんでした」
「釣りって難しいんですね」
「本当だよね、何度も服に引っかかっちゃったし」
「あはは」
海釣りならまだ分かる、投げるときに振りかぶるからな。
だが、川釣りで服に引っかかるってどうなってんだよ。
「普通、引っかからないだろう」
「そんな事無いですよ、スカートに引っかかっちゃって大変だったんですから」
「私は羽衣ちゃんを釣りました!」
羽衣? 誰のことだ、イマイチよく分からないな。
「・・・羽衣って誰だ?」
「え!? わ、私です! 私ですよ!」
返事をしたのはグレーで髪の毛が短く、目の色も灰色だ、兎だからか目の色に多少は赤色が入っているな
だが、殆ど灰色だな、そして、グレーのふりふりの服を着ている女の子だった。
そして、服の真ん中には兎の模様がある、首元、足、袖には灰色のふわふわした何かがある。
これは毛なんだろうな、それにしても人型になったら肌からじゃなくて服から毛が生えるのか。
そして、よく見てみるとロングスカートの先端当たりがちょっと破れている。
多分、ここを釣られたんだろう。
「うーん、そういえば俺はお前らの名前を知らないんだよな」
「3年間も一緒に居るのにですか!?」
「あぁ、そうだ、てか、お前らは俺に名前を言ったか?」
「・・・・・・? 言いましたっけ?」
「言ってないだろうな」
「あ・・・あはは、そうでしたね言ってませんでしたね、じゃあ、今更自己紹介をします」
「私は羽衣です、自分で言うのも何ですけど、この3人の中では1番まともだと思います」
自分の自己紹介でそれか、結構まじめそうな子なのにな、もしかして、本当に?
「それで、私は兎梨って言うんだ」
さっき羽衣を釣ったと言った子だな。
この子は茶色の髪の毛をして、やっぱり短い、瞳の色も茶色だな。
一応兎だし、少しは赤色も入っているが、殆ど茶色だな。
服は茶色で左下の方に団子の模様が入っている。
下はズボンで少しだけ茶色寄りの色をしている、茶色い兎だったんだろうな。
そして、首元や足の袖や腕の袖の場所は茶色いふわふわの毛が生えている。
これは兎だからなんだろうな。
「そして、私は卯実と申します、馬鹿な2人の保護者役です」
「ば、馬鹿・・・」
「い、いつものことだけどキツいね」
開幕2人を馬鹿だと言い放った彼女は完全に白い髪、少し赤色が入った白い瞳だ。
服は2人の服とは少し違い大人っぽい雰囲気を出している、胸元のポッケには月の模様が入っている。
下はスカートで羽衣と同じくロングだがストッキングのような物を履いている、黒色だな。
そして、やっぱり他2人と同じ様に首元、袖、足に白いふわふわの毛が生えている。
「どうですか、私達の事、覚えてくださいよ?」
「わかった、自己紹介までされたんだ、流石に覚えるよ」
「この2人は忘れても構いませんが、私だけは覚えていてくださいね」
「卯実ちゃん、相変わらず酷いね」
「卯実だからね、仕方ないね」
「何か文句がありますか?」
「いや、全然、もう慣れたし」
「私もね」
さて、まさか今更この3人の名前を知るとはな、もう少し早めに聞けばよかった。
それにしても、こう見てみると、結構個性的だよな、この3人は。
そうだな、態度から察するに羽衣は丁寧、兎梨は元気、卯実は辛辣って感じだな。
本当に、結構個性的な奴らだぜ。




