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重大すぎる選択

四宮の神が復活した。その内復活するとは思っていたが

この短期間で復活まで漕ぎ着けるとは思わなかった。

しかし、四宮の神が復活したと言う事は…まぁ、そう言う事だろう。


「四宮 時那。そいつが復活した以上。俺の存在は」

「待った! いきなり随分と重たい話に入ろうとしないで!」


俺が単刀直入に本題に入ろうとしたところを時音に止められた。

もう少し順序を持って行動してくれと言う事なのだろうか。

しかし、順序を考えようと考えまいと結果は変らないはずだ。


「そんなに重い話をするつもりはありません。

 しかしながら、選択肢は啓示しますけど」

「選択肢?」

「はい。四宮の神としてあなたがそのまま座するか。

 四宮の神を辞退し、別の神として存在するか。

 人に戻り。ただの一般人として生きるか。

 この世界の記憶を全て消し、元の世界に戻るか」

「……ま、全く躊躇いなく重い話をしてきたな…」

「さぁ、どうします?」


どうしますって…選択肢の難易度が異常だと思う。

最後とか1番重たい選択肢じゃないか。

今までの生活を全部忘れて元に戻れとか。


「……それは、その…相談させてくれ」

「はい。分かりました」


……この選択を自分1人では出来そうには無かった。

だから、俺は四宮神社に居るメンバーを招集する。

本来なら交流があるメンバー全員に話を聞きたいが

選択を迫られている以上。あまり長い時間は割けない。


「…え?」


全員を集めた後。今回の話を全て告げた。

選択肢の内容も全て。


「……そ、そんな…あまりにも急すぎますよ!」

「あぁ…それは分かってる。でも仕方ないんだ」


俺もこの急な選択に戸惑っている。

昨日まで普通に生活していたのに今日、いきなりこんな事になったんだ。

前置きも無く、すぐにこんな選択を迫られた。

選択の瞬間はいつも不意に訪れるとは言うが

もう少し物語的な物があっても良いと思う。

だが、これが現実なのかも知れない。

ロマンチックな選択の瞬間なんて告白の時位だろう。

後は不意打ち…そんな物なのかも知れない。


「……そんなの」

「本当、急すぎるね…」

「き、キキはこのまま…いえ、圭介様が四宮の神で無かろうと

 キキは絶対にご主人に付いていきます…ですので

 最後の選択以外なら…最後の選択だけはしないでくだされ!

 キキの前から姿を消すなんて事はしないで!」

「わっちも! 圭介様が居なくなるなんて絶対に嫌だ!」

「私もです! 圭介様が居なくなるのは嫌です! 絶対に嫌!」

「……でも、圭介にもそっちに心残りとかがあるなら…私は」

「私も…かな…勿論一緒に居たいとは思うけど…大事なのはやっぱり圭介の事だから」

「刀子さん! 花木さん!」

「だって…私達の都合で圭介が後悔する選択をするのは嫌じゃないか」

「私達が圭介の重りになったら駄目なんだよ」

「でも…」

「知らないよ! あたしは圭介が居なくなるのは嫌だ!

 圭介の迷惑になったとしても、私はこのわがままを言うもん!

 圭介の都合はどうでも良いの! あたしの前から居なくならないで!」

「サラちゃん…そんな勝手なことを言ったら…」

「……大丈夫だ。その選択は最初から俺の中には無かったから」

「そうなんですか!?」

「あぁ…向こうに思い残したことは無い。

 くだらない毎日を過ごしてただけだからな。

 今と同じでくだらない毎日を…でも、向こうはつまらなかった。

 こっちは…くだらなくても楽しい毎日だよ」

「圭介様…」


最初からその選択肢は無い。だから、俺の中にある選択肢は実は2つのみ。

人間に戻り生活をするか。別の神として存在するか。このどっちかだ。

四宮の神として存在し続けるのはよろしくないと思う。

そっちを選んだら四宮 時那はどうなる? 消えるのか?

だとすれば、俺はその選択だけは絶対に出来ない。


「……私としては、圭介には神様になって欲しいと思ってる」

「…私も…かなぁ」

「そうなのか?」

「あぁ…だって、そうすれば一緒に居られるからな」

「……」


刀子の言葉で茜とサラを除く全員が沈黙する。

この言葉の意味は2人には分かっていなかったのだろう。

そうさ、妖怪と人間。寿命の存在だろう。

俺が神として生きていくことを選択すれば

俺は長い寿命を得て生き続けることが出来る。

だが、人間として生きていくことを選択すれば

俺は短い間にその命を終わらせる事になる。

刀子と花木は妖怪。キキとキャンは神。サラと四季は妖精。

そして…茜は人間。この中で誰が最初に死ぬのかは言うまでも無い。


「……」


刀子達は少しでも俺に長く生きて欲しいのだろう。

だから、俺に別の神として生きていって欲しいと伝えたんだ。

でも……その言葉を聞いたことで俺の選択は決ってしまった。

刀子と花木が望む選択肢以外の選択。望まない選択の方へ。


「……ごめん、刀子…花木…俺は…人間に戻るよ」

「な、なんで! わ、分かってるんだろ!? 

 私がどうして神様になって欲しいって言ったのか!」

「……」

「分かってる…だが、俺は人間に戻る。

 茜と一緒に人間として生きて…そして、死ぬ」

「……本当、茜の事が大事なんだな…」

「あぁ…大事さ」

「圭介様…」

「キキも茜様の事は大事です…でも」

「キキ…何も言わないでおこう…もう、決めた事なんだろうし」

「……ごめんな」


これが俺の選択だ。大事な選択。

自分だけじゃ無く知り合い全ても巻き込む選択。

でも、後悔は。


「…気に入らないわ、その選択は」


この重大な選択を決め、時那の元へ向おうとしたとき

背後から時音の声が聞えて来た。


「時音…」

「私はその選択は気に入らない。他にも方法はあると思うわ」

「は? 何の方法だよ」

「……手はもう打ってる。後は時間かしら」

「は?」

「大丈夫よ。その選択をすれば良い。

 もう手は打ってるのだからどうとでもなるわ」

「おい、そんな意味深な!」


そう言い残すと、時音が少し微笑み姿を消した。

俺は困惑を隠せないまま時那の元に向かいこの選択を告げる。


「…分かりました。良いんですね? 人間に戻っても」

「構わない。俺は人間に戻る」

「では戻しましょう…っと、言いたいところなのですが」

「ん?」

「既に手は打たれてしまってるようですね」

「どう言う意味だ?」

「いずれ分かります。かなり先の話でしょうけどね。

 では、あなたを今だけ人間に戻しましょう」

「うぉ…」


時那が俺に触れると、全身から力が抜けるような感覚になる。

それから意識を失い、次に目を覚ましたのは四宮神社。


「おはようございます。これであなたは人間に戻りました」

「これで戻ったのか?」

「はい、もう今まで使えていた力は使えないでしょう」

「……あ、本当だ」

「では、あなたはこれからどうしますか? 里に向います?

 それとも…このまま四宮神社に留まり、四宮神社の神主として過ごしますか?」

「……」


俺が人間に戻っても、茜は四宮の巫女のままだろう。

なら、このまま四宮神社に留まり、神主としてやっていくのも悪くない。

他でもない神自身からのお誘いだしな。


「…分かっ…いえ、分かりました。これからは四宮神社の神主として生きていきます」

「よろしい…では、これからよろしくお願いしますね」

「はい」


人間としての短い余生でも、ここで過せるなら…悪くないだろう。

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