増えていく神としての仕事
神としての信仰集め、神としての修行、神社の妖怪、妖精、動物、巫女の世話
新しく拾ってきた妖怪の世話と警戒心を解く事、更に妖怪の把握。
簡単に今しないといけないことを出してみたが、どうも面倒だな。
まぁ、新しい妖怪の警戒心を解くのは主に茜にやって貰おう。
俺が今やるべき事は、今、結界内に現われ始めた妖怪の把握と対策だ。
このまま放置だと村が危険だしな。
「おい、久里、いるか?」
「ん? おぉ、圭介か、あんたが1人でここに来るなんて珍しいね」
「そうだな」
まずは妖怪の情報の把握だ、久里は妖怪については詳しい様だし
その上情報もよく知ってる、この状況で久里以上に頼れる奴は居ない。
どっかの兎は神社でのほほんとしているだけだからな。
「で、用件は何だい? あたしに出来ることなら何でもするよ」
「あぁ、実は最近村に現れ始めたって言う妖怪を探ってきて欲しいんだ」
「人間に害をなすタイプの妖怪?」
「そうだ」
久里は少しの間悩んでいた、まぁ、当然だろう、久里も妖怪だ。
その妖怪を探り、神に話すと言うことは同族を売るのと同じような物だ。
「もしかして、妖怪を退治して信仰を集めようという魂胆じゃないよね?」
「そんなわけ無いだろ、あくまで対策のためだ」
「何の?」
「妖怪が増えすぎず、強くなり過ぎないようにだ」
妖怪は恐怖の象徴、神ほどに人間の意思に影響は受けないが
恐怖した人間が新しい妖怪を想像し、それが広まれば際限なく増える危険もある。
そうなる前に、何とかして対策を取りたいしな。
「ふむ、つまり信仰の為じゃ無いんだね?」
「あぁ、それは断言しよう」
「そうかい、分ったよ、あたしの傘下全員に招集を掛けて探らせるよ」
「ありがとな」
よし、何とか久里の協力を得る事が出来た。
これで妖怪の把握は楽になるだろう。
それにしても、信仰の為か、全く考えてなかったな。
「もしかして四宮の神様ですか!?」
「あ、あぁ」
「わぁ! 本物だ!」
俺が考え事をしていると誰かに話しかけられた。
そうか、考えてみたら俺はもうただの人間に姿が見えるくらいには信仰を回復させてたんだな。
俺はこの人達に向かって、妖怪の情報があるかを聞いてみた。
「村に妖怪ですか、あの狸の大工屋さんとか兎さんのお団子店とかの妖怪じゃなくてですか?」
「あぁ、そうだ、何か襲われたとかの情報は無いか?」
「うーん、ありませんね、じゃあ、知り合いに聞いてきます!」
「お、ありがたい」
「じゃあ、情報があったら四宮神社まで行って報告しますね」
「あぁ、頼む」
この人の顔が広いと良いが、まぁ、久里からの情報の方もあるし大丈夫か。
そして、俺はとりあえず神社に戻ることにした、茜が心配だしな。
「なんで食べないんですか?」
「た、食べれるか! こんな黒い物体!」
「大丈夫ですよ、美味しく出来たと思いますし」
「何処がだ! どう見ても炭じゃないか!」
「見た目だけですって、大丈夫! さぁ、お口を開けてください、はい、あーん」
「や、止めろ! 止めてくれ! はぎゅ!」
神社に帰ると、丁度茜が妖刀の妖怪に黒い物体を食べさせているところだった。
「どうです? 美味しいでしょ!」
茜は悪意のない無邪気な笑顔で妖刀の妖怪に向かってそう言った。
親切心なんだろうが、完全に攻撃だよな、あれは。
「む、むぅ・・・」
そして、妖刀の妖怪は意識を失った。
毒でも入ってたのか?
「あれ!? どうしたんですか!? 目を開けてくださいよ!」
「・・・これ、死んだんじゃないか?」
「あ、圭介様、お帰りなさい、それと、死んだってどういう意味です?」
「そのままの意味だ」
「あはは、私の料理でこの子が死ぬわけ無いじゃないですか」
茜は可愛らしい笑顔でそう答えた。
あれだな、悪意全くない分たちが悪いな。
「てか、花木はどうした?」
「花木さんは傘下の妖怪さん達が来て、団子屋さんに行きましたよ」
「あぁ、そうか」
せめて花木が入ればこの惨事は回避できただろうに・・・
「達者でな、あの世でも元気でよ」
「うぅ・・・ま、まだ死んでない」
あぁ、まだ生きてたか、そうだよな、流石に茜の料理が壊滅的だとしても
生き物の命を奪うほど破壊力は無いか。
「あ! よかった! 目が覚めましたね!」
「けほ、けほ」
「もっと沢山ありますからドンドン食べてくださいね!」
茜は台所から更に沢山の炭を持ってきた。
こんなに作ったのか、これは本当にこの妖怪、死ぬんじゃないか?
「無理だ! もう食べれない!」
「遠慮しないでください、さぁ、ドンドン食べてくださいね?」
「う、うわぁぁ!!」
茜は一切の躊躇いも無く、ドンドン妖刀の妖怪の口の中に料理を入れていった。
抵抗する力が殆ど無いこいつはされるがままにその料理を食べさせられている。
これは下手したら地獄より地獄かもな、さながら茜は地獄の悪魔か。
しかし、自分の料理は美味しいと思っている茜は無邪気に笑いながら食べさせている。
これが天使の様な悪魔の笑顔って奴だろう・・・・・・あいつ、大丈夫か?
俺は少し不安になったが、まぁ、茜に任せてみようか、流石に死にかけたら止めるかな。




