天狗のお話
俺達は天狗達の長、擂の部屋に通された俺達は話をすることにした。
「で、何故ここに来たのですか?」
「単純に話を通しに来ただけだ、村に攻撃をしないで欲しいからな」
「村? ふむ、人間がいるのですか?」
「あぁ、人間は結構いるぞ、そんなに多くはないが」
擂は少し嬉しそうに笑った、何故かは知らないが、一応聞いてみるか。
「なんで笑ってんだ?」
「いえ、安心しただけです、そうか、人間はまだ沢山いるのですね」
そして、擂はさっき以上に嬉しそうにした、それだけ人間が好きなのか?
「なんでそんなに嬉しそうなんだ?」
「そう見えます? そうですね、それは天狗にとって人間は大切な物なので」
大切? もしかして食うのか? だとしたら黙ってはいられないが。
しかし、悪意は感じられない。
「も、もしかして、食べるんですか!?」
ただ、茜はその言葉に恐怖を感じたようだ、多分、あの話の影響だろうな。
「いえ、食べませんよ? 何で同族だったのに食べないといけないのですか?」
「ほ、安心しました・・・あれ? 同族? どういう意味ですか?」
確かに同族ってどういう意味だ? 人間が同族だと?
妖怪なのにか? よく分からないな。
「あ、知りませんでしたか、私達天狗は元人間の集まりなのです、子どものね」
「どういう意味!? 天狗が元人間なんて話し始めて聞いたわよ?」
「そうですね、では、少しだけお話ししましょう」
そう言うと擂は自分たちの昔の話を始めた。
私達は山で迷った子どもが妖怪に変化した姿なのです。
最古の天狗は山で遭難し、命を落としました、その方は非常に優秀で、人望も優れていました。
そして、その様な方が遭難なんて、もしかしたら何か恐ろしい物のせいで! と言う
恐怖が彼の周りの人に伝達、それが更に拡散という形でゆっくりと具現化していきました。
しかし、それが何かの因果か知りませんが、その男の人に影響し、彼は妖怪化しました。
それが天狗です、そして、その方は非常に世話好きの男の人でした。
迷った子どもの面倒を見て、何度か返してあげました。
しかし、子どもは再び彼に会いに行き、目の付かない場所で命を落としたりしたのです。
それに心を痛めた男は子どもをに変化させるようになりました。
「・・・それが天狗のルーツか?」
「はい、あくまで書物でのお話ですが」
「・・・じゃあ、お前も?」
「はい、昔、友人と山に入ったときに遭難しましてね、それで天狗になったのです」
ふむ、だとしたら天狗はそこまで危険では無いと言うことだな。
「じゃあ、天狗は村を襲ったりはしないのか?」
「はい、それは約束します、もしも誰かがここに文月山に迷い込んだら案内するように指示もしますよ」
「よし、ありがとな。じゃあ、今度は何処に話を通しに行くかな」
「では、案内を付けますね、楓でよろしいでしょうか?」
「あぁ、問題ない」
俺達は擂に話を通し、部屋から出た。
そして、楓に何かしらの指示を出していた。
その指示を受けている間、楓は汗をダラダラ流し、少しだけ震えていた。
それだけ天狗達にとって、擂は大きな存在なのだろう。
「では、楓に案内させます、それと、基本的にこの山の妖怪は人間に対して友好的ですが
山童と悟り妖怪にはご注意ください、彼らは人間を憎んでいますから」
悟り妖怪は少しだけ聞いたことがある、人の心を読むことが出来る妖怪だったか。
「理由とかを聞きたいんですけど・・・」
「詳しくは分からないのです、気になるのであれば、直接聞いてください」
「俺は少しだけ知ってるぞ、まぁ、悟り妖怪だけだが」
「じゃあ、聞かせてくれません?」」
「いいぞ」
イーリアの話によると悟り妖怪はかなり疑心暗鬼らしい。
イーリアの予想では、多分、疑心暗鬼の具現化なんじゃ無いか? と言っていた。
「まぁ、詳しい話は直接聞けば良いだろう」
「だな、じゃあ、悟り妖怪の所に案内してくれ」
「分かりました」
さっきと比べてなおのこと緊張している様子の楓の後を付いていった。
今度は悟り妖怪、さて、どんな奴なんだろうな。




