2人の娘
カレーか、何だか久々に作るな、しかし、カレーのルーを作るのは大変だったぜ。
スパイスを混ぜないと駄目だし、本当にあっちは便利だったんだな。
でも、苦労はするがそれでも神様になる前よりも何倍も楽しいぜ。
「よし、そろそろかな」
俺は暖めていた鍋を開けた、美味しそうな匂いがするな、懐かしいカレーの匂いだ。
1人暮らしを始めてから1度も食べてないからな、こっちに来た後もルーを作るのが
難しかったから作ってなかったしな。
「うん、こんなもんか」
本当に懐かしい味だ、旨くお袋の味を再現できたな。
これなら茜もあの女の子も満足するだろう。
「圭介様! お風呂はどうします? って、あれ? 何だかすごく良い匂いが・・・」
「風呂沸いたか?」
「あ、はい、沸きました・・・あの、その食べ物は何ですか?」
「カレーって言う喰い物だ、こっちじゃ誰も作ってないみたいだがな」
「匂いからして、もう美味しそうなんですけど!」
「まぁ、美味しいだろう、それは保証しよう」
「あは! 楽しみです!」
「そうか、じゃあ、先に風呂入るか」
「はい!」
俺達は先に風呂に入ることにした、普通は俺は一緒に入らないが
あの女の子を茜が運ぶのは無理があるし、睦月も触れる事が出来ない。
それが理由で一緒に風呂に入ることにした。
「しょ、よし、じゃあ、入れるか」
「はい、何だか圭介様と入るのは久々ですね」
「そうだな、何年ぶりだ? 2年かな」
「はい、それ位です」
「大丈夫だろうけど圭介、変な気を起こさないでよ?」
「起こすわけ無いだろ?」
俺達は大きめのタオルを巻いて、一緒に風呂に入った。
この風呂は結構広めなんだな、3人で入れるとは。
「温かいですねぇ」
「そりゃな、風呂だし」
「うーん」
お風呂に入って少しすると女の子が少し動いた、どうやら意識が戻ったようだ。
「あれ? ここは?」
「あぁ、起きたか、ここは風呂だ」
「なんであたいはお風呂に入ってるの?」
「汚れてたからかな」
「あぁ、そうだった、お風呂が壊れて入ってなかったんだ・・・あれ? 何でお風呂直ってるの?」
「それは俺が直したからだ、結構なできだろ?」
「すごいな、お風呂を直せるなんて」
女の子は何だかボケーッとしている、目を覚ましたばかりだし、仕方ないが。
「まぁ、さて、じゃあ、俺は出るかな、この子も起きたし、もう大丈夫だろ」
「あ! 圭介様! もっとゆっくり入りましょうよ!」
茜は俺が出ようとすると一緒に風呂から出てきた。
「別に俺が出たからってお前も出ないで良いだろ」
「いや、いきなり知らない人と2人っきりってのはちょっと不安がありまして・・・」
まぁ、確かにそうだよな、仕方ない、もうしばらく一緒に居るか。
俺は茜と女の子の体を洗ってやり、風呂から出た。
何だか娘が増えた気分になったな。
「さて、じゃあ、今度は飯だな」
「ついにそのかれーって言う食べ物を食べるんですね!」
「あぁ、そうだ」
「かれー? 何それ? 美味しいの?」
「美味しいと思うぞ」
「おー! 美味しいんなら食べる!」
まぁ、美味しかろうと美味しくなかろうとこの子には無理矢理食わすがな。
ガリガリだし、明らかに何日も食べてないからな。
「おぉ! 美味しそうな匂い!」
「少し待て、ちゃんと飯に掛けないとな」
俺は2人分の白飯とカレーを入れ、掛けた。
それを出すと女の子はすぐさま飛びついた。
出来たてなら熱いだろうが、一応少し置いているし、速く食ってもやけどはしないだろう。
「茜はまだ食わないのか?」
「その、圭介様が自分のを入れて、一緒にいただきますといったら食べます」
そういえば茜はそんな子だったな、礼儀正しいな。
隣の女の子は速攻で食ったってのによ。
「じゃ、いただきます」
「いただきます!」
挨拶と同時に茜はすごい勢いで食べ始めた。
その様子を見ながら俺はゆっくりと食べ始めた。
しかし、2人に合わせたカレーを作ったせいで、何だかあまり辛くないな。
「ぷはぁ! これすごく美味しい! ちょっとピリッとするけどそれがまた美味しい!」
「そうか、それはよかった」
「お替わり!」
「はいはい」
一応少し多めに作っている、調理器具の関係でそこまで沢山は作れないがな。
多分、後は茜の分で終わりだろう、まぁ、茜がお替わりしたらだけどな。
「美味しいです! 圭介様! 私も! 私もお替わりください!」
「はいはい、まぁ、これがラストだぞ」
「はい!」
そして、茜も女の子もすごい勢いでカレーライスを食べていった。
まぁ、出来はイマイチだったが、これだけ美味そうに食ってくれたんだ、成功かな。
少しして2人はカレーライスを食い終わった、速すぎだろうと思ったが、それだけ美味かったんだろう。
「ごちそうさまでした!」
「あはは! 美味しかった!」
「そりゃよかった、そういえばお前の名前、聞いてなかったな」
「あたいは山明神社の巫女! 山明 水希」
「ここは山明神社って言うのか」
「そう! 山を照らす神様が住んでる神社! でも、見たことはないんだよね」
過去の魔津神との戦いで大半の神様は消えたんだよな。
でも、神が死ぬのは完全に存在を忘れられたらだったかな。
だとすると、巫女がいるこの神社の神はまだ完全に死んでないはずだ。
もしかしたらこの神社の信仰を回復させたら出てくるかもな・・・
「まぁ、この神社にも神様はいるさ、頑張って信仰集めでもすれば良いじゃないか」
「神様っているの?」
「巫女が疑ってどうするんですか!? それに神様はいますよ! ほら! 目の前に!」
「目の前? あの男の人しかいないじゃん」
「その人です! その人も神様です! 四宮神社の神様!」
「おぉ! 神様! 本当にいるんだね」
すんなり信じたな、よく分からない奴だ、まぁ、いいか。
「まぁ、とりあえず信仰を集めたら神様は復活するさ、頑張れよ」
「あたい、頑張るよ、神様も手伝ってね?」
「よその神様が集めて良いのか? まぁ、手伝うけどよ」
「心強い!」
なんせ、ここの神様が出てくれないと、この子はこの山明神社に1人だしな。
それだといつか死んじまいそうだし、仕方ないだろう。
「ま、今日はもう寝るぞ、暗いしな」
「はい!」
俺達は山明神社で寝ることにした。
狭い部屋に布団が1枚だけで、何故か知らんが俺は水希と茜に挟まれて寝る形になった。
俺は畳で寝るって言ったんだけどな・・・ま、良いか、明日が本番だし、さっさと寝よう。




