選択のその先は
ついに長く書いた転生神様シリーズを完結します!
何だか急速に終わらせてしまって申し訳ありません。
……時間というのは、本当に早く感じる。
四宮の神では無く。四宮神社の神主として過ごしてもう相当時間が経った。
若かった俺の姿はもうおじいさん。茜もおばあさんか。
それでも刀子達の姿は変っていなかった。
はぁ…これが妖怪と人間の違いなのか。
まぁ、そんな事を思いながら布団で眠る。
もう長くは無いのだろう。走馬燈が見えてくる。
あの時の選択で、俺がもし別の神として存在する事を選んでいれば
どうだったんだろう? 果たして後悔していたのだろう。
どうかな、きっと後悔していたのかも知れない。
だって、今の俺は後悔をしていないのだから。
……あぁ、意識が無くなってくる…これが最後か。
最後の瞬間に後悔が無いと確認し…そして、笑って死ねるなら…
「圭介…」
「……あぁ…幸せだったよ…」
意識を失っていく間に全員の顔が見られた。
それはもう…幸せなのだろう。
周りは泣いてる。
あなたが生まれたとき周りの人は笑って、あなたが泣いたでしょう。
だから、あなたが死ぬときはあなたが笑って、周りの人が泣くような人生を送りなさい。
そんな言葉を何処かで聞いた気がするが…はは、確かにこんな風に死ねるのは
幸せで…何よりも幸福…かな。
「圭介!」
最後の瞬間はまるで覚えていない。
まるで分からない…あの後どうなったのかも知らない。
それから、どうなっているのかも分からない。
景色は真っ暗。死は無、と言う風に言われても居た気がするが
案外その通りだったのかも知れないな。
「……さて、どうでしょうね…死は無なのか」
「え?」
真っ暗な空間の中で声が聞えた。
この声は時那の声…四宮の神、俺の主の声。
「もうすでに手は打った。私はそう言ったはずよね」
次に聞えたのは時音の声だった。
何処から聞えてくる? 一体…何処から。
「絶大な人気者というのは、大人しく死ね無い物ですよ。
ましてや、神々から愛された存在がそう易々死ねるとでも?」
次に聞えたのは時雨の声…何だよ、走馬燈か?
いや違う。確かに聞えてる!
死ぬ前にこんな事を言われた記憶は無いんだから!
「手の打ち方は色々あるけど、どうやら最後の最後に手を打ったみたいだね」
時江の声…何で? 意味が分からない。
「ほな、そろそろ目覚めたらどうや? 圭介はん。
あんたもまだ、その先には行けへんで」
最後に音時花の声が聞えたと思うと、俺の身体が光り始めた。
「な、何だよ! 何がどうなってるんだ!? う、うぉお!」
ドンドン強くなっていくその光りに包まれた後
俺の視界が開くと…そこは四宮神社の境内だった。
意味が分からないまま周囲を見渡す。
四宮神社は俺が死んだ時よりも豪華になっていた。
そこから見た里も大きくなっている。
確かに四宮神社だというのに…いや、待った! 四宮神社?
四宮神社によく似た作りではあるが…ここは四宮神社じゃ無い!?
そうだ、景色の見え方が違う! 文月山が見える角度も違うぞ!
「ようやく目覚めたわね、圭介」
「んな! ど、どう言う!」
背後から声が聞え、そっちを振り向いて見るとそこには時音居た。
あの時と一切変らない姿でそこに立っていた。
「……どう言う」
「手は打ったと言ったでしょう? こんな話は聞いたこと無い?
英雄とか、そう言う類いが神になる話」
「ま、まぁ…」
確か三国志の関羽とかが中国では神としての扱いを受けているとか。
そう言う話を聞いたことはあるけど…まさか手って言うのは!
「あなたが死後、神になるように情報を流布したわ。
勿論、茜達にも同じ様な手段を用いた」
「…じゃあ! お前がやったのは!」
「そう。あなたを神にしたの。死後、人間達の信仰によってね。
勿論、あなた自身に相当な人徳が無いと出来ない芸当。
だけど、あなただから出来た。狙い通りにね」
「……あ、茜は」
「茜はあなたの付き人という形で蘇生したわ。
きっとそろそろあなたと同じ様に神に近い存在として蘇生される。
実は水希にも同じ事をして無事成功。私の付き人と言う形よ。
死後も常に仕えるべき神に仕え続ける巫女。
因みにこの神社は照光神社
あなたはこれから照光神社の憧れを司る神
照光 圭介としてこの世界の神として存在し続けて貰うわ」
「……ほ、本気かよ…何でそんなに」
「神々に愛された人間が、そう易々と死ねるとは思わない事ね。
恨むなら自分の人徳を恨みなさい。
まぁ、全てを受入れた結果だと考えなさいな。
すぐにキキ達もこっちに来るでしょう。本気で悲しんでたんだからね。
ま、私達神々はこの手を知ってたから別にそこまで悲しくはなかったけど
でも結構辛かったのよ? 100年くらい待ったんだから」
「100年!?」
「そう簡単に神は生まれないからね。ま、皆元気だから安心して。
何、すぐに全員で挨拶に来てやるわ。折角だし騒ぎましょう。
新しい神として、私達は躊躇いなくあなたを受入れるわ」
「……ありがとな」
「私が気に入らないからやっただけよ。お礼を言うのは私の方。
無事に戻ってきてくれて…ありがとうね」
その言葉を最後に時音は姿を消した。
それからすぐに俺の背後から光りがさし
そこに、幼い姿の茜が寝転がっているのが見えた。
「茜…随分とまぁ、小さくなっちまって」
「ん…あ、あれ? け、圭介…圭介様……圭介様! 圭介様! 圭介様!
し、死んだんじゃ…う、うぅ! もう何でも良いです!
圭介様ぁ! 良かった! また会えた…また…また会えて…」
俺の姿に気付いた茜はすぐに飛び上がり抱きついてくる。
泣きじゃくりながら、全力に必死に抱きついてくる。
もう2度と離さないと伝えてるように感じた。
「…良かった、お前も無事蘇ったんだな」
「うぅ…あれ? でも…私も死んだはず…ここはあの世ですか?」
「いや…ここは俺達が今まで過ごしていた世界だよ。
時音も水希も居る世界。そしてここは照光神社。
俺達が新しく過ごすことになる神社だ。
すぐにキキ達も来るみたいだ。今日は騒がしくなるぞ」
「……よく分からないんですけど…でも! また…あの時と同じ生活が…
いつもの毎日が過せるんですよね?」
「あぁ…そう言う事だ」
そして、時音が言っていたとおり、すぐにキキ達がこちらに合流した。
全員涙を流し、俺達を見た途端飛びついてくる。
刀子と花木は涙を流しながらその光景を見ているだけだった。
だが、キキ達は我先にと飛びついてくる。変らないな。
「……時音」
「ん?」
「本当に…ありがとう」
「お礼がしたいなら、今日の宴会で私を楽しませなさい」
「分かったよ、派手に騒ごう!」
「おー!!」
宴会…何だかんだで久し振りにする気がする。
さぁ、これからは長いぞ。この楽しい毎日信仰を集めながら過ごそうか!
これで転生神様シリーズは完結となります!
気が向いたらのんびりとした日常ストーリーを投稿するかも知れませんが
しばらくは投稿は無いと思います。
今まで読んでくださった皆さん。ありがとうございました!




