ボロボロ神社での初日
かなりボロボロの女の子を拠点にしようとした神社で発見した俺達。
そんな女の子に対してどんな対処をすれば良いのか分からなかったが
とりあえず飯を作る事にし、神社の内部に入った。
「これは酷いわね」
「あぁ・・・」
そこは壁もボロボロ、床もすごく軋んでおり、歩く度にギィギィ音がする。
蜘蛛の巣も壁、天井と至る所に張り巡らされている。
匂いも強烈で、神社内部はゴミが散らかり放題だ。
しかし、御神体と思われる物が置かれている部屋は殆ど汚れていなかった。
「この子はここで過ごしてたのか?」
「多分、そうですね、ここだけすごく綺麗ですし・・・」
「ふむ」
そして、俺はこの場所から離れ、隣の部屋に入った。
その奥にはどうやら台所と思われる所があった。
「・・・ここも酷いな」
台所は全部の調理器具に埃が積もっており、蜘蛛の巣も張り巡らされている。
これは一切使ってないって言う良い証拠だな。
本当に、よくこんなんで生きてたな、あの子は本当に人間か?
「人間だよな、この子」
「えぇ、それは断言できるわ」
「そうだよな、明らかに人間だよな」
妖気は一切感じない、妖怪なら多少なりとも妖気を感じるからな。
まぁ、花木と久里はかなり少ないが、それでも妖気はしっかりとある。
だから、妖怪は確実に妖気を持っているはずだ。
「妖気って何ですか?」
「妖怪が必ず纏っている力みたいな物ね、一応花木と久里にもあるわよ」
「それと、人間は霊力、神は神気、幽霊は霊気な」
「そんなのがあるんですね!」
こっちに来て3年間の間に四宮神社の書物を漁って得た知識だがな。
「巫女もそれは感じれるらしいな、強烈なら普通の人間にもわかるっぽいけど」
「そうなんですか、知りませんでした」
茜は修行、修行で全く勉強できてなかったからな、知らなくても無理は無いか。
「・・・しかし、まぁ、この台所が使えないってなると飯とか面倒だな」
「そんなぁ~、ご飯が食べられないんですか!?」
「いや、そうじゃないが」
「まぁ、それは後で良いわ、とりあえずお風呂を探しましょう、この子をお風呂に入れないと」
「そうだな、まずは風呂か」
俺達は台所を後にして、風呂場を探しに行った。
少しの間探し、風呂場を見つけることは出来た。
「・・・ここも酷いわね」
「だな、何かヒビも入ってるし」
「久里さんを連れてきた方が良いんじゃないですか?」
「遠いし無理だろ」
「やっぱりですか」
しかし、この程度のヒビなら修正は出来そうだな。
ただ、今日1日で修正するのは厳しいか・・・仕方ない。
「よし、茜、ちょっと俺を降ろしてくれ」
「あ、はい」
俺は茜に指示を出し、俺を降ろして貰った。
「よし、じゃあ、試すか」
「な、何をするんですか?」
「実は久里の影響か知らんが大工の仕事も出来るようになってな」
「そうなんですか!?」
「あぁ、一応大工道具もちょっとだけ出せるし」
俺は大工道具を手元に出した、神様は便利だな、信仰のされ方で何でもなれるし。
俺はその道具を扱い、ちょっとしたヒビを修正した。
「よし、結構簡単にできたぜ」
「はぁ・・・すごいですねぇ」
俺は茜から出て、茜の隣に再び姿を現せた。
「よし、これで大丈夫だな」
「やっぱり圭介を降ろした状態の茜に憑いているのはちょっと辛いわね」
「そうなのか?」
「えぇ、神様が降りちゃってるわけだからね」
「それもそうだな」
まぁ、そんな事は今はいいか、今重要なのは、どうやってここに水を入れるかだ。
四宮神社では外の井戸から水を運んできているが、ここには井戸があるのか?
今度はちょっと外をぐるりと回り、井戸を探してみた、すると小さめの井戸があった。
「お、あるな」
「涸れてないと良いんだけどね」
「流石に大丈夫だろ、あの子も生きてたんだし」
俺は涸れてない事を祈って、釣瓶を落とした。
すると、ちゃぽんと言う水の音が聞えてきた。
どうやら井戸の水は涸れてないようだ、助かったぜ。
「よし、これでいいか」
「さっさと運びましょうか」
「そうだな」
「あの、重そうなんですけど・・・」
「まぁ、重いだろうな、まぁ、大丈夫だ、刀を振り回せるし」
「それもそうですね」
俺と茜は協力しながら水を風呂場に運んだ。
そして、水を入れた、水は漏れることは無く、しっかりと風呂場にたまってくれた。
「ふぅ、安心した」
「ちょっと不安だったのね」
「初めてだったからな」
「それでも出来るのね、やっぱり規格外よね」
「そうかい」
少しして、水は最大にまでたまった、今度は裏に言って火を点けるか。
ちゃんと薪とかあるんだろうか、まぁ、無かったら近くの山から枝を持ってくるだけだが。
まぁ、案の定薪は切れてた、いや、正確にはあったが、全部カビが生えてた、これは燃えないな。
何か、少しだけキノコが生えてる奴もあったし・・・まぁ、これは捨てるしか無いな。
「はぁ、今度は木材集めか、面倒な」
「そうですね」
かなり時間が掛かると思っていた木材集めだが、意外とそうでは無く、かなりすぐに集まった。
やっぱ山の中にあったらすぐに集まるな。
「さて、準備は出来た、後はこれに火を点けてと」
俺は鞄の中からマッチ棒を取り出した、本来マッチはこの世界には無いが、俺が作った。
意外と出来るもんだな、そして、火を点け、薪の場所に放り投げた、その火はすぐに燃えた。
「よし、出来たっと」
「毎度思うけど、本当に何でも出来るわね、マッチだっけ? 実用性すごいわよね」
「そうだな、こういうときに便利だ」
「携帯も出来ますしね! 火打ち石よりも簡単だし軽いです」
この世界では基本的に火打ち石で火をおこしている。
その為、この世界でのマッチは最先端の道具だ。
まぁ、作り方を知ってるのは俺だけだし、これを使ってるのは四宮神社だけだが。
「さて、お湯が沸くまでの間、茜が見ててくれ」
「はい! お任せください!」
「火が広がりそうになったら消せよ」
「分かってます」
俺は茜に火の番を任せ、その間に残った枝を持ってきて、火をおこした。
そして、その周りに太めの木の棒を2本ほど深くさし、その2本の上に鍋を乗せた棒を置いた。
昔、小学生の頃くらいにやったご飯の炊き方だ、まさかこんな風に役に立つとはな。
「さて、次はこうしてっと」
俺はもう一つ同じように火をおこし、その上に鍋を置いた、かなり難しいもんだな。
まぁ、出来たから良いけど、さて、今日は時間が掛かりそうだが、カレーにするかな。




