山童達の過去
山童達が大人しくなり、俺達は本題に入った。
しかし、何故か俺は沢山の山童達に懐かれてしまっている。
「なんでこいつらは俺にじゃれついてくるんだ?」
「私達は本来は子ども、まだ誰かに甘えたいんだよ・・・」
親の愛を知らないで死んだ子どもだからか・・・何だかかわいそうだな。
仕方ない、何か話しにくいが、このままで良いか。
それにしても、茜と水希は他の山童達と遊んでるし、何だかな。
「しかし、随分すんなり懐いてくるな、さっきまで戦ってたのに」
懐かれているのは俺だけじゃ無かった、イーリアも楓も山童達に囲まれている。
イーリアは面倒そうな顔をしながらも一応そいつらの相手をしており。
楓は少しビクビクしているが、面倒を見ている、何か性格が分かるな。
「私達が嫌うのは人間、その中でも幸せなくせに不幸だとか言う人間が嫌いだ」
「そういう人間が居たらどんな気持ちになるんだ?」
「心の底から怒りが込み上がってくる、自分の幸福に目を向けないのは頭にくるんだ」
そうか、あれだな、俺が死ぬ前にこいつらに会ってたら俺は怒られてたわけだ。
今考えると、あの頃も十分幸福だったからな、仕事しかしてなかったが・・・懐かしいな。
「それで、話って言うのは何だ?」
「あぁ、実は」
俺は村を攻撃しないで欲しいという話をした。
「村を? 人間の村があるのか・・・良いぞ、私達には人間に会いに行く理由はないからな」
「復讐するため、とかは?」
「ない、私達が攻撃するのは里に足を踏み込んできた人間だけ・・・でも、お前達は別だ。
何だか話していると安心する、何だか温かいからな・・・」
そう言うと、この山童は俺に頭を向けてきた、これは撫でて欲しいんだろうな。
俺はその意思を汲み、軽くその山童の頭を撫でてやった。
「あはは・・・何だか、嬉しい」
「全く、敵対していたときとは大違いだな」
「・・・ありがとう」
その山童はにっこりと笑い、小さくそう呟いた。
「それにしても、ここの山童は皆同じなのか?」
「完全に一致って訳じゃ無いけど、殆どがそうだ、例えば今茜と遊んでる奈々は父親に殺された」
「なに!?」
「山でな、父親にとって奈々はただの道具だったんだ」
あり得ないだろ・・・何だって自分の子どもを手にかけてんだよ・・・
「お前にじゃれついてる美瑠は親に見捨てられた」
「どういうことだ?」
「戦争の時にな、転けて動けなくなった美瑠を見捨て両親は逃げたんだ
その後、追いかけて来ていた兵士にいたぶられて殺された」
どぎつい話が多すぎるだろう・・・こんな楽しそうな笑みの裏にそんな事が・・・
そりゃあ、人間を嫌うよな、でも、人間を完全に嫌うことは出来なかったんだろう。
そうじゃないと、茜や水希とあんなに楽しそうに遊べないしな・・・
「分かったか? 私達が人間を嫌っている理由」
「あぁ、でも、良くそんな過去があるのにあの2人を受け入れたな」
「あの2人は同じ境遇、それに何となくだけど、似ている気がしているんだ
多分、ここにいる皆も同じ・・・だから仲良くなれたんだろうな・・・」
そうか、やっぱりあの2人はこいつらと似ているのか・・・
確かにあの2人の境遇はかなり苛烈だ、特に水希はな、もし、もしもだ。
あの時俺達が来てなかったら・・・水希は山童になってたのかもしれない。
「そうか」
「あぁ、だから、あの2人に似ている私達からのお願いだ」
「何だ?」
「あの2人を私達みたいな目に遭わさないで欲しい」
「当然だろ? あいつらに何か合ったら助けるさ」
「そうか、神様の言葉だし、安心した・・・本当に頼んだぞ?」
「あぁ」
まさか山童にあいつらの事をお願いされるとはな、まぁ、言われるまでも無く
そんな目には遭わせるつもりはないがな。
「じゃ、そろそろ行くか」
「もう行くのか?」
「あぁ、他にも話を通したいしな」
「そうか・・・」
俺は皆を集めて、山童の里を出ようとした。
「なぁ!」
「ん?」
「ま、また、来て欲しい・・・」
「おー! あたいまた来るよ!」
「私もいつかまた」
「同じ山に住んでいるんだ、いつでも会えるさ」
「その内また来ますね」
「そうだな、また来るさ」
「あ、ありがとう・・・約束だぞ!」
「あぁ」
そして、俺達は里からでた、山童達はずっと手を振っていてくれた。
「ふ、最初はあんなに嫌われたのにな」
「そうだな、ま、あいつらは親に捨てられたかわいそうな子供だ、だから、甘えたかったんだろう」
「子どもの相手なんて初めてだ」
「水希の相手はしなかったのか?」
「あぁ、たまに軽く挨拶する程度の距離だ、まさか死にかけてたなんて知らなかったが」
「気付かなかったのか?」
「あぁ、水希は水菜と同じで誰かに頼ろうとしないからな」
あぁ、なるほどな、だからイーリアが居たのに飯は満足に食えてなかったのか。
いや、仮に助けを求めていても、イーリアは料理出来ないし、やっぱり無理か。
「それで、今度は何処ですか?」
「そうだな、河童か?」
「分かりました、河童の里は近いですし、すぐですよ」
「今度は河童ですか・・・大丈夫ですかね?」
「大丈夫だろ、なにも尻から魂抜かれる訳じゃ無いし」
「おしりから魂抜かれるって! 怖いんですけど!」
河童は尻子玉とか言う物を集めるとか聞いたこともあるし。
ま、実際魂を抜かれたわけじゃないしな。
「河童は人間の尻子玉を集めたりしますよ」
「ひ! 何だか嫌なんですけど!」
「大丈夫ですって、狙われるのは人間だけですし」
「大丈夫じゃありませんよ! 私と水希ちゃんは人間ですよ!?」
「あ、そうでしたね、いやぁ、さっき茜さんがとんでもない強さを見せたので、つい」
「あ、あれは私の力じゃ無いんですよ? あれは全部圭介様の力です」
「そうなんですか?」
「はい、神降ろしって言って、神様をその身に降ろすんです、私の場合は降ろしている間の
体の主導権は圭介様にあって、私は何もしないで見ていただけです」
皆この話に食い付いた、それだけ興味深いことなんだろう。
それにしても、まさか水希も食い付くなんて思わなかったが。
「巫女ってすごいんだね! あたいも頑張れば!」
「山明神社の神様が復活したら出来るかもな」
「ふむふむ、神降ろしか、面白そうだな」
「でも、結構キツいんですよ? 規格外の力を宿すわけですから」
神降ろしはその体に神の力を宿す力、だからあまり連続では使えない。
使いすぎると限界が来て、動けなくなる可能性があるからな。
出来れば使わずにが1番だが、使わないとマズい場合は使う、そんな感じだな。
「それに、私も憑くのがしんどいし、出来れば使わないで欲しいわ」
「危ないときにしか使わないから大丈夫だよ」
そんな会話をしながら俺達は河童の里を目指した、さて、本物の河童はどんな感じなのやら。




