四宮神社の宴会準備
「いやぁ、綺麗になりましたねぇ」
「あぁ、そうだな」
花木達と協力して、ようやく綺麗になった四宮神社、やっぱりこれが神社だよ。
まぁ、妖怪が跋扈している神社って神社なの? と言う疑問はあるが、神社だ。
清潔感があって穢れが少ないから妖精も居るわけだしな。
「おぉ・・・綺麗だ!」
「ふぅ、やっと終わった・・・しんどかったな・・・」
俺達が綺麗にしたという余韻に浸っていると、後ろから階段を上る音が聞えてきた。
「さて、今日こそは片付けないとな、全く花木の奴、任されたのに掃除すらしないとかね」
階段を登ってきたのは久里だった、何人かの傘下も連れている。
何だか申し訳ないが、神社の掃除はもう終わったんだよな。
「ん? おぉ! あんたらもう戻ったのか・・・それに、神社も綺麗になってる」
「何だか悪いな、傘下まで連れてきたのに」
「全くさ、今日のために昨日までに殆どの仕事を片付けたのにさ、まぁ、良いか」
そう言うと、久里とその傘下達が何かを取り出した。
「休んでまで来たんだ、折角だし宴会をしようじゃないか」
取り出したのは飲み物や食事の材料などの色んな宴会関連の物だった。
「あはは~、それは良いかもね~、帰ってきた記念とかでさぁ~」
「まぁ、そうだな」
「宴会ですか、初めてな気がしますね」
「まぁ、そうだな、こっちに来て3年間の間宴会なんてしなかったしな」
「何で?」
「簡単さ、頭数が足りなかったからさ、人数が少ない宴会は寂しいだろ?」
そうだな、3年前と今とではこの神社に入り浸っている妖怪やら妖精やらは一気に増えた。
前まで主なのは5人くらいか、で、今は主な奴は8人、ペットも合わせると10か。
2倍か、思ったほど増えてないが、傘下連中を合わせたら20は行くな。
「20人ぽっちの小宴会だが、まぁ、楽しめるだろうさ」
「ふ、そうだな、祭りレベルは無理だが、小規模なら出来るか」
「じゃあ、宴会をしましょうか」
「宴会ですか、ふふ、楽しみだなぁ」
さてと、宴会か、ま、折角休んでまで来たんだたまにはもてなさないとな。
「じゃあ、私はお団子とお餅を作ってくるねぇ~」
「あぁ、頭領様! 私達もお手伝いします!」
「分かったよ~、じゃあ、頑張ろうね~」
「はい!」
そんな会話をしながら4羽は神社の後ろに進んでいった。
まぁ、サラ達お留守番組は非常に嫌そうな表情をしていたがな。
「そういえば、花木は5日間も店を開けてるんだよな? 大丈夫なのか?」
「大丈夫だと思うね、花木の団子屋はかなり繁盛している、からね
ま、人間には真似できない最高レベルの団子や餅を低価格だからね、そりゃあ繁盛するよ」
本来花木が作るレベルの団子は最高級品だ、神様に供えたりするレベルのな。
それを低価格でいつでも買えるんだからな、だから長い間閉めていても人は来るのか。
「それにしても、なんであんなに安いんでしょう?」
「そりゃあ、簡単だろ、あいつは商売にさほど興味が無いからな」
花木が団子屋を経営しているのは色んな人に妖怪兎の団子を食べて欲しいからだ。
人経費もかからないし、材料費さえ取れれば問題は無いだろうしな。
「でもねぇ、普通傘下を殆ど無給で働かせるかね」
「それはですね、私達が要らないって言ってるからですよ」
神社の裏に杵や臼を取りに言っていた1羽が帰ってきて、話に入ってきた。
「要らないのか? 給料が?」
「はい、私達は頭領様のお近くにいるだけで幸せですから、それにご飯もちゃんと頂いてますし」
そこまで花木のことを尊敬しているのか・・・
俺は少しだけ神社の裏の方に視点を移した、そこにはドジをふんで転けている花木の姿が見えた。
うーん、よく分からないな、何であいつがここまで傘下を惹きつけてるんだか。
3年間ほぼ一緒に居るが、よく分からない、精々ドジで間抜けで馬鹿だけど何か頭が良い
そんな感じのイメージしかないな、ちょっとだけ聞いてみるか。
「なんでそんなに心酔してるんだ? 俺はあいつのことをドジで間抜けで馬鹿なイメージしかないぞ?」
少し酷いかもしれないが、俺のイメージを軽く話した、これだけ心酔してるんだし怒るかと思ったが
それが怒らなかった、むしろ少しだけ笑っている。
「確かにそうですね、でも、私はそれでもあの人に付いていきます、明白な理由はありませんけどね」
ふむ、よく分からないが、どうやらあいつには無意識にこいつらを惹きつける何かがあるんだろう。
指揮も出来ないし、威厳もないけど、何故か部下を惹きつける上司ね、そんな上司が居るとはな。
ま、こいつらは幸せ者なんだろう、そこまで尽くせる奴が居るんだし。
「本当に花木の奴はよく分からないなぁ、あたしはあんな風になれそうにないね」
「そんな事は無いんじゃないですか? 久里さんだってずっと付従ってくれる傘下が居るじゃないですか」
「ふ、そうだね、あたしには勿体ないほど出来た部下が居るね」
少し意外だった、久里はあまり自信が無いのかもしれない。
でも、俺は別に良いような気もする、自信が無いのは自分に満足してない証拠だと思うからな。
自分に満足してないから満足するために努力が出来るからな。
「さてと、ま、お話はこれくらいにしてと、材料をくれ、料理してくる」
「久々にあんたの料理も食いたいからね、任せるよ、はい、材料」
久里が差し出した材料は結構な量があった、20人分以上じゃないか?
そう思ったが、まぁ、こいつらならそれ位軽く平らげそうだからな。
多めに作るか、だが、切るのが面倒だな、この量は・・・
あ、そういえば丁度良い奴が居たな。
「おい、刀子」
「何だ? 用でもあるのか?」
「あるから呼んだんだ、料理を手伝って欲しいんだ」
「はぁ!? 何で私がそんな面倒なことを!」
「ただ切るだけだ、それ位出来るだろ?」
「面倒だから嫌だね」
意外と強情だな、面倒な奴だ、やっぱりまだプライドとかがあるんだろうか。
「何だ、妖刀の妖怪のくせに斬れないのか」
「な!?」
「まぁ、そうだな、封印してるし、当然か、分かったよ、茜にでも頼むさ」
「ば、馬鹿にするな! たとえ封印されてても斬ることくらいは出来るって証明してやる!」
予想通り食い付いてきたな、プライドが妙に高いとこういう軽い挑発に乗りやすいしな。
こっちに来る前に似たような同僚が居たし、こういうタイプの扱いは結構慣れてる。
「無理しないで良いぞ?」
「うっせぇ! やってやるっての!」
これで良しと、あまりやり過ぎると泣き出しかねないしな。
「じゃあ、手伝ってくれ」
「やってやる!」
軽く切る形を言って、後はこいつに任せるか、でも、何だか手がぷるぷる震えてるな。
俺が初めて料理を作るために包丁を使ったときもこんな感じだったな。
「おりゃ!」
刀子は力を込めて包丁を押した。
まぁ、そんな切り方で野菜とかが綺麗に切れるわけがなく、切り口は汚かった。
「くぅ、し、失敗した・・・」
「刀を振る感覚でやるなよ、包丁はもうすでに相手に刃が当ってるんだからさ」
「う、うるさい、これは、その、初めてで緊張下だけだ! こ、今度こそ!」
俺の言葉を意に返さず、刀子はひたすらに力強く野菜を切った。
当然全部の切り口は汚く、潰れている、これは酷いな。
「ぐぅ・・・上手く斬れない・・・」
「ちょっと貸せ」
「あ、何を!?」
俺は刀子から包丁を取り、軽く手本を見せた。
「包丁はこう使うんだ」
これでも1人暮らしで自炊をしていたんだ、包丁の扱いはお手の物だ。
俺は野菜に刃を当て、後ろに引くようにして、野菜を切った、結果切り口は潰れず、綺麗に切れた。
「な・・・くぅ・・・」
「分かったか? 強く押えるんじゃなくて動かせ」
「わ、分かった、くそぅ・・・」
そして、刀子は俺が教えたとおりに包丁を扱った、流石は妖刀の妖怪だ、呑み込みが早い。
刀子は結構な速さで野菜を切り出した、これなら安心だな。
そして、2時間ほど経過して、ようやく宴会用の食事が出来た、これで後は宴会だけだな。




