四宮神社の朝
怪談話を終え、次の日の朝、俺は非常に熱い思いをしている。
「・・・あぁ、そういえばこいつらはよく俺の寝床に入るよな」
朝起きると周囲には4羽の兎、そして、1匹の狐が同じ寝床にいた。
こいつらはいつものように俺の寝床に入ってくる、獣だから毛が非常に熱い。
まぁ、こいつらがいつも布団に入ってくるお陰で俺は冬場は暖かく眠れる。
冬場は良いんだが、夏場とかは地獄なんだよな。
「さて、飯の用意をしないとな」
俺は部屋の襖を開け、台所に行こうとした。
「ふみゃ!」
何か柔らかい物を踏んだ、それに声も聞えた・・・これは何だか嫌な予感だ。
俺はゆっくりと下を向いた、そこには刀子がいた。
何で台所の前で眠ってるんだ? そういえばこいつの部屋は用意してない気がする。
「痛い・・・だぁ! 誰だよ! な! あんたかよ! よくも踏んでくれたな!」
「それは謝るが、なんでこんな場所で寝ているんだ?」
「部屋が無いからだ!」
「確かに用意してないが、前まで拘束していた部屋で寝れば良いじゃないか」
「あ・・・」
刀子はそういえば! という感じの表情を一瞬見せ、顔を赤くして立ち上がった。
「う、うるさい! ふん!」
そして、大きな怒鳴り声を上げ、何処かに行った、多分あの部屋だろうな。
「はぁ、ヤレヤレ、あいつはやっぱり何処か抜けてるのか?」
俺はそんな独り言を呟き、とりあえず台所に入り、料理を始めた。
今日もいつもの朝食、というのは流石に飽きそうだから、今日は少し違う物を作るか。
そうだな、丁度材料もあるし、うどんでも作ってみるか。
それにしても不思議だ、うどんなんて今まで作った記憶は無いが、何故か作り方が分かる。
これは信仰の影響かもしれない、本当に神様ってのは便利だな。
俺は何故かあった知識を使い、とりあえず手打ちうどんを作ってみた。
それにしても、うどんを作るの塩水がいるとは思わなかったぜ。
「ふぅ、こんな物かな」
とりあえず麺は出来た、なんで俺はいちいち麺から作ったんだろうか。
まぁ、この方が手作り感があって良いんだけどな。
さて、次は汁だが、これも何故か知っていた、鰹節を使った汁だ。
これは茜が買ってきた物だ、そういえば汁物が食べたいですって言ってたな。
だったら今日は運がよかったかもな。
「ふぅ、出来た、初めてにしては上出来だな」
汁の味見もしてみたが、結構旨かった、うどんなんて初めてだったが、これは楽しめたな。
それにしても、この量は大変だな、何だか給食のおばちゃんの気持ちが少し分かった気がする。
とりあえず、できあがったうどんを机に並べると、丁度皆が起きてきた。
「おはようございます」
「よく寝たぁ」
「ん~? 今日はいつもと違うね~」
「あぁ、今日はうどんを作ったんだ、結構大変だったぜ」
「うどん! 食べたかったんですよ!」
全員が席に着き、挨拶を済ませ、一斉に食事を開始した。
全員美味い美味しいと良いながら食べてくれた、これは普通に嬉しいな、作った甲斐がある。
そして、食事が終わると花木達は帰って行った、久々に店を開けるんだろうな。
「何だか花木さん達がいなくなったら寂しくなりましたね」
「あいつらだけで12人だからな、それだけ一斉にいなくなったら寂しいだろな」
「それもそうね、でも、静かとは違うわね」
「ヒャッホー!」
「あぁ! 走らないの!」
「がふぁ! 痛いじゃないか!」
「あはは! ごめん!」
一気に減っても後ろはいつも通り騒がしい、サラは駆け回って、刀子に当る。
そして、刀子が怒ってサラを追いかけ回す、うん、いつも通りだ。
今日は俺の方まで被害が及ばなければ良いけどな。
「あぁ! 危ない!」
「は?」
後ろを振り返ると枕が俺の方に飛んできた。
「うお!」
結局避けることは出来ないで当ってしまった、幸い枕だったしそこまで痛くはなかったが。
それにしても、何かあいつらが騒ぐといつも俺も巻き込まれている気がする。
体当たりしてきて転けたり、本当に散々な目に遭っている。
「おい、いい加減に暴れるな、あと、俺を巻き込むな」
「あはは!」
「な!」
何を思ったかサラが俺の方に突撃してきて抱きついた。
こいつは本当に行動がよく分からない子どもその物だ。
正直、水希の方が読みやすいかもしれない。
「なんで抱きつく」
「抱きつきたかったから!」
いつも理由もないし、大体思いつきだし、本当にこいつの面倒を見るのはしんどい。
まぁ、殆どは四季が面倒を見てくれたり、制御しているからまだマシなんだがな。
そして、昼頃だ、俺は茜と一緒に花木の団子屋さんに行くことにした。
久里がそこをどんな風に改装したのかも気になるからな。
そして、花木の団子屋さんの目の前、そこはすごい行列だった。
「これはすごいわね」
「人気ですね」
「流石は妖怪兎の団子屋だな」
「あ! 四宮神社の! 今日はどうしたんですか!?」
「あぁ、実は花木の店に用があってな」
「分かりました!」
行列が一斉に引き、俺達を入れさせてくれた、何でかと聞くと神様のお邪魔は出来ませんからだった。
何だか申し訳ないが、ここまでしてもらって遠慮するのも何だし、俺達は花木の店に入った。
「あ、あ、い、いらっしゃいましぇ!」
花木の傘下が目を回しながら接客していた、どうやら俺達だと気付いてないようだ。
それだけ忙しいんだろう、流石は有名店だな。
「あ! 圭介様に茜さん! ようこそ!」
そして、一瞬間が空き、俺達だと気が付いたようだ。
「大変そうだな」
「あはは、そうなんですよ、長い間閉めていたからお客さんが多くて、あ、今日はどんなご用ですか?」
「あぁ、久里が店を改装するって言ってたから見に来たんだ、どうなった?」
「あの人型になれない傘下の兎たちのことですね、あの奥の部屋です」
俺達は傘下兎に案内され、奥の部屋に入った、そこには沢山の兎が居た。
そして、そいつらは俺達に気が付くとすごい勢いでこっちにやってきた。
「元気そうですね」
「そうだな」
「あ、そうだ、この子達にご飯をあげないと」
そして、人参やら穀物を沢山置き、傘下の兎は忙しいので失礼します! と言い戻っていった。
「ねぇ、圭介様、私達も手伝った方が良いでしょうか?」
「そうだな、それが良いかもしれない、じゃあ、茜は接客だな」
「接客ですね! 任せてください! 接客は得意です!」
そして、俺達は花木の団子屋を手伝うことにした、さて、茜はどんな活躍を見せるかな。




