河童の里
山童の後は河童か、何だか今日は童と付く妖怪とばかりって感じだな、
まぁ、別に良いが、しかし、河童か尻子玉とか抜かれなきゃ良いが・・・まぁ、大丈夫だろう。
それにしても、河童は人間になじみが深いよな、俺が死ぬ前の世界でも河童は有名だったしな。
腕とかミイラとか、あまり良いイメージは無いが。
「ここです、ここに河童の里があります」
そこは大きな滝とその横に大きめの穴があった、川の近くだな、流石は河童。
「河童はどんな奴らなんだ?」
「そうですね、とても元気で、好奇心が旺盛で何でも知りたがっている感じの妖怪ですね」
「まさに子どもって感じだな、流石は名前に童って書いてあるだけはある」
「あ、でも、1つだけ子どもっぽく無いところがありますよ?」
「何だ?」
「それは」
楓がそこまで言うと、丁度洞窟の方から河童が出てきた。
「人間だ! 久し振りだなぁ! あはは!」
その河童は俺達を見るなりいきなり嬉しそうに近付いてきた。
「あなた達は人間だよね?」
「わ、私と水希ちゃんはそうですけど・・・後は人間じゃ無いです」
「え? じゃあ、妖怪? あ、天狗の姉ちゃんもいる! 久し振り!」
「久し振りね」
ふむ、楓は河童と話を良くしているのか・・・まぁ、そうだな現状悟り妖怪以外は
子どもが元の妖怪だ、仲が良いのも当然か。
「一応紹介するね」
楓はその河童に俺達の事を話した、すると河童は嬉しそうにして、俺達を里に案内してくれた。
すごい歓迎ムードだ、河童はかなり友好的なんだな。
「ねぇ、あなたは神様だったよね?」
「そうだな、一応」
「じゃあ、教えて欲しいことがあるの!」
「何だ?」
「私は何のために産まれてきたの?」
・・・子どもがする質問じゃ無いな・・・何だかスゲー難しい質問だ。
「えっと、なんでそんな事を聞くんだ?」
「実は私は昔は人間だったの」
「あぁ」
それは見た目からしてよく分かる、伝承で見てみた河童とは似ても似つかない。
体は緑じゃ無いし、皿も無い、甲羅だって無い、緑色の服を着て、普通に髪も生えている
背中の服の色は他とは違って少し白っぽい、目の色もバラバラだ。
統一してあるのは服装だけ、もう、完全に人間その物だ。
「その時に私はお母さん達が食べるものに困っているって聞いたの」
「ふむ」
「でも、私のご飯はいつも豪華で・・・何だか申し訳なかった、何だか私は要らないんじゃ無いかって
だから私は山に入って、そこで・・・うぅ、頭が痛い・・・」
「無理に思い出さないで良いぞ?」
「うん・・・ねぇ、神様、教えて、なんで私は産まれてきたの? 理由を教えて?」
困ったな・・・こんな哲学的な事を聞かれるとは・・・
俺も前まで結構迷ってた問題だが、何となく茜や水希を見ていて気が付いたことがある。
そうだな、こいつにはその事を話しておくか。
「・・・そうだな、理由はない、かな、いや、正確にはもう産まれてきた理由は達成してるんだよ」
「どういうこと?」
「お前が産まれた理由はお前の両親がお前に産まれてきて欲しかったからだ、ただそれだけだ」
「え?」
「それ以上に親は何も求めない、ただ、お前の幸せになることを願ってくれている」
「だったら、私はお父さんとお母さんに酷いことを・・・」
そうかもしれないな、こいつは山で死んだ、だが、河童として生きている。
それが何故か、妖怪は思いの具現化でもある、マイナスかプラスかあるいは両方かのな。
「だが、後悔はするな、それはお前の両親が望んでいない、お前は今、種は違っても生きてる
妖怪は思いの具現化でもある、お前の両親はお前が元気に生きることを望んでる筈だ」
「・・・・・・・そうかな? だったら元気に生きないとね」
「あぁ、それが1番だ」
ま、この事は俺もまだよく分かっていないが、なんせ神様を始めてまだ3年だからな。
だから今こいつに言えることはそれ位しか無い。
いくら考えても答えなんか無いかもしれないが。
まぁ、これでいいならこのままで良いか。
真実が常に最上の答えだというわけじゃ無いからな。
「さて、一応聞くけど、お前らは村を襲ったりはしないよな?」
「うん、しないよ、胡瓜もあるし!」
「あの、思ったんですけど、なんで河童って胡瓜が好きなんですか?」
「まだ私達が生きてた頃、胡瓜はごちそうだったんだよ、それにそこまで高く無かったと思うから
よくお母さんが買ってきてくれてたんだ、だから私は胡瓜が好きなんだ、私はだけどね」
「あたしも!」
「うちも!」
「おらも!」
他の河童達も一斉にそうだと言い始めた、ふむ、胡瓜は昔ごちそうだったのか。
それに安いんだな、なるほど、だから河童は胡瓜が好きなのか。
「うーん、胡瓜って美味しいか?」
「美味しいよ! 食べてみてよ!」
「いや、俺は別に」
「食べてみてよ!」
イーリアが沢山の河童にせがまれている、安易な発言をするからだな。
「胡瓜は美味しいよ! あたいもよく食べてた!」
「でしょ? さぁ! 一口で良いからさぁ」
「わ、分かったって、分かったからそんなにせがむなよ」
河童達の押しに負け、イーリアは河童達から渡された胡瓜をかじった。
「うーん、やっぱり味が薄いな、さっぱりしすぎてあまり」
「そんな事無いよ! 美味しいって!」
「うんうん、美味しいよ、絶対に神社に生えてたりするキノコより美味しいって!」
「は? 神社に生えてるキノコ? 何言って」
「あのキノコは不味かったなぁ、何だか食べたら意識がなくなりかけたんだよね」
「それは毒キノコだよ! 食べちゃ駄目でしょ!」
毒じゃ無いのか? と突っ込もうとしたが、俺よりも先に茜が声を出した。
「そうなの? でも、山の赤いキノコよりは美味しかったよ?」
山の赤いキノコ? 間違いなくそれも毒だろう・・・こいつ、本当人間かよ・・・
「それも毒だよ!」
「・・・この子は人間なのかしら?」
どうやら睦月も同じ事を考えていたようだ。
「まぁ、信じ難いだろうが、人間だ、正真正銘のな」
「人間ってこんなに怖い種だっけ?」
「あいつだけだろ?」
「それに、神社のキノコは良い感じの色に焼かないと美味しくないよ!」
「おぉ!」
・・・この口調だと茜もそのキノコを食ったことがあるんだろうな。
しかも焼くって、茜がやったら間違いなく黒い何かになってそうだが。
「そうなの? 美味しいの?」
「うん、ずっと前にお姉様がやってくれたけど美味しかったよ」
あぁ、先代まで・・・巫女は特殊な種族だったりしないか? もしかして神社のキノコは毒じゃ無いのか?
いや、毒じゃなかったら食べたらクラッとなるなんて事・・・あぁ、神社が違うか。
「おぉ! 今度やってみる!」
「それが良いよ、おすすめだから」
「まっちょ、こんなに食えないって! 止めてくれ!」
イーリアは河童に胡瓜を食すことを強要され、茜と水希はキノコ雑談。
何だろうな、この雰囲気は・・・まぁ、何だか安心する空気ではあるがな。
キノコ雑談は何だか不安な気持ちになるが。




