妖刀と神器
修行を終わらせ、しばらくの休憩の後、茜は再び村の警備に向かった。
茜は大丈夫だろうか、不安はかなりあるが、ここは茜を信じてみよう。
いざという時は神降ろしもあるし、それに睦月の奴も居る。
「大丈夫だと良いんだけどね~」
「だな、てか、なんでお前はまだここにいる?」
「たまにはあの子達に団子屋さんを任せようかなと思ってね」
「無責任な頭領だな」
闇は深く、周囲には人はいない。
誰もいない村を歩くのは流石に怖いな。
でも、お姉ちゃんもいるし、それに圭介様にも色々と教わった。
今度こそ私の力であの妖怪を退治しないと!
「茜、あまり焦らないようにしなさいよ?」
「大丈夫だよ、圭介様に教わったし!」
「そう、じゃあ、あの言葉も?」
「うん、夢はでっかく、目標は小さく確実にでしょ?」
「そうよ」
圭介様に教わったこの言葉のお陰で私は今焦っていない。
今の小さい目標はあの妖怪を見つけること。
「それと、あの妖怪以外にも厄介な奴が居るかもしれないから警戒しなさいね」
「うん、もう昨日みたいな事は無いよ」
昨日はいきなりの事で驚いたけど、今日は大丈夫!
でも、やっぱり怖いかも・・・・・・いや、大丈夫! お姉ちゃんもいるし!
私は気持ちを戻し、再び周囲を探してみた、でも、妖怪どころか動物もいない。
「うーん、どこにもいないなぁ」
「そうね」
どうせ出てくるならすぐ出てきて欲しいんだけど・・・・・・はぁ、探すしかないのかなぁ。
そして、しばらくの間色んな場所を回って、探していると、1人の男の人が現れた。
私はこんな時間に? と思いながらその人の横をすれ違おうとしたときだ。
「あなた、入道ね?」
「え?入道?」
「・・・・・・」
お姉ちゃんがその男の人にそう言うと、男の人は姿を消した。
「お姉ちゃん、入道って?」
「知らないの? あぁ、結界内にいるからね、知らなくて当然か」
「どんな妖怪なの?」
「軽く説明してあげるわ」
入道、色んな種類がいる妖怪、見越し入道、赤入道などの種類がいるらしい。
さっきすれ違った入道は、人間が夜、暗い中で人とすれ違うことに恐怖を抱き生まれた妖怪。
すれ違い入道と言うらしいけど、お姉ちゃんもそこまで詳しくは知らないらしい。
もしも、あそこでお姉ちゃんがああ言わなかったら、私は死んでたみたい。
本当に、お姉ちゃんに感謝しないと。
「そんな怖い妖怪が・・・」
「不思議はないでしょう、妖怪は人間の恐怖の具現化なんだから」
「それでも、死んじゃうなんて怖いよぉ」
「まぁ、安心なさい、妖怪は人間の恐怖の具現化、それと同時にその妖怪に対する対処法もあるわ」
「そうなの?」
「えぇ、弱点がないと人間が勝てないからね」
「そうなんだ」
私はよく分らなかったけど、とりあえず、妖怪には弱点があるって事は分った。
でも、それって妖怪の勉強をしっかりしないといけないって事だよね・・・
大変そうだけど、死にたくないし、勉強しようかな。
「それにしても、今度は入道か・・・・・・本格的に対策を考えないと犠牲者が出そうね」
「犠牲者が!?」
「えぇ、このあたりの村の人達は妖怪の対処法なんて知らないからね」
「そんなぁ・・・」
私はかなり焦ったけど、今はあの妖刀の妖怪を退治しないと!
他の妖怪はその後考える! 私はもう一度色んな場所を探してみた。
すると、村の外れに妖刀の妖怪の気配を感じた。
「ここかな・・・」
私はその場所で周囲を見渡してみた。
すると、奥の方で光っている何かが見えた。
あの光は見たことがある、昨日の妖刀の光!
「ふむ、また来たか、非力な巫女が」
「見つけた! 今度こそ退治します!」
私はその妖怪に近寄り、刀を構えた。
圭介様のお陰で、昨日みたいに刀を重く感じたりはしなかった。
「ふ、今度こそ始末してやる」
妖刀の妖怪も刀を構えた、今度こそ! この妖怪を退治して見せる!
「それはこっちの台詞です! 今度こそ退治ですよ!」
「威勢だけではこの私は倒せん!」
妖怪はそう言うと、一気に私の方に走ってきた。
「てい!」
「む!?」
私が攻撃をしたら、妖怪は後ろに飛びのき、攻撃を回避した。
「ふむ、どうやら昨日よりは刀を扱えるようになったみたいだな」
「しっかりと修行をしてきましたから!」
「ふむ、1日でここまでとは・・・貴様は危険だ、ここで仕留める!」
そう言うと、妖怪は身を低くして、刀を構えた。
何だか、さっきまでとは違う!
私はこの妖怪の威圧で少し怯んでしまった。
「ゆくぞ!」
「くぅ!」
私は突撃してくる妖怪に対し、真っ直ぐ刀を構えた。
しかし、速すぎて狙いが定めれない。
「死ね!」
「て、てりゃー!」
私は一か八かで刀を横に振ってみた。
すると、その刀は妖刀に当った。
「がは!」
「え?」
妖刀に刀が当っただけなのに、攻撃してきた妖怪はダメージを受けた。
「く、まさか当るとは・・・」
「え? え?」
私は何で相手の妖怪が苦しんでいるのか分らなかった。
確かに当ったのだけど、当ったのは刀なのに・・・
「あぁ、そうか、その刀って確か妖怪、幽霊に特効だったわね」
「あ! そういえばそうだった!」
この刀は圭介様が暇つぶしに作ってみた神器だ。
妖怪、幽霊に対し、異常なダメージを与え、人間の戦意を削ぐ刀。
「でも、私の攻撃は当ってないよ?」
「馬鹿ね、こいつは妖刀の妖怪よ? 刀が本体に決まってるじゃない」
「あぁ!」
私はお姉ちゃんのその言葉でようやく理解できた。
あの妖怪が私の攻撃を防がず、回避するだけだった理由が。
あの妖怪はこの刀と打ち合うのが怖かったんだ!
「ぐ、まさか・・・その刃にここまでの威力があったとは・・・無念だ・・・」
妖怪はそう言うと地面に倒れた。
消えたりはしなかったけど、このままここにいたら起きそうだし・・・
私は悩んだ末、とりあえず四宮神社に連れて帰ることにした。
「お、重たい」
「まぁ、そうでしょうね、だって、一応人間の形をしているし」
「くぅぅ!!」
私は必死にこの人を運び、四宮神社の階段下まで運べた。
しかし、この階段を上ることは出来そうになかった。
私が途方に暮れていると圭介様と花木さんが降りてきた。
「・・・・・・何でこいつを連れてきたんだ?」
「いや、あのまま放っておいたら立ち上がると思って」
「じゃあ、トドメを刺せば良いじゃないか」
「それは駄目です!」
よく分らないが、茜はこの妖怪を生かしておきたいようだ・・・
こんな危険な妖怪を・・・こいつは本当に巫女に向いているんだろうか。
しかし、ここで俺が殺しちまうと、茜がグレそうだし、仕方ない。
俺はこの妖怪を四宮神社に置くことにした。
「一応置いておいてやるが、封印はするからな?」
「はい、それは分ってます」
「よろしい」
俺は封印の札をこいつの本体である妖刀に貼り付けた。
まぁ、これでこいつの妖力は封印できたし、良いだろう。




